この記事では「堅忍不抜」について解説する。

端的に言えば「堅忍不抜」の意味は「どんな困難や誘惑にも心を動かさず、耐え抜くこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

学習塾経営者で国語が得意なぼすこを呼んです。一緒に「堅忍不抜」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぼすこ

国立大学教育学部卒業後、学習塾を経営。読書好きが高じて蓄えた幅広い知識と、得意教科である国語力で、四字熟語をわかりやすく解説していく。

「堅忍不抜」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「堅忍不抜」の意味や語源・使い方など、基本的な内容を確認していきましょう。

「堅忍不抜」の意味は?

「堅忍不抜」について、辞書には次のように記されています。

1.どんな困難や誘惑にも心を動かさず、耐え抜くこと。

出典:大辞林第三版(三省堂)「堅忍不抜」

「堅忍不抜」の読みは、「けんにんふばつ」で、前後で2つの熟語に分けることができます。

「堅忍」は、しっかり堪えしのぶことを、「不抜」は、抜けないこと、心が堅く揺るがないことを意味する熟語です。2つを合わせて、「どんな困難や誘惑にも耐え、しっかりとして堅く揺るがない心」を表します。

元々「抜」という漢字には、「変化」に関連した意味が多くあり、「不」という否定の語とくっつくことで、「変化しない、動かない」という強い意味が生まれてくるんですね。

「堅忍不抜」の語源は?

「堅忍不抜」の意味を確認したところで、次にその語源についても見ていくことにしましょう。

「堅忍不抜」は、唐宋八大家の一人、蘇軾(そしょく)に由来します。唐宋という名のとおり、蘇軾は中国宋の時代の人物で、北宋の政治家、詩人、書家、画家と、様々な分野で活躍を見せた人物です。

豊かな教養を持ち、多くの詩などで言葉を残した蘇軾が、著書である「鼂錯論」の中で述べたのが、「古の大事を立つる者は、唯だに超世の才有るのみならず、亦た必ず堅忍不抜の志あり」という言葉。現代語に訳すと、「古い時代に大事業を企てた人物は、世間一般の人よりも才能があっただけでなく、必ず、困難などに耐え忍び、揺るがない心を持っていた。」となります。

蘇軾自身も、才能はあったにもかかわらず、幾度かの左遷により苦しい人生を強いられたが、常に自分の思う姿を追い続けたという点で「堅忍不抜の志」を持つ人物です。そんな蘇軾が作った言葉ですから、「堅忍不抜」という言葉には重みを感じますね。

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「堅忍不抜」の使い方・例文

では、「堅忍不抜」をどのように使えばよいのか、例文を見ていきましょう。

1.「堅忍不抜」を座右の銘に持つ彼は、我慢強く、しっかりとした意志を持った、その言葉にふさわしい人物だ。
2.新しいプロジェクトリーダーになった彼女は、堅忍不抜の精神を持って、そのプロジェクトを成し遂げた。

「堅忍不抜」は、「どんな難事にも揺れ動かず、耐えること」を意味しますが、主に精神や意思について使われる言葉です。よって、例文のように、文の中で使うときにも、堅い心や強い意思を表現する場合に使われるのが妥当でしょう。

「難事に耐える」というところだけで考えると、強風に耐え抜いた木、などを思い浮かべることもありますが、この場合には意思のあるものではないため、「堅忍不抜」を使うことは適当ではありません。

また、「意思が強い」というと、「頑固」のような融通のきかない意思の硬さをイメージすることもありますが、ただ頑として譲らない、というような意思の強さではなく、「志のある強い思いがあるから難事にも耐え抜く」というような強い意思を感じる場合に使われるべきでしょう。

「堅忍不抜」の類義語は?違いは?

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「堅忍不抜」と似たような意味を持つ言葉を見ていきましょう。

「不撓不屈」

「不撓不屈」の読みは「ふとうふくつ」、意味は「強い意志を持って、どんな苦労や困難にもくじけない様子」です。

「堅忍不抜」と大変似た意味を持っていますが、「不撓不屈」は「何があっても自分の意志は曲げない」という意味で能動的なのに対し、「堅忍不抜」は「自分の意思のために耐え抜く」という意味で受動的という違いがあります。

意味自体はとてもよく似ている言葉同士なので、使う対象の状況をよく見た上でどちらを使うのか、見極める必要がありそうですよ。使い方を間違えると、印象が正反対に変わってしまうので、気をつけましょう。

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「堅忍不抜」の対義語は?

立派な意味を持つ「堅忍不抜」ですが、対義語はどんなものがあるのか、見ていきましょう。

「唯々諾諾」

「唯々諾諾」の読みは「いいだくだく」、意味は「何事にも他人の言いなりである様子」です。「意志が弱い」というような意味の言葉は多くありますが、「唯々諾諾」の特徴は、主体性のなさ。

決断力がなくて自分の意志を通せない、相手を恐れて言いなりになる、といったわけではなく、「自分がないため言いなりになっている」状態をよく表現します。

自分の意志を強く持って難事を耐え抜く「堅忍不抜」とは、しっかりと自分を持っている意志の強さという点で大きく違っていますね。

「堅忍不抜」の英訳は?

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成功者には必要となる「堅忍不抜」の精神を、海外の人に向けて説明するには、どのような言葉が適当なのでしょうか。

「idomitable perseverance」

「idomitable」は「不屈の」、「perseverance」は「忍耐」という意味の英単語です。2つを合わせて「不屈の忍耐」すなわち「堅忍不抜」を表す英熟語となります。

後ろ側の「perseverance」だけでも「堅忍不抜」を表す英単語として使うことができますが、「堅忍不抜」はただ我慢強いという意味の忍耐だけではなく、「強い意志があるから耐え抜くことができる」という意味合いを持っていますので、そのニュアンスも含めて表現するならば、「idomitable」を付けた表現の方が適当かと私は感じました。

せっかく古くから伝わる四字熟語なので、細かい意味まで伝わるような表現を選んでいきたいですね。

「堅忍不抜」を使いこなそう

「堅忍不抜」について様々な点から見てきました。古い時代の中国から伝わった言葉ですが、私は「不抜」という言葉を見て、鞘から抜けない刀を思い浮かべたので、とても日本らしさのある意味の四字熟語だ、と思いました。

私たちの生活の中で、大事を成し遂げるということはなかなかあるものではないですが、日々小さな出来事は起こるものです。嫌なことや思ってもみなかったこともありますが、「堅忍不抜」の精神を持つことで一つ一つ乗り越えて生きていくことができるのではないでしょうか。

私もまだまだ小さなことに心動かされて生活していますが、たいていのことには耐え抜けるような「堅忍不抜」の精神を持ちたいものです。

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【四字熟語】「堅忍不抜」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「堅忍不抜」の使い方・例文

では、「堅忍不抜」をどのように使えばよいのか、例文を見ていきましょう。

1.「堅忍不抜」を座右の銘に持つ彼は、我慢強く、しっかりとした意志を持った、その言葉にふさわしい人物だ。
2.新しいプロジェクトリーダーになった彼女は、堅忍不抜の精神を持って、そのプロジェクトを成し遂げた。

「堅忍不抜」は、「どんな難事にも揺れ動かず、耐えること」を意味しますが、主に精神や意思について使われる言葉です。よって、例文のように、文の中で使うときにも、堅い心や強い意思を表現する場合に使われるのが妥当でしょう。

「難事に耐える」というところだけで考えると、強風に耐え抜いた木、などを思い浮かべることもありますが、この場合には意思のあるものではないため、「堅忍不抜」を使うことは適当ではありません。

また、「意思が強い」というと、「頑固」のような融通のきかない意思の硬さをイメージすることもありますが、ただ頑として譲らない、というような意思の強さではなく、「志のある強い思いがあるから難事にも耐え抜く」というような強い意思を感じる場合に使われるべきでしょう。

「堅忍不抜」の類義語は?違いは?

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「堅忍不抜」と似たような意味を持つ言葉を見ていきましょう。

「不撓不屈」

「不撓不屈」の読みは「ふとうふくつ」、意味は「強い意志を持って、どんな苦労や困難にもくじけない様子」です。

「堅忍不抜」と大変似た意味を持っていますが、「不撓不屈」は「何があっても自分の意志は曲げない」という意味で能動的なのに対し、「堅忍不抜」は「自分の意思のために耐え抜く」という意味で受動的という違いがあります。

意味自体はとてもよく似ている言葉同士なので、使う対象の状況をよく見た上でどちらを使うのか、見極める必要がありそうですよ。使い方を間違えると、印象が正反対に変わってしまうので、気をつけましょう。

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