液体に粉を入れたら何もしなくても勝手に混ざっていくか?塩や胡椒のように大きく重たい粒を水に入れても、沈殿して終了。ところが牛乳だってコロイドと呼ばれる小さな粒の集まりですが、牛乳を水に入れたら瞬く間に分散し濁ってゆく。これはブラウン運動が関係している。また、ブラウン運動の原因は熱運動。

この記事では、ブラウン運動と分子運動の概略を述べた後両者のを関係を説明します。理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。エンジニアの経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.液体中での粉の混ざり合い

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そもそもブラウン運動とは?それをを実感出来る身近な例が、粉が液体中で勝手に拡散していく現象。例えば、お茶やコーヒーの細かめの粉をコップに入れてお湯を注ぐとスプーンでかき混ぜなくともある程度混ざっていきますね。これらは、特に邪魔が入らなければ理論上は勝手に混ざっていこうとする性質があります。

2.混ざり合う原因は?

2.混ざり合う原因は?

image by Study-Z編集部

粉などの微粒子が液体中で勝手に拡散していく原因は何なのでしょうか?それは微粒子間で不規則に起きる「衝突」。

実は微粒子の動きをよく観察すると、1個1個がランダムな方向に運動し、かつ移動していることが分かります。粒がたくさんあると、これらの粒子が互いに「衝突」しますね。さらに、衝突したことで押し出されて移動したり他の粒子にぶつかったりします。このように不規則に衝突が繰り返されることでちょっとずつ微粒子が移動しいくもの。1粒の粒子に着目するとイラストのようなイメージ。どちら向きに移動していくかは決まっていませんが、系内の粒子がみんな同じような動きをすると、粒子の存在範囲がだんだん広がっていきますね。

水の中にコーヒーの粉を入れた場合、粉同士がぶつかり合い徐々に「あまり粉がない部分」にも広がっていきます。1つ1つの粒子が不規則に運動していて、それらが衝突し徐々に拡散していく現象がブラウン運動です。

3.ブラウン運動を阻害する要因例

胡椒や唐辛子など「少し重め」の粉は水とスムーズに混ざらないもの。スープやラーメン、うどんなどに胡椒や七味唐辛子を加えてもうまいこと広がらない。「足りないかな?」と思ってじゃんじゃんかけると実は底の方に沈んでいて最後に「辛い」ってなる経験よくあるかと思います。

ブラウン運動が阻害されている原因は沈殿、というか重力ですね。ブラウン運動の理論によれば、どんな粒子も基本的にはランダムに混ざり合っていこうとしますが、重い(というか密度が高い)粒子は重力の影響が大きいもの。混ざり合おうとはするものの重力による下向きの移動が支配的で、みるみるうちに沈殿。ブラウン運動でポイントとなるのが「不規則、ランダム」であること。重力の影響が大きいと「下向き」への移動が大きくなり、動きの不規則性が失われますね。

逆に軽すぎる(密度が小さい)物体は浮力が大きすぎて皆水面付近まで浮いてしまうためスムーズには混ざらず。例えば、木くずをバケツの水に入れても全部浮いてきて水面付近に集まってきますね。うまく混ざらないです。浮力は上向きに働く力。軽すぎる物体の場合は「上向き」の移動が多くなりすぎて、こちらもブラウン運動の特徴である「不規則性」が失われるため。

4.ブラウン運動を推進する要因

浮き過ぎる沈み過ぎる等でブラウン運動は阻害されますが、逆に混ざり合いを推進してくれる要因もあります。

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温度

温度

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1つ目の要因は温度。塩を水に溶かす時温度を上げた方が溶けやすいイメージありますね。なぜでしょうか。溶解度が大きくなるからでしょうか?溶解度とは一定量(例えば100g)の水に溶けられる量。一般的に温度を上げた方が溶解度も増えるもの。

しかし塩の場合、温度を上げても溶解度は大きくは変わりません。意外ですね。

イメージ的には温度を上げたらもっと溶けるんじゃないか?という思いますね。実際、温度を上げたら混ざりやすいのは確かです。その理由は、溶解度ではなく塩粒子のブラウン運動が激しくなることによる「拡散のしやすさ」にあります。温度を上げると塩の粒子自身の運動が激しくなり水と積極的に混ざり合っていこうとするからです。溶けやすいイメージがあるのは「溶けられる最大量が増えるから」というより「素早く混ざり合うから」が正しいでしょう。温度を上げる=勢いよく混ぜてくれてる状態に近いです。

冷水でも頑張って混ざればそこそこ溶ける

溶解度曲線より、塩は比較的低温の水でもそこそこの塩が溶けられます。冷水であっても、頑張って混ぜまくれば(拡散させれば)それなりに溶けてくれる、そういう意味ですね。

待てば拡散する

どんなに衝突が弱くても時間が経てば広がっていくもの。したがって「時間」も拡散を推進させる要因です。

ブラウン運動の式

ブラウン運動の式

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ブラウン運動に関する式は、定数×絶対温度×時間という形。つまり温度が高いほど、経過時間が長いほどよく拡散していくことが分かりますね。

5.熱運動

ブラウン運動の元になっているのが分子の熱運動。熱を持っている限り必ず分子は運動しているもの(というか、熱の定義が分子の運動エネルギーの大きさ)。仮に運動していないのであれば絶対零度(-273℃)という定義され得る限りの最低温度の状態。実際は絶対零度という温度は観測されておらず、(観測されている)全ての分子は運動をしています。運動している分子がたくさん集まった微粒子単位でも同様に運動が起きているわけで、それが衝突の原因になるわけです。

熱運動の式

熱運動の式

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気体分子に関する熱運動の式は、分子の運動エネルギ=定数×絶対温度の形。左辺の運動エネルギーは熱エネルギーを表します。ブラウン運動同様、運動の激しさが温度に比例するという形の式。ちなみにこの式は「気体」限定です。

熱の尺度を表すのに「運動エネルギー」という指標は非常に便利。しかし液体や固体の分子は自由に動くことが出来ない状態。分子そのものは温度を持っていて動こうとはしますが、結合や分子間力に阻害されて自由に動けないため運動エネルギーという概念は使いづらいです。よって、上述の式が適用できるのは気体限定となります。

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発見された順番

ブラウン運動が発見された当時は分子運動どころか、分子や原子の存在さえ疑われている状況でした。ところが、小さな粒の挙動をよくよく観察してみると、ランダムに移動していくことが観察されました。具体的には、顕微鏡で花粉の動きを観察した結果ランダムに拡散していくことが分かったようです。

ブラウン運動で観察される現象が同分子レベルでも起きていることが予測されました。よくよく調べた結果、分子が実在することや分子による運動についても分かったのです。

6.ブラウン運動と熱運動の共通点

ブラウン運動は熱運動が原因で起きているもの。したがって共通するところがあります。式を見ての通りブラウン運動も熱運動も「温度」が関係していることが分かりますね。ブラウン運動と熱運動、スケール感が変わろうとも不規則な「衝突」によって生じている点は同じ。

不規則な衝突

全ての分子は熱運動という微小な運動をしているもの。よって、その分子が集まった「微粒子」も同様に運動していて、この運動がブラウン運動と呼ばれます。ブラウン運動の結果微粒子同士にランダムな衝突が起き、液体中に浮遊する粉などが拡散するわけです。

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物理量子力学・原子物理学

液体中の粉は自然と拡散する?「ブラウン運動」を理系ライターがわかりやすく解説

液体に粉を入れたら何もしなくても勝手に混ざっていくか?塩や胡椒のように大きく重たい粒を水に入れても、沈殿して終了。ところが牛乳だってコロイドと呼ばれる小さな粒の集まりですが、牛乳を水に入れたら瞬く間に分散し濁ってゆく。これはブラウン運動が関係している。また、ブラウン運動の原因は熱運動。

この記事では、ブラウン運動と分子運動の概略を述べた後両者のを関係を説明します。理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。エンジニアの経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するのが得意。

1.液体中での粉の混ざり合い

image by iStockphoto

そもそもブラウン運動とは?それをを実感出来る身近な例が、粉が液体中で勝手に拡散していく現象。例えば、お茶やコーヒーの細かめの粉をコップに入れてお湯を注ぐとスプーンでかき混ぜなくともある程度混ざっていきますね。これらは、特に邪魔が入らなければ理論上は勝手に混ざっていこうとする性質があります。

2.混ざり合う原因は?

2.混ざり合う原因は?

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粉などの微粒子が液体中で勝手に拡散していく原因は何なのでしょうか?それは微粒子間で不規則に起きる「衝突」。

実は微粒子の動きをよく観察すると、1個1個がランダムな方向に運動し、かつ移動していることが分かります。粒がたくさんあると、これらの粒子が互いに「衝突」しますね。さらに、衝突したことで押し出されて移動したり他の粒子にぶつかったりします。このように不規則に衝突が繰り返されることでちょっとずつ微粒子が移動しいくもの。1粒の粒子に着目するとイラストのようなイメージ。どちら向きに移動していくかは決まっていませんが、系内の粒子がみんな同じような動きをすると、粒子の存在範囲がだんだん広がっていきますね。

水の中にコーヒーの粉を入れた場合、粉同士がぶつかり合い徐々に「あまり粉がない部分」にも広がっていきます。1つ1つの粒子が不規則に運動していて、それらが衝突し徐々に拡散していく現象がブラウン運動です。

3.ブラウン運動を阻害する要因例

胡椒や唐辛子など「少し重め」の粉は水とスムーズに混ざらないもの。スープやラーメン、うどんなどに胡椒や七味唐辛子を加えてもうまいこと広がらない。「足りないかな?」と思ってじゃんじゃんかけると実は底の方に沈んでいて最後に「辛い」ってなる経験よくあるかと思います。

ブラウン運動が阻害されている原因は沈殿、というか重力ですね。ブラウン運動の理論によれば、どんな粒子も基本的にはランダムに混ざり合っていこうとしますが、重い(というか密度が高い)粒子は重力の影響が大きいもの。混ざり合おうとはするものの重力による下向きの移動が支配的で、みるみるうちに沈殿。ブラウン運動でポイントとなるのが「不規則、ランダム」であること。重力の影響が大きいと「下向き」への移動が大きくなり、動きの不規則性が失われますね。

逆に軽すぎる(密度が小さい)物体は浮力が大きすぎて皆水面付近まで浮いてしまうためスムーズには混ざらず。例えば、木くずをバケツの水に入れても全部浮いてきて水面付近に集まってきますね。うまく混ざらないです。浮力は上向きに働く力。軽すぎる物体の場合は「上向き」の移動が多くなりすぎて、こちらもブラウン運動の特徴である「不規則性」が失われるため。

4.ブラウン運動を推進する要因

浮き過ぎる沈み過ぎる等でブラウン運動は阻害されますが、逆に混ざり合いを推進してくれる要因もあります。

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