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世界を恐怖に陥れた「黒死病(ペスト)」とは?世界史通のライターが感染症の歴史をわかりやすく解説

人類は過去に何度も感染症に苦しめられてきた。中でも「黒死病」と呼ばれた病気は、歴史を通して世界各地で度々パンデミックを引き起こしている。今回は、特に壊滅的な被害をもたらしたと言われる14世紀の様子を中心に見ながら、社会的・文化的にも大きなインパクトを残した黒死病の流行について学んでいこう。

世界史に詳しいライター万嶋せらと一緒に解説していきます。

ライター/万嶋せら

会社員を経て、イギリスに進学し修士号を取得した経歴を持つライター。歴史が好きで関連書籍をよく読み、中でも近代以降の歴史と古典文学系が得意。今回は、「黒死病(ペスト)」について解説する。

黒死病とは何か

Plague hospital in Vienna 1679.jpg
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14世紀に大流行した黒死病

14世紀ごろ、ある伝染病が大流行しました。当時、この病気は正体も原因も判明していませんでした。そのため、多くの人が成す術もなく次々に命を落としていきました。正確な数字はわかっていませんが、全世界で1億人にものぼる人々が亡くなったと言われています。

世界を大混乱におとしいれたこの伝染病の正体は「ペスト」でした。ペストは、別名「黒死病(black death)」とも呼ばれて恐れられる病気です。病気にかかると皮下出血のために皮膚が黒くなって見えることから、この名前が付けられたと言われています。

人類の長い歴史を通して何度か、ペストは大規模な流行を繰り返してきました。中でも壊滅的な被害がもたらされたことから、14世紀の流行が特によく知られています。特に甚大な被害を受けたヨーロッパでは、当時の人口がおよそ3分の1から半分程度も減少したと言われているのです。

ペストとはどのような病気か

ペストは、ペスト菌という感染力の強い細菌によって引き起こされる、致死率の非常に高い病気です。「腺ペスト」「敗血症ペスト」「肺ペスト」などのタイプがありますが、14世紀のヨーロッパでは主に「腺ペスト」が流行していたと考えられています。

「腺ペスト」は、ペストの中では最もよくあるタイプです。発症するとリンパ節が大きく腫れあがり、多くの場合は発熱や悪寒、下痢などの症状を伴います。治療をしなければ、数日間で死に至ることも珍しくありません。

「敗血症ペスト」にかかると、全身に黒いあざができます。ペスト菌が血液に運ばれて身体中に広がり、敗血症を引き起こして手足などが壊死するからです。「黒死病」の名前は、この敗血症ペストの症状に由来しています。

どのタイプであって多くの場合は数日間の潜伏期間を経て発症し、適切に治療を行わなければ通常は数日以内に命を落とすという、非常に怖い病気です。「黒死病」の正体がまだ知られていなかった14世紀のヨーロッパでは、正しい治療法も伝染を防ぐ方法もまったくわかっていませんでした。そのため病気がまたたく間に蔓延し、多くの被害をもたらしたのです。

ヨーロッパで大流行した黒死病

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