この記事では「陰徳陽報」について解説する。

端的に言えば陰徳陽報の意味は「人知れず善行を積むとよい報いを受けるということ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「陰徳陽報」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「陰徳陽報」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「陰徳陽報」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「いんとくようほう」です。意味とあわせて語源や使い方といったところまで身につけておくといいですよ。

「陰徳陽報」の意味は?

「陰徳陽報」には、次のような意味があります。もとの意味と転じた意味合い、漢字ごとの意味合いについても見ていきましょう。

1.人知れず善行を積めば、必ずよい報いを得るものだというたとえ。

出典:四字熟語辞典(学研)「陰徳陽報」

「陰徳有るものは必ず陽報有り」の略とされています。「陰徳」は人知れずに善行をすること、「陽報」は表に現れるよい報いのことです。

「陰徳陽報」では、よい行いである「徳」とその報いである「報」が対になっています。さらに、人知れずに行うという「陰」に対して、表に現れるという「陽」も対になっている表現です。これらの二種類の対比の関係によって、意味が引き立てられていますね。

「陰徳陽報」の語源は?

次に「陰徳陽報」の語源を確認しておきましょう。

「陰徳陽報」は、中国の前漢の頃に編纂された思想書である『淮南子(えなんじ)』巻十八の人間訓(じんかんくん)に登場します。その中で似た意味合いの表現が繰り返されており、「陰徳陽報」は二番目に出てきますよ。

「君子はその道を極めてこそ福禄が返ってくる、陰徳ある者には陽報がある、陰行のある者には昭(あき)らかな名声がある」という内容が書かれています。

\次のページで「「陰徳陽報」の使い方・例文」を解説!/

「陰徳陽報」の使い方・例文

「陰徳陽報」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。意味としての使い方と文法としてどう使うかにも注目していきますよ。

1.あなたが人知れず自宅でも仕事に打ち込み上司に認められたのは、まさに陰徳陽報と言える。
2.教育者や人格者と言われる人だけが素晴らしいわけではなく、陰徳陽報の陰徳の途中である人もたくさんいることを忘れてはいけない。

例文1.は、人知れず努力した人が認められたことを「陰徳陽報」と表現しています。例文2.のほうは、「陰徳陽報」うちの「陰徳」の途中であり、まだ「陽報」を受けていない段階の人もいるということを表した文です。

また、「陰徳陽報と…」や「陰徳陽報の…」と表現されている通り、四字熟語をそのまま名詞のカタマリとして使っています。形容動詞として、または動詞化しても使える四字熟語もありますが、「陰徳陽報」は基本的に名詞としての使い方のみです

「陰徳陽報」の類義語は?違いは?

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それでは、「陰徳陽報」の類義語についての説明です。類義語はいくつかありますが、ややニュアンスに違いがあります。違いをチェックしながら見ていきましょう。

「善因善果」

「陰徳陽報」の類義語には、「善因善果(ぜんいんぜんか)」があります。意味は、よい行いをしていれば、いずれよい報いを受けるということです。「善因」はよい結果を招くよなうなよい行いのこと、「善果」はよい結果のことを表しています。

「陰徳陽報」の「陰陽」にあたる部分、「隠れて」「表に現れる」という意味合いは含まれていませんが、大まかな意味としてはおなじになっていますね。

\次のページで「「積善余慶」」を解説!/

「積善余慶」

もう一つの類義語には、「積善余慶(せきぜんのよけい)」があります。長くよい行いをすれば必ず見返りとしてよいことがあるという意味です。「積善」は長い間に渡ってよい行いをすること、「余慶」は子孫まで何代も続く幸福のことを表しています。

個人のこととして使うこともありますし、家のこととして「善行を積んだ家には、子孫の代になっても幸福が訪れる」という意味で使うこともありますよ。

「陰徳陽報」の対義語は?

次に、「陰徳陽報」の対義語についての説明です。対義語のほうもいくつかあるので、それぞれのニュアンスにも注目しながら見ていきましょう。

「因果応報」

「陰徳陽報」の対義語には、「因果応報(いんがおうほう)」があります。意味は、よい行いをするとよい報いがあり、悪い行いをすると悪い報いがあるという意味です。「因」は因縁のことで原因のこと、「果」は果報のことを表しています。

「因果」に応じた報いがあるということなので、よい意味でも悪い意味でも両方で使うことができるのですが、現在では悪い方の意味で使われることが多くなっていますよ。

「自業自得」

もう一つの対義語には、「自業自得(じごうじとく)」があります。自分の行いに対して自分が報いを受けることという意味です。「業」とは、行為のことで悪行も善業も含まれますが、一般的には悪いほうの意味で使われています。

「陰徳陽報」と比べると反対の意味にはなっていますが、「陰陽」にあたる部分の意味は含まれていません。何らかの「業」が表に出ていても出ていなくても、「自業自得」というひょうげんを使うことができます。

「陰徳陽報」の英訳は?

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最後に、「陰徳陽報」の英訳についての説明です。少し長めの表現ですが、「陰徳陽報」の意味を表すことができる英語の表現を一緒に見ていきましょう。

「the karma of good deeds is supposed to come back to oneself」

「陰徳陽報」の英訳には、「the karma of good deeds is supposed to come back to oneself」があります。直訳すると「善行の因縁は自分自身に返ってくるものだ」です。ここでは、「因縁」にあたる英単語に「karma」を使っていますが、「報い」というイメージで使うなら「reward」となります。また、「reward」には「報酬」という意味合いもありますよ。

善行が「人知れず」であること、報いが「表に現れる」ものであることなどの意味は含まれていませんが、よい行いが報われるという意味を表すことができます。

\次のページで「「陰徳陽報」を使いこなそう」を解説!/

「陰徳陽報」を使いこなそう

今回の記事では「陰徳陽報」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「陰徳陽報」は人知れずの善行が報われるという意味でした。善行とは決まり決まった用意されたようなものではなく、日頃から誰かの役に立てばという意識をもって過ごす中で行動として現れるものなのかもしれません。人それぞれ考え方や文化などに違いはありますが、今は情報を簡単に手に入れることができるので、みんなが気持ちよく安心して過ごせるようになるといいですね。

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【四字熟語】「陰徳陽報」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「陰徳陽報」について解説する。

端的に言えば陰徳陽報の意味は「人知れず善行を積むとよい報いを受けるということ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「陰徳陽報」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「陰徳陽報」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「陰徳陽報」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「いんとくようほう」です。意味とあわせて語源や使い方といったところまで身につけておくといいですよ。

「陰徳陽報」の意味は?

「陰徳陽報」には、次のような意味があります。もとの意味と転じた意味合い、漢字ごとの意味合いについても見ていきましょう。

1.人知れず善行を積めば、必ずよい報いを得るものだというたとえ。

出典:四字熟語辞典(学研)「陰徳陽報」

「陰徳有るものは必ず陽報有り」の略とされています。「陰徳」は人知れずに善行をすること、「陽報」は表に現れるよい報いのことです。

「陰徳陽報」では、よい行いである「徳」とその報いである「報」が対になっています。さらに、人知れずに行うという「陰」に対して、表に現れるという「陽」も対になっている表現です。これらの二種類の対比の関係によって、意味が引き立てられていますね。

「陰徳陽報」の語源は?

次に「陰徳陽報」の語源を確認しておきましょう。

「陰徳陽報」は、中国の前漢の頃に編纂された思想書である『淮南子(えなんじ)』巻十八の人間訓(じんかんくん)に登場します。その中で似た意味合いの表現が繰り返されており、「陰徳陽報」は二番目に出てきますよ。

「君子はその道を極めてこそ福禄が返ってくる、陰徳ある者には陽報がある、陰行のある者には昭(あき)らかな名声がある」という内容が書かれています。

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