
親水性・親油性の単元でも習ったように、水と油は混ざり合わないのが常識ですね。しかしそれが混ざり合った液体が存在するんです。
どの家庭にもある身近なものを例に、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi
理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。
1-1.親水性
水に溶けやすい物質の例としては、砂糖や塩のような個体、アルコールのような液体がありますね。このような物質は親水性に分類されるものです。水と親しいと書いて親水性ですから、覚えやすいのではないでしょうか。
詳しくはこちらの記事をチェックしてくださいね。
1-2.親油性(疎水性)
親水性と対になるのが親油性、もしくは疎水性とよばれる性質でしたね。(厳密に言えばこの2つは意味が異なるので、関連記事を要参照ですよ。)水よりも油との相性がいい物質、水との相性が良くない物質と考えるのがいいですね。どんな例があるか考えてみましょう。
水と油は化学的に混ざり合わないことが証明されています。容器に両方を入れ、どんなに頑張って振ってもすぐ元通りになってしまうでしょう。しかし、あるものを加えることで混ざるようになるんです。
2.エマルションとは

image by iStockphoto
エマルションはエマルジョン・乳濁液・乳剤ともよばれる液体です。通常混ざり合わないはずの溶質と溶媒が、ある物質が加わることによって粒子が均一に混ざり合った状態をいいます。
思い出してみてください。食器や衣服の油汚れはただ水で洗っても落ちませんよね。しかし石鹸という界面活性剤を用いることで水と油の成分が混ざり合い、きれいに汚れを落とすことができました。まさにこの状態がエマルションです。水を入れたコップに油を注ぐと、比重の関係で油が水の上に分離しているのが確認できるでしょう。ここに洗剤を少し加えて混ぜると、その変化がわかるはずです。なぜこのような現象が起こるのか、見ていきましょう。
こちらの記事もおすすめ

水と油の橋渡し役!「石鹸・合成洗剤」について元塾講師がわかりやすく解説
2-1.乳化

image by Study-Z編集部
片方の手には油を、もう片方の手には水をつけ、さらに洗剤を1滴垂らして手をゆっくりこすり合わせてみましょう。油のヌルヌルが落ち、透明だった液体が白濁して粘度が出るのがわかりますね。これが乳化であり、混ざり合わないはずの液体が混ざり合う(乳化する)ことでエマルションになるということです。界面活性剤には水とつながりやすい部分と油につながりやすい部分、2つの相反する特徴を持っています。そのために水と油の仲を取り持ってくれるのです。
このとき、上図のように水に油が混ざる水中油滴型と油に水が混ざる油中水滴型があるということを覚えておくといいですね。これらはどちらの液体にもう一方の液体が滴状に分散しているかを表したものです。最近ではさらに水滴粒子を内部に閉じこめた油滴粒子が水中に分散している水中油中水滴型というような複合エマルションも合成されています。
2-2.乳化剤
2つの液体を1つの溶液として混ぜるためには乳化剤が必要です。乳化させるための物質ということですね。これに当たるのが、先ほどから挙げている石鹸や洗剤といった界面活性剤です。化学製品については界面活性剤や物質名そのもので記載されていますが、食料品においては界面活性剤ではなく乳化剤と表記されていることが多いでしょう。これは数多くある界面活性剤のうち、人体への安全性が優先されて食品添加物として指定されたものを乳化剤と表記することができるためです。なんとなく言葉のイメージとして、界面活性剤よりも乳化剤のほうが「食用」のものだと感じませんか?
\次のページで「3.身近なエマルション」を解説!/