毛皮にやたらゴミが付く、発泡スチロールのカケラが手から離れない、下敷きで頭をこすると髪の毛がくっつく。これらは静電気の影響で起きる現象。

さて、静電気ってそもそも何でしょう?そしてなぜくっついてしまうのか?「電気」というとピンと来やすいが「静電気」は意外と見落としがちな内容です。理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。エンジニアの経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するの得意。

1.静電気とは

image by iStockphoto

本記事では静電気により発生する力静電気力orクーロン力と呼ばれる)について説明しますが、その前にそもそも静電気とは何かというところを見ていきましょう。静電気とは「静止した電荷による電気」。字面だけ見るとそのまんまですね。何が静止なんでしょうか。普通の電気とはどう違うのでしょうか。

普通の電気と静電気

普通の電気(動電気という呼び方もあるらしい)と静電気の大きな違いは、「電気が流れ続けているかどうか」という点。以下、この記事では動電気のことをイメージしやすいように「普通の電気」と称しますが、正式な用語ではないのでテストで解答したり人に説明したりするときは注意してくださいね。

普通の電気は金属など、「電気を流しやすい物体=導電体」で見られます。導電体は分子構造上電荷が移動しやすくなっているもの。移動している電荷がいわゆる「普通の電気」です。

一方、静電気はプラスチックやビニールのように「電気を流しにくい物体=絶縁体」で起きるもの。これら絶縁体は分子構造上、電荷が非常に移動しづらい状態。したがって、電荷は物体内のどこに存在しても移動できずに静止しています。流れていませんが、電荷は存在している。これが静電気の正体。

静電気は絶縁体の摩擦などで発生することはよく知られています。どういうメカニズムで発生するのか見ていきましょう。

2.静電気の発生

2.静電気の発生

image by Study-Z編集部

どんな物体も拡大すると、いきつくところは分子、原子。それらは電荷で構成されています。

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+ か -、2つに1つ。+同士や-同士の電荷は退け合い、+電荷と-電荷はひっつき合うもの。これらのバランスが上手く保たれて「物体」の形を為しています。

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ところが、摩擦などによりこれら電荷のバランスが崩れたらどうなるでしょうか?-電荷なる「電子」の方が陽子より軽いため、ズレ動くのは電子の方。ズレ動いた結果、ある所は電子(-電荷)が多めになり、あるところは少なめに。-電荷が多い所は電荷が-気味、少ない所は+気味に。と電荷のバランスが崩れてしまいますね。バランスが崩れると場所によって電位差が出来ますね(+や-やらの差がある)。このように電荷が偏ってしまい元に戻れなくなった状態が静電気というもの。静電気が発生するのは後述のような理由から絶縁体だけです。

静電気が発生する物体とは?

電荷のバランスが崩れても電子が自由に動けたらそのまま元通りバランスが良い状態に戻れます。これは電気を流しやすい(導電体)での状況。電荷は動いてしまうので偏ったままにはならず、したがって静電気も発生しません。

一方、電子が移動しにくい物体(絶縁体)はどうでしょう?一度摩擦などにより電荷のバランスが崩されると、そのまま電子が移動出来ず電荷が偏ったままとなり帯電してしまいます。

+電荷or-電荷の二者択一となる理由

そもそもなぜ+電荷か-電荷のどちらかなのか?電荷なしはありえないのか?実は電荷を持たない中性子も存在しますが、これは陽子という+電荷とセットで存在し原子核を成しているもの。中性子と陽子を切り離すのは物凄いエネルギーが必要で通常はくっついているもの。

したがって+電荷、-電荷、電荷なしの3パターンありますが+電荷なる陽子と電荷なしの中性子は合体して+電荷となる原子核になるので結果、+か-どちらか二者択一になります。

この静電気によって物が引っ付いたり反発し合って離れたりします。一体どんなメカニズムなのでしょうか。

3.引力と斥力のイメージ

3.引力と斥力のイメージ

image by Study-Z編集部

+電荷と-電荷は引っ張り合い、+と+または-と-は退け合い。何故こうなるかは解明されていませんが、筆者は電荷の流れに注目するイメージしやすいと考えます。

+の電荷は電位が高く、-電荷は電位が低い。左右で電位差があると、なるべく電位差をなくそうとするべく電荷が移動すると考えましょう。そうするためには+の電荷は電位が低い-電荷の方に、-電荷は電位が高い+電荷の方に移動すれば良いですね。お互い自分の電荷とは逆の方に向かう。つまりは同じ電荷からは遠ざかるわけです。

\次のページで「4.静電気力(クーロン力)」を解説!/

4.静電気力(クーロン力)

電荷の偏りによって起きるクーロン力(静電気力)の大きさは何で決まるのか?種々の実験に基づき分かったか結果が以下の公式。定数x電荷の積/距離の2乗

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静電気力に関係する要素。1つ目は対象となっている2つの電荷の掛け算これが大きいほど静電気力は大きくなり、例えばかなり擦っていて帯電が激しい物同士に働く静電気力は大きくなります。どちらかが全く帯電していない(静止出来る電荷が居ない)場合は静電気力はゼロに。片方がいくら帯電していようとも、もう片方が帯電していなければ静電気は働きません

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例えば、イラストのように+に帯電した物体Aを導電体Bに近づけたとしましょう。導電体Bの-電荷たちは物体Aの方に近づいていきたいのはやまやま。ところが、導電体Bの-電荷全てが物体Aの方に偏って存在することはできません。そもそも、導電体Bの-電荷同士が反発しあうためです。

+電荷ばかりor-電荷ばかりが偏って存在できるのは絶縁体の場合だけ。導電体だと、物体内で電荷移動が出来てしまうため、互いに反発しあう「同種の電荷」だけで集まるのは不可能です。

静電気力の方向

上述の式では静電気力の向きも反映されています。電荷q1, q2がどちらも+またはどちらも-なら、その掛け算q1q2は正の値を取りますね。つまり静電気力の符号が正なら斥力、負なら引力ということ。

電荷同士の距離

静電気力に影響する要素2つ目は電荷同士の距離。当然近づいているほど静電気力は大きく、遠いほど小さくなるもの。種々の実験結果から、静電気力の大きさはほぼ距離の2乗に反比例(ちょっとややこしい)することが分かっています。距離を2倍にしたら静電気力は4分の1になる計算です。

6.公式について

上述の公式は電荷に関するクーロンの法則でまとめられているもの。似たような形の式として万有引力の式がありますね。分母が距離の2乗で分子が各要素のパラメータ。万有引力なら質量で、静電気力なら電荷。

面白いのは、これらの式が実験に基づく結果であること。何かの定理から導出したわけではないのです。つまり、公式は丸暗記するしかないですね残念ながら。

\次のページで「静電気でくっつく理由」を解説!/

静電気でくっつく理由

静電気で物体同士がくっつく理由は電荷が偏って存在し、それらが引っ張り合う(静電気力が働く)から。静電気は電荷が偏ったまま移動できなくなる「絶縁体」に発生。静電気力の大きさは、電荷の大きさが大きいほど、電荷同士が近いほど大きくなります。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

なぜくっつく?静電気力(クーロン力)を理系ライターがわかりやすく解説

毛皮にやたらゴミが付く、発泡スチロールのカケラが手から離れない、下敷きで頭をこすると髪の毛がくっつく。これらは静電気の影響で起きる現象。

さて、静電気ってそもそも何でしょう?そしてなぜくっついてしまうのか?「電気」というとピンと来やすいが「静電気」は意外と見落としがちな内容です。理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の高校理科の教員免許も持っている。エンジニアの経験があり、教科書の内容に終わらず実際の現象と関連付けて説明するの得意。

1.静電気とは

image by iStockphoto

本記事では静電気により発生する力静電気力orクーロン力と呼ばれる)について説明しますが、その前にそもそも静電気とは何かというところを見ていきましょう。静電気とは「静止した電荷による電気」。字面だけ見るとそのまんまですね。何が静止なんでしょうか。普通の電気とはどう違うのでしょうか。

普通の電気と静電気

普通の電気(動電気という呼び方もあるらしい)と静電気の大きな違いは、「電気が流れ続けているかどうか」という点。以下、この記事では動電気のことをイメージしやすいように「普通の電気」と称しますが、正式な用語ではないのでテストで解答したり人に説明したりするときは注意してくださいね。

普通の電気は金属など、「電気を流しやすい物体=導電体」で見られます。導電体は分子構造上電荷が移動しやすくなっているもの。移動している電荷がいわゆる「普通の電気」です。

一方、静電気はプラスチックやビニールのように「電気を流しにくい物体=絶縁体」で起きるもの。これら絶縁体は分子構造上、電荷が非常に移動しづらい状態。したがって、電荷は物体内のどこに存在しても移動できずに静止しています。流れていませんが、電荷は存在している。これが静電気の正体。

静電気は絶縁体の摩擦などで発生することはよく知られています。どういうメカニズムで発生するのか見ていきましょう。

2.静電気の発生

2.静電気の発生

image by Study-Z編集部

どんな物体も拡大すると、いきつくところは分子、原子。それらは電荷で構成されています。

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+ か –、2つに1つ。+同士や-同士の電荷は退け合い、+電荷と-電荷はひっつき合うもの。これらのバランスが上手く保たれて「物体」の形を為しています。

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ところが、摩擦などによりこれら電荷のバランスが崩れたらどうなるでしょうか?-電荷なる「電子」の方が陽子より軽いため、ズレ動くのは電子の方。ズレ動いた結果、ある所は電子(-電荷)が多めになり、あるところは少なめに。-電荷が多い所は電荷が-気味、少ない所は+気味に。と電荷のバランスが崩れてしまいますね。バランスが崩れると場所によって電位差が出来ますね(+や-やらの差がある)。このように電荷が偏ってしまい元に戻れなくなった状態が静電気というもの。静電気が発生するのは後述のような理由から絶縁体だけです。

静電気が発生する物体とは?

電荷のバランスが崩れても電子が自由に動けたらそのまま元通りバランスが良い状態に戻れます。これは電気を流しやすい(導電体)での状況。電荷は動いてしまうので偏ったままにはならず、したがって静電気も発生しません。

一方、電子が移動しにくい物体(絶縁体)はどうでしょう?一度摩擦などにより電荷のバランスが崩されると、そのまま電子が移動出来ず電荷が偏ったままとなり帯電してしまいます。

+電荷or-電荷の二者択一となる理由

そもそもなぜ+電荷か-電荷のどちらかなのか?電荷なしはありえないのか?実は電荷を持たない中性子も存在しますが、これは陽子という+電荷とセットで存在し原子核を成しているもの。中性子と陽子を切り離すのは物凄いエネルギーが必要で通常はくっついているもの。

したがって+電荷、-電荷、電荷なしの3パターンありますが+電荷なる陽子と電荷なしの中性子は合体して+電荷となる原子核になるので結果、+か-どちらか二者択一になります。

この静電気によって物が引っ付いたり反発し合って離れたりします。一体どんなメカニズムなのでしょうか。

3.引力と斥力のイメージ

3.引力と斥力のイメージ

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+電荷と-電荷は引っ張り合い、+と+または-と-は退け合い。何故こうなるかは解明されていませんが、筆者は電荷の流れに注目するイメージしやすいと考えます。

+の電荷は電位が高く、-電荷は電位が低い。左右で電位差があると、なるべく電位差をなくそうとするべく電荷が移動すると考えましょう。そうするためには+の電荷は電位が低い-電荷の方に、電荷は電位が高い+電荷の方に移動すれば良いですね。お互い自分の電荷とは逆の方に向かう。つまりは同じ電荷からは遠ざかるわけです。

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