物理学

熱力学から見た「エントロピー」と「エントロピー増大の法則」を理系ライターが丁寧に解説

よぉ、桜木建二だ。今回はエントロピーとエントロピー増大の法則について解説していくぞ。

現代ではエントロピーは一般的な用語になったが、もともとは熱力学で発見されたものだ。今回は熱力学的にみたエントロピーについて学んでみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

tohru123

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

熱力学から見たエントロピーと「エントロピー増大の法則」について

image by iStockphoto

現在はエントロピーというと色々な分野で使われる非常に有名な概念ですが、もともとは熱力学において発見された概念です。今回はエントロピーが最初に発見された熱力学でのエントロピーと、ついでにエントロピー増大の法則についても解説してみましょう。上記の画像はある蒸気機関の画像です。

準静的過程と可逆過程について

熱力学において重要な準静的過程可逆過程という用語について簡単に説明しておきます。ある系の状態を変化させるには、系に圧力を加えて圧縮したり、熱を加えて温度を上げたりしなければなりません。ちなみに、ある系といはいま考えている範囲のことです。変化をさせる際、系の一部を急激に加熱したりすると熱を加えた部分だけ温度が上がり、系の一部だけが高温の状態になります。すると、熱の移動がおこり複雑な変化が系の内部におこるはずです。

この変化は巨視的には制御できないものであるので、理論的に扱うのが難しくなります。そこで、扱いやすくするために、圧縮、膨張、加熱、冷却などを行うときは無限にゆっくり行い、常に系が同じ温度に保たれるような変化を考えることにしましょう。このような変化のことを準静的変化もしくは、準静的過程と呼びます。この過程は純粋に理論的なものですが、現実的には非常にゆっくり変化を行う場合を準静的過程と近似して問題ありません。

あと、準静的過程で生じた変化はその道筋をまた準静的に逆にたどる過程によって、系もまわりの環境も最初と同じ状態に戻ることができるという重要な性質があります。これが可逆的過程です。完全な準静的過程、可逆的過程は純理論的なものであり、現実的には存在しないことに注意しておきましょう。

トムソンの原理とクラウジウスの原理について

トムソンの原理とクラウジウスの原理について

image by Study-Z編集部

まずはエントロピー増大の法則と同等なトムソンの原理とクラジウスの原理から見ていきましょう。まずトムソンの原理とは

一様な温度の、1つの熱源から熱を取りそれと等量の仕事をするだけで、それ以外何の変化も残さないような過程は実現できない

というものです。ここでの仕事は力×距離で表される力学的な仕事をイメージしてください。もう一つのクラジウスの原理とは

低温の物体から高温の物体に熱を移すだけで、それ以外には何の変化も残さないような過程は実現できない

というものです。これらの二つは実験によって導かれた経験的な法則になります。この二つは蒸気機関のような熱機関を考えるとわかりやすいでしょう。トムソンの原理は、要するに100%熱を仕事に変え、かつ最初の状態に完全にもどるような熱機関は作れないということを意味しています。

クラジウスの原理は低温の熱源から高温の熱源に熱を移動させるだけで、最初の状態に完全にもどる熱機関も作れないという意味です。両方とも永久機関を作ることが不可能であることを意味しています。

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トムソンの原理とクラウジウスの原理は人類にとってはかなり重要な原理だ。これらは効率100%の熱機関は作ることができないことを意味している。

クラウジウスの不等式について

クラウジウスの不等式について

image by Study-Z編集部

エントロピーの説明に入りましょう。ある系が、サイクルCの間にn個の熱源と熱の授受をするとします。温度Tiの熱源Riから吸収する熱をQiとしましょう。ここでiは1からnまでです。系はサイクルCの間に外からQの熱量を受け取りますから、これと等量の仕事W=Qを外に対してします。このときクラウジウスの不等式とよばれる上記の1式の関係式が成り立のです。ちなみに、サイクルとは系がある状態から一続きの変化をした後、また元の状態にもどるような変化を意味しています。

この式を証明してみましょう。このサイクルCは上記右上の図に示したものです。このサイクルによって生じた変化は温度Tiの熱源RiがそれぞれQiを失い、外に仕事W(=すべてのQiの和)をしたというものになります。そこで、下図のように温度Tの熱源Rを用い、適当な装置Ciによって熱源Riへ熱Qiを与えて戻すとしましょう。このとき熱源Rから吸収する熱をqiとすると2の式がでてきます。

この結果、残った変化は熱源Rが熱q(=すべてのqiの和)を失い、外にこれと等量の仕事がされたことです。トムソンの原理によれば、この熱量と仕事は決して正になることはないので、3式の関係が導けます。よって2式と3式により最後のクラジウスの不等式が導けました。

エントロピーについて

エントロピーについて

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クラジウスの不等式の極限として可逆サイクルに対して成り立つ等号の場合を用いると、上記のような定理が導けます。この定理によって状態Aから状態Bへの積分は状態Aと状態Bだけで決まるはずです。そこで、系の状態の1つを標準としてきめておき、これをOとすると状態Oから状態Pへ準静的に変化する時の積分は道筋によらずに状態Pだけで決まります。よって5式とおけば、S(P)は状態Pによって決まった値を持つ量になるでしょう。

この新しいSという量がエントロピーです。5式でPがOに等しい場合には、右辺の積分は元の状態までの積分となり標準状態Oのエントロピーに等しくなります。状態P、QのエントロピーをそれぞれSp、Sqとすれば、でてくるのが6式です。ただし、PからOの変化に対して、これを逆向きのOからPへの変化では熱の吸収と放出がちょうど逆になるから7式を使いました。PとOとの差が微小な場合には8式です。ここでのdは微小量を表す微分記号のdと考えてください。

ちなみに、エンロトピーの基準点は熱力学第三法則によって絶対零度でエントロピーはゼロと定められています。

不可逆変化でのエントロピーについて

不可逆変化でのエントロピーについて

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ここまでは準静的変化で可逆的変化を見てきましたが、これが不可逆変化の場合はどうなるか見てみましょう。上記図のように状態Pから状態Qまで不可逆的に変化した後、状態Qから可逆的に変化して状態Pにもどるとします。全体として不可逆的サイクルであるから、クラウジウスの不等式によって9式になるはずです。

9式の左辺の第二項はの6式により終わりの状態Pと初めの状態Qのエントロピーの差に等しいから10式が出てきます。状態QとPとの差が微小な場合は11式です。不可逆変化であると熱源から吸収した熱を熱源の温度で割ったものはエントロピーの変化に等しくならず、必ずそれより小さくなります。

エントロピー増大の法則について

エントロピー増大の法則について

image by Study-Z編集部

よって、エントロピーは不可逆過程では変化に関係したすべての物体のエントロピーの総和は必ず増加し、極限と考えられる可逆過程で増加はゼロになるのですから、エントロピーの総和が減少することはありません。確認するために、系が外部と熱のやりとりをしない変化、つまり断熱的変化で状態1から状態2に移る場合を見てみましょう。

断熱変化なので6式と11式で常にdQ=0とし、変化前後の状態のエントロピーをS1とS2とすれば、12式となります。不等号は不可逆変化の場合、等号は理想的極限として考えられる可逆変化の場合に成り立つ関係を表していることを注意してください。つまり断熱系では、状態が変化したときエントロピーが減少することはないと言え、等号は理想的極限の場合であって現実の変化では不等号になるといえるので、上記のエントロピー増大の法則が導けます。

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熱力学でのエントロピーはいまいちはっきりしない概念だが、とにかく変化がおこる時Q/Tという謎の量が増加するということだ。エントロピー増大の法則を認めれば、トムソンの原理とクラウジウスの原理は容易に導ける。

エントロピーについて

熱力学におけるエントロピーというものは、経験的に導かれたものであり物理的なイメージがはっきりしません。そのためボルツマンによってミクロなスケールでの状態数というものと関係づけられ、以後統計力学というものが発展していきます。さらに、現在では情報そのものと関係づけられているようです。

現在ではこの情報に関係づけられた量として、情報の乱雑さの程度を表すなどとエントロピーが説明されることが多いですが、もともとは熱力学において発見、定義された量であることも知っておいてください。

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