この記事では慣用句「煙に巻く」について解説する。

端的に言えば煙に巻くの意味は「相手の知らないことなどを大げさに言ってごまかす」ですが、辞書に載っている意味に加えてニュアンスや語源などを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「煙に巻く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「煙に巻く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「煙に巻く(けむにまく)」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「煙に巻く」の意味は?

「煙に巻く」には、次のような意味があります。

大げさなことや相手の知らないようなことばかりを言い立てて、相手を圧倒したり、ごまかしたりする。「巧みな弁舌で人を―・く」

[補説]この意味で「けむりにまく」と読むのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「煙に巻く」

「煙に巻く」とは、要点から逸れた話を並べたり、大げさに言い立てることで相手を戸惑わせることをいいます。

たとえば自分にとって不都合な話題が出た時、話を変えたり中断するために、異なる話題を持ち出すことや筋の通らない内容を繰り出すことが「煙に巻く」の具体的な行動例です。また、相手に反対意見や文句を言う隙を与えないよう、言葉を言い立てる・まくし立てることも「煙に巻く」のポイントの一つですね。

「煙に巻く」ことで相手を圧倒させ、会話をごまかしたり論点をぼかすことができます。煙に巻かれた相手は戸惑い、判断力を鈍らせているかもしれません。なぜなら一方的に言葉を投げかけられることで、考える時間を奪われてしまうからです。

「煙に巻く」の「煙(けむ)」の読み方に注意しましょう。慣用句では(けむり)とは読みません。

「煙に巻く」の語源は?

次に「煙に巻く」の語源を確認しておきましょう。「煙」と聞くとみなさんはどのようなイメージを連想するでしょうか。普段目にするタバコや、煙突から登る灰色の煙などが思い浮かぶかもしれませんね。

「煙に巻く」の「煙(けむ)」も同様で、もやのように空気に漂う気体を指しています。もしもあなたの身体が煙に包まれれば、そこから抜け出すまで視界や方向感覚は奪われ、息苦しさを感じる、などの影響を受けると考えられるでしょう。つまり「煙に巻く」とは、煙に巻き込んで相手の感覚を鈍らせることであるといえます。

また煙には、煙幕を使って追っ手の目をくらませ、その間に逃げるといった使い道もありますね。日常的な例ではありませんが、忍者などが敵を煙に巻くシーンをアニメなどで見たことがある方も多いのではないでしょうか。

このように「煙に巻く」とは、「煙」のもつ特性や威力を会話においてたとえたものであり、相手を混乱させる話術・方法としての意味が定着したのです。

\次のページで「「煙に巻く」の使い方・例文」を解説!/

「煙に巻く」の使い方・例文

「煙に巻く」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.
A「彼から肝心の情報を聞き出せた?」
B「だめだったよ。はぐらかされてしまった」
A「都合の悪い話題になると、適当な冗談を並べて僕らを煙に巻くのが彼の得意なやり口だ。やっぱり手強いなあ」

2.とある大学の研究期間が特定したとする新発見が話題となっている。しかし報告書に記載された情報は曖昧で、報道陣に問い詰められると回答をせず煙に巻いたため、その真偽は大変不透明だ。

3.不適切な発言と行動でスキャンダルを引き起こした国会議員は、マスコミの質問を煙に巻いて逃げた。

4.いつも恋愛の話題となると、彼女は巧みな話術で周囲を煙に巻いてしまう。

5.久々に会った同僚に調子を尋ねたが、個人的な話は苦手なのか煙に巻かれてしまった。

例文1から4では「煙に巻く」が文章に合った形で登場していますが、例文5では「煙に巻かれる」となっていますね。この受け身の形も非常に一般的で、よく見られる活用形の一つです。誰が煙に巻いたのか、巻かれたのかを見極めながら意味を掴みましょう。

「煙に巻く」の類義語は?違いは?

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それではここで「煙に巻く」の類義語を確認しましょう。

「取り繕う」

「取り繕う(とりつくろう)」とは、相手の関心や気持ちの方向を逸らし、追求を逃れることを表します。

自分にとって不都合なこと、たとえばミスなどを指摘された場合に、それらを隠そうと見せかけることが「取り繕う」です。単に「修理する・補修する」という意味もありますが、「煙に巻く」の類義語としては、指摘を逃れるために嘘やごまかしを行うことをいいます。

\次のページで「「惑わす」」を解説!/

「惑わす」

「惑わす(まどわす)」とは、相手の思考や判断力を失わせること・混乱させることです。

たとえば、意図的に誤った方向に誘導して相手に誤解を与えたり、嘘をついてだますことなどが「惑わす」には含まれます。

「はぐらかす」

「はぐらかす」とは、相手の追求から逃れるために論点をぼかすことです。

相手に気付かれないよう、さり気なく不都合なことから離れるというニュアンスがあります。つまり、会話の中で相手の関心・興味を逸らすことが「はぐらかす」のポイントなのです。

「やり過ごす」

「やり過ごす」とは、相手の好きなようにさせて、こちらから関わりを持たずに過ごすことです。

相手に対して言葉を言い立てる「煙に巻く」とは異なり、「やり過ごす」には相手の好きにさせて、自分からは特に何もしない・状況を放置する、といった受け身な姿勢が含まれます。

ただし、やはり都合の悪いことから離れたい場合に使われるので、「煙に巻く」の類義語として覚えておくと良いでしょう。自らにとって不都合な部分にはあえて触れず、距離をとって時間に解決させるといったニュアンスです。

「煙に巻く」の英訳は?

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最後に「煙に巻く」の英語表現を確認しましょう。

「confuse」

confuse は動詞で「相手や混乱させる、物事を複雑にする」といった意味をもちます。日常会話でもよく使われる表現の一つです。

He confused me with technical jargons that I really don't know.
彼は私の知らない専門用語を並べ立てて煙に巻いた。

\次のページで「「煙に巻く」を使いこなそう」を解説!/

「煙に巻く」を使いこなそう

この記事では「煙に巻く」の意味や語源、類義語、英語表現などを説明しました。

「煙に巻く」とは、相手の知らないことや関係のないことを大げさに話して、戸惑いを与える・ごまかすことでしたね。煙で視界を奪うように、巧みな話術で論点をすり替えるのです。あわせて確認した類義語などもしっかり復習しておきましょう。

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【慣用句】「煙に巻く」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では慣用句「煙に巻く」について解説する。

端的に言えば煙に巻くの意味は「相手の知らないことなどを大げさに言ってごまかす」ですが、辞書に載っている意味に加えてニュアンスや語源などを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「煙に巻く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「煙に巻く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「煙に巻く(けむにまく)」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「煙に巻く」の意味は?

「煙に巻く」には、次のような意味があります。

大げさなことや相手の知らないようなことばかりを言い立てて、相手を圧倒したり、ごまかしたりする。「巧みな弁舌で人を―・く」

[補説]この意味で「けむりにまく」と読むのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「煙に巻く」

「煙に巻く」とは、要点から逸れた話を並べたり、大げさに言い立てることで相手を戸惑わせることをいいます。

たとえば自分にとって不都合な話題が出た時、話を変えたり中断するために、異なる話題を持ち出すことや筋の通らない内容を繰り出すことが「煙に巻く」の具体的な行動例です。また、相手に反対意見や文句を言う隙を与えないよう、言葉を言い立てる・まくし立てることも「煙に巻く」のポイントの一つですね。

「煙に巻く」ことで相手を圧倒させ、会話をごまかしたり論点をぼかすことができます。煙に巻かれた相手は戸惑い、判断力を鈍らせているかもしれません。なぜなら一方的に言葉を投げかけられることで、考える時間を奪われてしまうからです。

「煙に巻く」の「煙(けむ)」の読み方に注意しましょう。慣用句では(けむり)とは読みません。

「煙に巻く」の語源は?

次に「煙に巻く」の語源を確認しておきましょう。「煙」と聞くとみなさんはどのようなイメージを連想するでしょうか。普段目にするタバコや、煙突から登る灰色の煙などが思い浮かぶかもしれませんね。

「煙に巻く」の「煙(けむ)」も同様で、もやのように空気に漂う気体を指しています。もしもあなたの身体が煙に包まれれば、そこから抜け出すまで視界や方向感覚は奪われ、息苦しさを感じる、などの影響を受けると考えられるでしょう。つまり「煙に巻く」とは、煙に巻き込んで相手の感覚を鈍らせることであるといえます。

また煙には、煙幕を使って追っ手の目をくらませ、その間に逃げるといった使い道もありますね。日常的な例ではありませんが、忍者などが敵を煙に巻くシーンをアニメなどで見たことがある方も多いのではないでしょうか。

このように「煙に巻く」とは、「煙」のもつ特性や威力を会話においてたとえたものであり、相手を混乱させる話術・方法としての意味が定着したのです。

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