この記事では「冷暖自知」について解説する。

端的に言えば冷暖自知の意味は「自分で体験してみてわかること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「冷暖自知」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「冷暖自知」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「冷暖自知」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「れいだんじち」です。意味だけでなく、語源や使い方も身につけておくと理解が深まりますよ。

「冷暖自知」の意味は?

「冷暖自知」には、次のような意味があります。語源やもとの意味もありますが、その前に現在使われている一般的な意味について知っておきましょう。

1.体験したものでなければ分からないこと。

出典:四字熟語辞典(学研)

調べると何かに掲載されていたり、人から聞いてわかることもありますが、何事も実際にやってみないことには本当にわかったとは言えないということです。ほぼ間違いのないようなことであっても、人から聞いた借り物の知識ではなく自分で体験して確かめることに意味があるということにつながります。

また、上記のほかに、他人から言われなくても自分のことは自分でわかるという意味で使われることもありますよ。

「冷暖自知」の語源は?

次に「冷暖自知」の語源を確認しておきましょう。「冷暖(れいだん)自(みずか)ら知る」と訓読し、その由来は『景徳傳燈録(けいとくでんとうろく)』という禅宗の歴史書にあります。『景徳傳燈録』には、次のような話が書かれていますよ。

目の前に一杯の椀にお茶が注がれているとして、それが温かいか冷たいかの湯加減は見ているだけでは知ることはできません。温かいか冷たいかを知るには、自分で触ってみるか飲んでみるしかないということです。

このことは、禅宗では自ら実践して経験を積んでこそ会得することができるという教えにつながっており、禅語として使われています。

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「冷暖自知」の使い方・例文

「冷暖自知」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な特徴も合わせて確認していくいいですよ。

1.こどもの教育では、情報や知識を教えるほか実際に手に触れる冷暖自知の考え方も重視されている。
2.いつの時代も本物を見る、実物を触る、体験するなど冷暖自知することで、充実感が得られる。

例文1.では、こどもの教育には自らの体験が大切であるということを表しています。例文2.のほうは、情報化社会となった今も含めて、時代に関わらず自ら体験することでよって得られる感触もあるという意味です。実際に体験すれば主観ではなく事実に変わるので、より正確に物事を把握することもあります。

また、文法的に見てみると、例文1.は「冷暖自知の…」と名詞のカタマリとして使っているのに対し、例文2.では「冷暖自知する…」と動詞化した表現として使っていますよ。いずれの使い方をすることもあります。

「冷暖自知」の類義語は?違いは?

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それでは、「冷暖自知」の類義語についての説明です。「冷暖自知」の自ら体験してこそわかるという意味に近い四字熟語を見ていきましょう。

「実践躬行」

「冷暖自知」の類義語には、「実践躬行(じっせんきゅうこう)」があります。意味は、理論や信条などを自身の力で実際に実行することです。「躬」は自らという意味なので、「実践」と「躬行」とも自ら実行するという意味になっています。

「実践躬行」は自ら実行するという意味ですが、わかったつもりになるのではなく自分で実際にやってみることが大切であるというニュアンスを含んでいますよ。

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「実事求是」

類義語にはもう一つ、「実事求是(じつじきゅうぜ)」があります。事実の実証に基づいて物事の真理を追求することという意味です。「事を実にして是を求む」と訓読し、「実事」は実際のこと、「求是」は真理や誠を窮(きわ)め求めることを表しています。

また、もとは中国の清朝の考証学の学風のことで、現在の中国でも使われていますよ。考証学とは、根拠を明示して論証していく学問のすすめ方のことです。

「冷暖自知」の対義語は?

次に、「冷暖自知」の対義語についての説明です。「冷暖自知」の自ら実践する意味に対して、実践の伴わないような四字熟語を二種類紹介するので、ニュアンスも含めて詳しく見ていきましょう。

「空理空論」

「冷暖自知」の対義語には、「空理空論(くうりくうろん)」があります。意味のほうは、実際とはかけ離れたような役に立たない理論や考えのことです。「空理」も「空論」も現実には役に立たない理論や議論のことを表しています。

もともとは、世の中のものはみんな因縁によって起こる仮のものであり実体がないという仏教の言葉からきていますよ。そこから転じて、現実的ではない概念的な理論のことを言うようになりました。

「眼高手低」

対義語には、もう一つ「眼高手低(がんこうしゅてい)」があります。目は肥えているが能力や技能が十分でないこと、または、批評する力はあるが創作力はないことという意味です。「眼高くして手低し」と訓読し、「眼高」は見たり批評すること、「手低」は実行力が低いことを表しています。

そこから転じて、理想は高いものの実行力が伴わないことという意味で使われることもありますよ。「眼高手低の…」「眼高手低に…」という使い方をするのが一般的です。

「冷暖自知」の英訳は?

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最後に、「冷暖自知」の英訳についての説明です。やや長くなっていますが、非常に近い意味を表す表現になっています。

「spiritual enlightenment only comes through personal experience」

「冷暖自知」の英訳には、「spiritual enlightenment only comes through personal experience」があります。直訳すると「個人の経験を通して得られる悟り」です。

「spiritual」は、日本語でもスピリチュアルと言われることもありますが「精神的な、宗教的な」という意味があります。「enlightenment」は、「啓発する、教化する、明らかにする」という意味の動詞「enlighten」の名詞形です。

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「冷暖自知」を使いこなそう

今回の記事では「冷暖自知」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「冷暖自知」の基本的な意味は「自ら体験してわかること」です。類義語や対義語については、それぞれに特徴がありますし生き方やライフスタイルにも関わる話でもあるので、場面に合わせて使い分けるといいですね。意味だけでなく語源や使い方まで知っておくと役に立ちますよ。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「冷暖自知」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「冷暖自知」について解説する。

端的に言えば冷暖自知の意味は「自分で体験してみてわかること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「冷暖自知」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「冷暖自知」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「冷暖自知」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「れいだんじち」です。意味だけでなく、語源や使い方も身につけておくと理解が深まりますよ。

「冷暖自知」の意味は?

「冷暖自知」には、次のような意味があります。語源やもとの意味もありますが、その前に現在使われている一般的な意味について知っておきましょう。

1.体験したものでなければ分からないこと。

出典:四字熟語辞典(学研)

調べると何かに掲載されていたり、人から聞いてわかることもありますが、何事も実際にやってみないことには本当にわかったとは言えないということです。ほぼ間違いのないようなことであっても、人から聞いた借り物の知識ではなく自分で体験して確かめることに意味があるということにつながります。

また、上記のほかに、他人から言われなくても自分のことは自分でわかるという意味で使われることもありますよ。

「冷暖自知」の語源は?

次に「冷暖自知」の語源を確認しておきましょう。「冷暖(れいだん)自(みずか)ら知る」と訓読し、その由来は『景徳傳燈録(けいとくでんとうろく)』という禅宗の歴史書にあります。『景徳傳燈録』には、次のような話が書かれていますよ。

目の前に一杯の椀にお茶が注がれているとして、それが温かいか冷たいかの湯加減は見ているだけでは知ることはできません。温かいか冷たいかを知るには、自分で触ってみるか飲んでみるしかないということです。

このことは、禅宗では自ら実践して経験を積んでこそ会得することができるという教えにつながっており、禅語として使われています。

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