この記事では「音(ね)を上げる」という慣用句について解説する。

端的に言えば「音を上げる」の意味は「弱音を吐く」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「音を上げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「音を上げる」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「音を上げる」の意味や使い方を見ていきましょう。

「音を上げる」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「音を上げる」には、次のような意味があります。

もう耐えられない、という。悲鳴をあげる。弱音を吐く。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「音を上げる」

まず、この慣用句の読み方が「おとをあげる」ではなく、「ねをあげる」であることに注意しましょう。「おと」だと音量を上げるかのような意味に捉えられかねないからです。

では、なぜ「音を上げる」が耐え切れずに降参してしまうという意味になったのでしょうか。ここでいう「音」とは「音声」のことを表しています。

さらにいえば、弱音(よわね)のことだと考えてもらって結構です。弱音とは、弱々しい声意気地のない言葉を表します。

これらは、何かに対して弱気な発言・後ろ向きの言葉だと考えるのが妥当です。そして、それが何かをやり通すことに自信がなくなり、途中であきらめてしまう発言の意味へとつながりました。

「音を上げる」の使い方・例文

「音を上げる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「音を上げる」の類義語は?違いは?」を解説!/

家事の一環として刃物を研ぎ始めたはいいが、彼は一時間もしないうちに音を上げてしまった。

すぐに音を上げてしまうくらいなら、バーで楽器の演奏をする仕事を引き受けなければいいのに。

スマホの小さな画面やスピーカー音量の小ささにも音を上げず、遠隔授業をよく頑張ったものだ。

「音を上げて」しまうからには、何か途中であきらめてしまいたくなるような対象が存在するはずです。この慣用句を正しく理解するには、その何かをきちんと押さえておくことが求められます。

最初の例文では、そのあきらめてしまいたくなる何かが、刃物を研いでおくことだと分かるはずです。簡単な作業だと高をくくっていたところ、ことのほか難しくて投げ出したくなったといったところでしょうか。

二つめの例文では、バーでの楽器演奏がそれに当たります。詳しい様子は分かりませんが、お金をもらって客の前で弾くのは勝手が違ったのかもしれませんね。

最後の例文では、スマホという限られた画面の大きさや音量の中であきらめることなく遠隔授業を受けることができた様子がうかがえます。

#2 「音を上げる」の類義語は?違いは?

ところで、「音を上げる」と意味の似た言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、中でも代表的なものを二つご紹介します。

「匙を投げる」

「匙を投げる」は、「音を上げる」の類義語の中でも代表的なもののひとつです。この慣用句には、物事を断念するという意味合いがあります。

ただし、「音を上げる」のように声を出すというニュアンスはないので注意が必要です。

「投げ出す」

「投げ出す」もまた、「音を上げる」の類義語だといって差し支えないものです。この慣用句は、途中であきらめて放棄するという意味合いを持っています。

こちらも、先ほどの「匙を投げる」と同様に声を出すとは限らない点には注意が必要でしょう。では、これらの類義語を用いた例文をみていきます。

\次のページで「「音を上げる」の対義語は?」を解説!/

専門家ですら匙を投げるような状況だったのに、よくもここまで会社を立て直したものだよ。

サイトの管理人は検索結果の表示設定を微調整すること以外の仕事は、すっかり投げ出してしまった。

#3 「音を上げる」の対義語は?

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では、「音を上げる」の対義語はどのようにとらえればいいのでしょうか。この慣用句には、「あきらめる」「あきらめようとする」という意味合いがあります。

であるならば、対義語は「あきらめない」「継続していく」というニュアンスを持っているはずですね。ここでは、そのよな意味の表現を二つほど紹介していきます。

「粘り強い」

「粘り強い」は、「音を上げる」の対義語だといっても差し支えのないものです。この言葉は本来、物質がよく粘る性質であることを表していました。

現在ではそこから転じて、根気があり物事をあきらめない性格という意味でも用いられています。粘りが強いものは、いちどくっつくとなかなか離れないというイメージですよね。

それが、簡単にはあきらめないという部分につながっているというわけです。

「食い下がる」

「食い下がる」もまた、「音を上げる」の対義語として十分に通用するものです。この慣用句には、粘り強く争うという意味があります。

本来は、食いついたりしがみついたりして離れない様子を表す言葉でしたが、そこからあきらめないという意味でも使われるようになりました。では、これらの対義語を用いた例文を押さえておきましょう。

会員の登録情報の一覧がウェブに流出した件で、相手方の弁護士を通じて粘り強く交渉していただいた。

プロジェクトの責任者に使用アプリケーションの変更を求めて何度も食い下がってみたが、無駄だった。

#4 「音を上げる」の英訳は?

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最後に、「音を上げる」の英語訳についても押さえておきましょう。ここでは、代表的なものを二つほどご紹介します。

\次のページで「「give up」」を解説!/

「give up」

「give up」は、「あきらめる」という意味の句動詞ではもっとも一般的なものです。しかしながら、「音を上げる」とはややニュアンスが異なる部分もあります。

それは、「音を上げる」は「もう、無理だ!」という声を上げることであって、実際にそこであきらめたかどうかまでは不明だという点です。

「whine」

「whine」もまた、「音を上げる」の英語訳のひとつです。こちらは、あきらめるというよりも「泣き言をいう」というニュアンスが強いということを覚えておきましょう。

ちょうど、人がめそめそと泣いている様子を想像していただければと思います。

「音を上げる」を使いこなそう

この記事では「音を上げる」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句の意味は、耐えきれなくなって弱音を吐くでしたね。

長い人生の間には、山もあれば谷もあります。中には、どん底まで落ちて「もうだめだ」と音を上げそうになることがあるかもしれません。

しかし、「禍福(かふく)は糾(あざな)える縄の如し」のたとえもあります。くじけそうになったとき、自分に負けそうになったときにどうやって堪えて乗り越えていけるかが大切です。

みなさんも、「音を上げる」という慣用句の意味や用法を理解したら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「音を上げる」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「音(ね)を上げる」という慣用句について解説する。

端的に言えば「音を上げる」の意味は「弱音を吐く」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「音を上げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「音を上げる」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「音を上げる」の意味や使い方を見ていきましょう。

「音を上げる」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「音を上げる」には、次のような意味があります。

もう耐えられない、という。悲鳴をあげる。弱音を吐く。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「音を上げる」

まず、この慣用句の読み方が「おとをあげる」ではなく、「ねをあげる」であることに注意しましょう。「おと」だと音量を上げるかのような意味に捉えられかねないからです。

では、なぜ「音を上げる」が耐え切れずに降参してしまうという意味になったのでしょうか。ここでいう「音」とは「音声」のことを表しています。

さらにいえば、弱音(よわね)のことだと考えてもらって結構です。弱音とは、弱々しい声意気地のない言葉を表します。

これらは、何かに対して弱気な発言・後ろ向きの言葉だと考えるのが妥当です。そして、それが何かをやり通すことに自信がなくなり、途中であきらめてしまう発言の意味へとつながりました。

「音を上げる」の使い方・例文

「音を上げる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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