遺伝と聞くと顔が似ていたり血液型の関係であったりを思い浮かべるやつが多いでしょう。ですがそれは遺伝の一部に過ぎなのです。
まずは人間の遺伝を例にとって生化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。
ライター/Ayumi
理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。
1.形質とは
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形質とは、動物や植物など、生物のもつ性質や特徴のことです。そのうち、遺伝によって親世代から子世代へ継承される外見や生態系のパターンなどを遺伝形質といいます。これは肌や髪の色、顔のパーツなどが当てはまりますね。また、髪の毛が何色か、直毛かくせ毛か、といった状態のことを形質状態といいます。メンデルがエンドウマメで見つけた丸い豆としわの豆、緑の豆と黄色い豆という遺伝情報も、この形質の1つです。
それでは、形質について細かく見ていきましょう。形質には4つの大きな分類があり、それは動植物それぞれに存在するものです。まずはそれらの区別をわかりやすいように動物で例を出し、植物についても考えてみましょう。
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1-1.見た目に関わる形状性質
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最もわかりやすい遺伝情報は外見に現れるでしょう。体格や髪の毛、顔といった部分は親子関係を判別するときの大きな手掛かりとなりますね。よく見てみると目は父親、鼻は母親といったようにパーツごとに異なる人もいるでしょう。兄弟で顔が似ていないというケースも多々ありますが、それは父親似と母親似で異なるからからもしれませんね。
上の表はどんな遺伝状態が受け継がれやすいかという法則を示したものです。たとえば黒髪の母親と金髪の父親をもつこの場合、ほとんどが黒または茶色の髪をもつようになるでしょう。それは黒い髪になる遺伝子の方が子に伝わりやすいという性質をもっているからです。(ただし隔世遺伝といって祖父母世代のもつ形質が孫世代で発現する場合もありますよ。)このように、より子に受け継がれやすい形質状態を優性、その反対を劣性といいます。ただし、近年では遺伝に優劣があるという悪い印象につながるとして顕性(けんせい)・潜性(せんせい)と呼び名が変わり、表記が混在している場合もあるようです。
植物に関しても同様で、花や種子の大きさ、色、形といった見た目に関する遺伝形質がこれにあたります。より美しい花を咲かせるため、大きな実をつけるための品種改良がさかんに行われていますよね。
1-2.行動に関わる生態形質
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動物においては、ある特定の条件下における行動に傾向がみられるでしょう。行動遺伝学という分野では、遺伝が行動にどのような影響を与えるかを研究しています。例えば、同じ遺伝子をもつ一卵性双生児は行動遺伝子において長く研究対象となっているのをご存知でしょうか。行動や性格に影響を与えているのは遺伝子なのか、環境なのかというテーマで研究が行われています。
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