
エントロピーについて

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クラジウスの不等式の極限として可逆サイクルに対して成り立つ等号の場合を用いると、上記のような定理が導けます。この定理によって状態Aから状態Bへの積分は状態Aと状態Bだけで決まるはずです。そこで、系の状態の1つを標準としてきめておき、これをOとすると状態Oから状態Pへ準静的に変化する時の積分は道筋によらずに状態Pだけで決まります。よって5式とおけば、S(P)は状態Pによって決まった値を持つ量になるでしょう。
この新しいSという量がエントロピーです。5式でPがOに等しい場合には、右辺の積分は元の状態までの積分となり標準状態Oのエントロピーに等しくなります。状態P、QのエントロピーをそれぞれSp、Sqとすれば、でてくるのが6式です。ただし、PからOの変化に対して、これを逆向きのOからPへの変化では熱の吸収と放出がちょうど逆になるから7式を使いました。PとOとの差が微小な場合には8式です。ここでのdは微小量を表す微分記号のdと考えてください。
ちなみに、エンロトピーの基準点は熱力学第三法則によって絶対零度でエントロピーはゼロと定められています。
不可逆変化でのエントロピーについて

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ここまでは準静的変化で可逆的変化を見てきましたが、これが不可逆変化の場合はどうなるか見てみましょう。上記図のように状態Pから状態Qまで不可逆的に変化した後、状態Qから可逆的に変化して状態Pにもどるとします。全体として不可逆的サイクルであるから、クラウジウスの不等式によって9式になるはずです。
9式の左辺の第二項はの6式により終わりの状態Pと初めの状態Qのエントロピーの差に等しいから10式が出てきます。状態QとPとの差が微小な場合は11式です。不可逆変化であると熱源から吸収した熱を熱源の温度で割ったものはエントロピーの変化に等しくならず、必ずそれより小さくなります。
エントロピー増大の法則について

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よって、エントロピーは不可逆過程では変化に関係したすべての物体のエントロピーの総和は必ず増加し、極限と考えられる可逆過程で増加はゼロになるのですから、エントロピーの総和が減少することはありません。確認するために、系が外部と熱のやりとりをしない変化、つまり断熱的変化で状態1から状態2に移る場合を見てみましょう。
断熱変化なので6式と11式で常にdQ=0とし、変化前後の状態のエントロピーをS1とS2とすれば、12式となります。不等号は不可逆変化の場合、等号は理想的極限として考えられる可逆変化の場合に成り立つ関係を表していることを注意してください。つまり断熱系では、状態が変化したときエントロピーが減少することはないと言え、等号は理想的極限の場合であって現実の変化では不等号になるといえるので、上記のエントロピー増大の法則が導けます。
エントロピーについて
熱力学におけるエントロピーというものは、経験的に導かれたものであり物理的なイメージがはっきりしません。そのためボルツマンによってミクロなスケールでの状態数というものと関係づけられ、以後統計力学というものが発展していきます。さらに、現在では情報そのものと関係づけられているようです。
現在ではこの情報に関係づけられた量として、情報の乱雑さの程度を表すなどとエントロピーが説明されることが多いですが、もともとは熱力学において発見、定義された量であることも知っておいてください。