この記事では「四海兄弟」について解説する。
端的に言えば四海兄弟の意味は「相手を尊重し真心を持って接することで世界は仲良くできるということ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「四海兄弟」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ヤマトススム
10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。
image by iStockphoto
それでは早速「四海兄弟」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「しかいけいてい」で「しかいきょうだい」と読むこともあります。特徴のある漢字が並びますが、語源も詳しくチェックしていきますよ。
「四海兄弟」には、次のような意味があります。もとの意味合いと現在使われている意味合いと両方を見ていきましょう。
1.世界中の人々が、相手を尊重し、真心を持って接すれば、みな兄弟のように仲良くなるということ。また、そうでなければいけないということ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「四海兄弟」
「四海」は四方の海のことで世界中のという意味で、ここでは「人種、国籍、民族などを問わず世界中のあらゆる人々が」というニュアンスで使われています。「兄弟」のほうは、兄弟のように仲良くするという意味合いです。
また、漢字を見る限り「相手を尊重し、真心を持って接すれば」にあたる部分は見当たりません。これについては、由来において「四海兄弟」にあたる部分の直前に言及した表現であり、四字熟語自体には漢字としては含まれていませんが意味には含まれたということになります。
次に「四海兄弟」の語源を確認しておきましょう。「四海兄弟」は『論語』の顔淵(がんえん)十二章に由来します。
孔子の弟子の司馬牛(しばぎゅう)についての話です。司馬牛は無法者の兄を嘆き、兄弟はいないも同然だと落ち込みます。しかし、子夏によって、教養人たる者は礼儀正しく相手を思う気持ちがあれば「四海の内、皆兄弟為り(世の中の人はみんな兄弟のようなものだ)」と慰められるのですね。もともとは、兄を嘆く司馬牛を慰め励ます言葉でした。
\次のページで「「四海兄弟」の使い方・例文」を解説!/
「四海兄弟」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。それぞれの例文の特徴をチェックしていきますよ。
1.彼はまさに四海兄弟を実践し、人種や国籍を越えた活動に尽力しノーベル平和賞を受賞した。
2.オリンピックは商業的であるという懸念もあるが、四海兄弟の精神を意識できる機会でもある。
例文の1.では、四海兄弟を実践した結果、ノーベル平和賞を受賞したという話です。例文の2.のほうは、オリンピックには課題もある一方で、人種や国境を超えて互いに尊重する気持ちを育む機会としては貴重なものであるという意味があります。
使い方としては、「四海兄弟を…」や「四海兄弟の…」などとして名詞のカタマリとして使っていますよ。「四海兄弟する」という動詞化した言い方はしません。
image by iStockphoto
それでは、「四海兄弟」の類義語についての説明です。「四海兄弟」の類義語はたくさんあります。やはり、世界中が友好の関係にあることは望まれているということですね。
「四海兄弟」の類義語には、「八紘一宇(はっこういちう)」があります。意味は、全世界を一つにまとめて一家のように和合することです。
「紘」は天地を結ぶ網のことで「八紘」とすると八方の網の隅々までということで、転じて全世界のことを意味します。「宇」が大きな屋根の家のことを表すので、「一宇」で一つの屋根の下、つまり家族のような意味です。なお、第二次世界大戦時に、日本が大東亜共栄圏建設のためのスローガンとして使った言葉でもありました。
\次のページで「「用和為貴」」を解説!/
もう一つの類義語には、「用和為貴(ようわいき)」があります。仲良くすることが最も大切であるということという意味です。「和を用て貴しと為す(わをもってとおとしとなす)」と訓読し、聖徳太子の十七条の憲法の第一条に書かれている文でもあります。
『論語』学而の十二章に記述があり、そこには「(礼儀作法や社会規範としての)礼を実現するには用和為貴(調和)が大切だ。和を知って和するのはいいが、節度なく和に頼りもたれ合うようでは和とは言えない」という意味のことが書かれていますよ。和もほどほどにということですね。
次に、「四海兄弟」の対義語についての説明です。世界がまとまるという意味の「四海兄弟」ですから、対義語はバラバラになったり対立したりというもの、詳しく見ていきましょう。
「四海兄弟」の対義語には、「群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)」があります。意味のほうは、多くの同じような実力や勢力を持つ者同士が対立して争っていることです。「群雄」はたくさんの英雄や実力のある者のこと、「割拠」は土地を分かち合いそれぞれが本拠地を持ち勢力を振るうことを表しています。
中国や日本の戦国時代のことを言う場合が多く、もともとは、その土地ごとに大名などの実力者が本拠地で独自に自治して周囲と対立し争うことを表す表現です。
もう一つの対義語には、「四分五裂(しぶんごれつ)」があります。まとまりのあったものがいくつかに分かれてバラバラになることという意味です。「四分」は四つに分かれること、「五裂」五つに裂けることで、どちらもバラバラになることを表しています。
物理的に何らかの物体が裂けることよりも、人間関係においてグループなどが秩序や調和を失ったりして、乱れてしまうという意味で使うことが多くなっていますよ。
「四海兄弟」の英訳には、「universal brotherhood」があります。直訳すると「全世界が兄弟の間柄」ということで、「人類みな兄弟」という意味を表しますよ。
ほかには、「people in the whole world being all brothers」があります。こちらも同じような意味で、「全て兄弟をなっている世界中の人々」というのが直訳です。
\次のページで「「四海兄弟」を使いこなそう」を解説!/
今回の記事では「四海兄弟」の意味・使い方・類語などを説明しました。
「四海兄弟」の基本的な意味は、世界中が兄弟のように仲良くやっていくということですが、「相手を尊重し真心を持って接すれば」という意味が含まれているのが特徴です。