端的に言えば、手を打つの意味は「必要な策を講じる」ことです。シンプルな言葉ですが、実はいろいろな意味を持っている。日常生活やビジネスシーンでもよく使う言葉なので、正しく理解してシーンに応じて使い分けできるようにしよう。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「手を打つ」の意味、例文、類義語などを見ていきます。
ライター/ユーリ
日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。
「手を打つ」の意味は?
まず、辞書で「手を打つ」の意味をチェックしましょう。
① てのひらをうち合わせて鳴らす。
(イ) 喜怒哀楽など感情が高まって、思わず手を打ち鳴らす。横手をうつ。
(ロ) てのひらを打ち鳴らして礼拝する。合掌する。
(ハ) 商談・契約・和解などの成立した際の所作にいう。また、祝って拍手する。転じて、仲直りをする。契約が成立する。
(ニ) 合点がいったり、納得したりする時にする動作。
② 囲碁・将棋・双六などで、巧みな打ち方をする。
③ 必要な手段を講じる。一策を用いる。
出典:精選版 日本国語大辞典「手を打つ」
「手を打つ」には、文字通り「手をたたく」という意味があります。手をたたくのはどんなときでしょう。たとえば話が面白くて大爆笑したとき、思わず手をたたくことがありませんか。神社でお参りするときも手を打ちますね。
商談がまとまったり、和解が成立したりしたとき、関係者が手をたたくことから、「契約が成立する」「仲直りする」などの意味でも使われるようになったのです。「そうか」と何かに合点がいったときにも手をたたくことがあります。
実際に手をたたくわけではありませんが、「囲碁や将棋でうまい打ち方をする」ことや「必要な策を講じる」ことも「手を打つ」といいますね。これはなぜでしょうか。実は「手に」にいろいろな意味があるからなのです。少し長くなりますが、辞書で「手」をチェックしてみましょう。
1㋐人体の左右の肩から出ている長い部分。肩から指先までをいう。俗に動物の前肢をいうこともある。
㋑手首、手首から指先までや、手のひら・指などを漠然とさす。
2 器具などの部分で、手で持つようにできているところ。取っ手・握りなど。
3 植物の蔓 (つる) をからませるための木や竹の棒。
4 1のように突出して動くもの。「火の―が上がる」
5実際に1のように作業や仕事を行うもの。
㋐労働力。人手。「―が足りない」「女―一つで子供を育て上げる」「男―」
㋑仕事をする能力。「―に職をもつ」
6 人が1を使ってすること。また、人の行為を漠然という。
㋐仕事。作業。「裁縫の―を休める」
㋑手数。手間。「―のこんだ細工」「―のかかる部下」
㋒他人に関与すること。「―出し」
㋓武器を使って傷つけること。転じて、戦いなどで受けた傷。
7㋐文字を書く技法。筆法。転じて、書かれた文字。筆跡。書風。
㋑茶器などで、その手法になるもの。
㋒能楽・舞踊などの所作。手振り。
㋓音曲で、調子や拍子をとる手法。また、器楽の奏法。
㋔武芸などの技。
8㋐勝負事などで、手中にあるもの。手持ちの札・駒など。手の内。
㋑囲碁・将棋などで、石や駒を打つこと。また、その打ち方。
9事を行うための手段・方法。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「手」より抜粋
8番目に「囲碁・将棋などで、石や駒を打つこと。また、その打ち方」とありますね。囲碁や将棋の対局シーンで「堅い手で攻める」「先手を打つ」などと解説しているのを聞いたことがあるのではないでしょうか。
また9番目に「事を行うための手段・方法」とあります。「きたない手を使う」「その手は食わない」「打つ手がない」という表現をしますね。「必要な策を講じる」という意味は、ビジネスシーンなどでもよく出てくる表現なので、使いこなせるようにしておきましょう。
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