この記事では「明哲保身」について解説する。

端的に言えば明哲保身の意味は「賢い人は物事を上手に処理して身を守る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「明哲保身」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「明哲保身」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「明哲保身(めいてつほしん)」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「明哲保身」の意味は?

「明哲保身」には、次のような意味があります。

《「詩経」大雅・烝民から》聡明で道理に通じていて、物事を的確に処理し、安全に身を保つこと。

出典:大辞泉(小学館)「明哲保身」

聡明そうめいで道理に明るい人は、危険を避け身を安全に保つ意。また、本来の意味とは異なり、「保身」の意味が誤解されて、自分の身の安全だけを考え、要領よく生きるという意味で使われることもある。
▽「明哲」は賢くて物事の道理に明るいこと。また、その人やそのさま。「明哲めいてつを保たもつ」と訓読する。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「明哲保身」

「明哲保身」とは、賢く正しい行動をとることで安全に身を守ること、あるいは、聡明で道理に通じる賢い人は、物事を適切に処理して危険を避けられることを表します。

たとえば十分な知識や一歩先を見通す力のある人は、トラブルに巻き込まれることが少ないはずです。どうすれば問題を回避できるか、あるいは目的達成のための最短ルートはどれなのか、などと考えて行動できれば、不要な問題を減らすことに繋がるでしょう。賢い人ほど、確かで安全な道を選ぶものです。

ちなみに引用した辞書の意味に登場する「聡明」とは、簡単に言えば賢いことであり、判断力・理解力が優れていることを指します。「道理」とは正しい行いや物事のあるべき筋道のことですね。つまりこれらの「聡明」「道理」に長けていれば、安全に身を守ることができ、このことを「明哲保身」とたとえているのです。

注意点としては、「明哲保身」の「保身」の意味が一人歩きして、「明哲保身」がまるで自分の安全だけを確保すること、と誤って解釈されることですね。「明哲保身」にはこのような自分勝手な意味合いはありません。しっかり覚えておきましょう。

\次のページで「「明哲保身」の語源は?」を解説!/

「明哲保身」の語源は?

次に「明哲保身」の語源を確認しておきましょう。

「明哲」
・聡明で物事の道理に通じていること、またその人物や様子のこと
・優れた才能と知恵をもち、物事の道理を正しく理解していること、またその人物のこと


「保身」
・自分の安全や地位、名誉などを守ること

「明哲保身」を熟語ごとに分解すると、上記の意味をもつことがわかりました。「明哲」とは知識・道理(晢)に詳しい(明)ことから、才能があり優れたこと・人を表します。「保身」とは身を無事に保つことで、単に命を守るだけでなく、自身の社会的地位や名誉を安全に確保するという熟語です。

また、中国の詩集である「詩経」大雅・烝民(たいが・じょうみん)に「明哲保身」の語源となる一節が登場しています。以下でご紹介しますね。

「既、以(すでに明かつ哲、以ってその身を保つ)」
意味:道理に明るく賢い人は、それによって身を守る

「明哲保身」の使い方・例文

「明哲保身」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.物事の本質を見極めることが得意な彼女には、トラブルに巻き込まれにくく、明哲保身の術が自然に備わっているようだ。

2.三人兄弟の真ん中に生まれた彼は、生まれながらに明哲保身を貫く術を学んだのだろう。頭の回転が速く、周囲への気配りも忘れないため、昇進も間違いないと社内で噂されている。

3.明哲保身に長けた会社の上司は、問題が起こる前に適切な策を実行することができ、部下からの厚い信頼を集めている。

「明哲保身」は優れた知識・理解力をもつ状態や人が前提であり、正しい行動や安全な対応を評価する意味をもちます。

小さなミスも、積み重なれば大きな問題やトラブルに発展しかねません。誤解を生まないようコミュニケーションをこまめにとったり、課題の根本原因を見極めて対応することができれば、本人はもちろん、周囲の人々や環境も平穏に保つことができるでしょう。ぜひ文章を作って練習してみてくださいね。

「明哲保身」の類義語は?違いは?

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それではここで「明哲保身」の類義語を確認しましょう。

「明哲防身」

「明哲防身(めいてつぼうしん)」とは、聡明で道理に通じていれば身を安全に保てることを表す四字熟語です。

「明哲保身」とほとんど同義であると考えて問題ないでしょう。なぜなら「保身」と「防身」は身を守る、安全に保つという意味合いが共通しているためです。「明哲保身」の言い換えとして覚えておくと良いでしょう。

「明哲保身」の対義語は?

続いて「明哲保身」の対義語を確認しましょう。ここでは「明哲保身」が優れた知識や判断力によって危険を回避するのに対して、特に何も対策をとらない状態を表す四字熟語を紹介します。

「無為無策」

「無為無策(むいむさく)」とは計画や方策が何もなく、状態をただ放置していることを表す四字熟語です。

「無為」とは何も行動せず、人の手を用いないことをいいます。「無策」とは方策を何ももたず、起こった事態に対して為す術が無いことです。

\次のページで「「拱手傍観」」を解説!/

「拱手傍観」

「拱手傍観(きょうしゅぼうかん)」とは、問題や出来事に直面した際に、すべきことを行わずにただ眺めていることを表す四字熟語です。

「拱手」とは中国の古い敬礼の名称で、胸の前に両手を重ねてお辞儀する動作をいいます。ここから転じて、腕を組んで動かさず、何もしないことを意味するようになりました。「傍観」とは、そばで何もせずにただ眺めることです。

「明哲保身」の英訳は?

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最後に「明哲保身」の英語表現について確認しましょう。

「wisdom and self-protection」

wisdom and self-protection とは、直訳すると「賢さと保身」を表す英語表現です。

「明哲」は英語で wisdom あるいは sagacity といい、「保身」は self-protection で表現することができます。

「明哲保身」を使いこなそう

この記事では「明哲保身」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「明哲保身」とは「聡明で道理に通じること・人は、物事を正しく処理して危険を避ける」ことを表す四字熟語でしたね。急がば回れともいいますが、いつでも焦らず冷静に合理的判断ができることが重要といえるでしょう。会話で使う機会はあまり無いかもしれませんが、文章の中で出会った時などに正しく解釈できるよう、ぜひ覚えておきましょう。

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【四字熟語】「明哲保身」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「明哲保身」について解説する。

端的に言えば明哲保身の意味は「賢い人は物事を上手に処理して身を守る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「明哲保身」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「明哲保身」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「明哲保身(めいてつほしん)」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「明哲保身」の意味は?

「明哲保身」には、次のような意味があります。

《「詩経」大雅・烝民から》聡明で道理に通じていて、物事を的確に処理し、安全に身を保つこと。

出典:大辞泉(小学館)「明哲保身」

聡明そうめいで道理に明るい人は、危険を避け身を安全に保つ意。また、本来の意味とは異なり、「保身」の意味が誤解されて、自分の身の安全だけを考え、要領よく生きるという意味で使われることもある。
▽「明哲」は賢くて物事の道理に明るいこと。また、その人やそのさま。「明哲めいてつを保たもつ」と訓読する。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「明哲保身」

「明哲保身」とは、賢く正しい行動をとることで安全に身を守ること、あるいは、聡明で道理に通じる賢い人は、物事を適切に処理して危険を避けられることを表します。

たとえば十分な知識や一歩先を見通す力のある人は、トラブルに巻き込まれることが少ないはずです。どうすれば問題を回避できるか、あるいは目的達成のための最短ルートはどれなのか、などと考えて行動できれば、不要な問題を減らすことに繋がるでしょう。賢い人ほど、確かで安全な道を選ぶものです。

ちなみに引用した辞書の意味に登場する「聡明」とは、簡単に言えば賢いことであり、判断力・理解力が優れていることを指します。「道理」とは正しい行いや物事のあるべき筋道のことですね。つまりこれらの「聡明」「道理」に長けていれば、安全に身を守ることができ、このことを「明哲保身」とたとえているのです。

注意点としては、「明哲保身」の「保身」の意味が一人歩きして、「明哲保身」がまるで自分の安全だけを確保すること、と誤って解釈されることですね。「明哲保身」にはこのような自分勝手な意味合いはありません。しっかり覚えておきましょう。

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