今回は「自然発火」について詳しく勉強していこう。

自然に発火するなんてオカルト的な話だと思うやつもいるでしょう。ですがこれはれっきとした化学現象なんです。

日常生活で起こりうる自然発火についても化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.自然発火とは

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自然発火とは字のごとく自然に(人為的・意図的に火をつけることなく)出火する現象をいいます。火をつけていないのに出火…?と不思議に思うでしょう。

よくあるオカルト話には、火元のない場所で焼死体が見つかり、なぜか周辺にあった家具などは燃えずに残っていたなんていうものがありますね。これは人体発火現象ともいわれ、実際にまだ原因が判明していない事件も多々あります。これには様々な仮説がとなえられていますが、今回解説する自然発火とはまた別のお話です。

さて、本題の自然発火とは、自然界(主に森や林)などで起こるものと家や工場などで起こるものがあります。あなたの生活でも起こりうる現象でもあるので、しっかり学んでいきましょう。

2.自然発火の事例を解説

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そもそも発火とは、火元なしで自ら燃え始めることをいいます。例えば、ガソリンに火を近づけたことによる火災は火元があるので発火ではなく引火です。一方で天ぷら油を加熱したまま放置してしまったことによる火災は、油と火元が接しているわけではなく油自らが燃え始めるので発火に当たります。(ちなみに料理手法の1つであるフランベは揮発したアルコールに火をつけて行うので引火です。)しかし、いわゆる天ぷら油火災はガスコンロやIHコンロをつけるという明らかに人為的な火元がそもそもの原因になっているので、今回の解説からは除外します。アイロンのつけっぱなしによる火災も同様です。

詳しくはこちらでも解説しています。

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2-1.キリンは水中に棲む

「キリンは水中に棲む」というのは化学を学ぶ際によく用いられる語呂の1つです。ここでいうキリンはもちろん動物のキリンではなく、黄リン(おうりん)をさします。リンには同素体が存在していて、マッチに使われる赤リンが馴染み深いですよね。黄リンは常温で発火してしまうことから、水中で保存するのが常識です。

このように化学物質においては保存環境によって何らかの反応を起こしてしまったり変質してしまったりするものが存在します。そのため、冷蔵・冷凍・常温・暗所など様々な保存条件を確認することが大切です。もしリン同様にナトリウムを水中に入れてしまったら大爆発が起こるでしょう。ナトリウムは灯油に保存が原則です。

2-2.乾燥機で火災発生

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コインランドリーや家庭用乾燥機には「乾燥終了後は洗濯物を放置しないでください」のような但し書きがあるのを見たことがあるでしょうか。「洗濯済でも油分の付着している衣類は乾燥させないでください」という注意事項が書かれていたりします。便利な乾燥機ですが、油や塗料のついた衣類や布巾(ウエス)を乾燥・放置することで酸化が起こり、発生した酸化熱によって火事になる場合があるのです。そのため工場などでは、ウエスは消防法で決められている方法で処分することになっています。

せっかく乾燥させても長時間の放置でシワができてしまっては残念ですよね。コインランドリーでは次に使う人の迷惑にならないようにするためにも、使用後はすぐ乾燥機から衣類を取り出すようにしましょう。

2-3.太陽光による収れん火災

2-3.太陽光による収れん火災

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虫眼鏡を使って太陽光を集め、紙を燃やす実験をしたことがありますか?太陽光が焦点を結んだ場所、つまり光が集中して集まる場所は急激に高温になり、突然発火に至ります。このように光が収束することで起こる火災を収れん火災です。

猫除けに水の入ったペットボトルを家の周りに置いている家がありますよね。窓際に金魚鉢や水槽を置いている人もいるでしょう。これらがレンズの代わりになって発火源となるのです。季節や時間帯によっても日光が当たる位置は異なります。リスクを減らすための置き場を考えたいですね。

2-4.落雷や熱波などによる天災

山火事の原因は焚火や火入れ、たばこのポイ捨てが多いものの、落雷も少なからず原因になっています。また、熱波や雨不足などによる乾燥しているところに枝や枯れ葉同士の摩擦で静電気が生じ、火災に発展するケースもありますね。天災は防ぐのが難しいものではありますが、事実こういった現象があるということは知っておくといいでしょう。

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2-5.自然発火する植物

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枝や枯れ葉同士の摩擦が原因での山火事というのは先述のとおりです。一見悪い偶然が重なったことによるものと思うかもしれませんが、植物の中にはあえて自然発火を起こしやすくするための進化を遂げたものもあります。

例えばユーカリはテルペン類という引火性物質を含んでおり、乾燥と暑さが重なることで自然発火する植物です。茎から揮発性の油を発し、35℃以上になると発火する性質を持つゴジアオイという植物もあります。ゴジアオイの種子は高温にも耐えることができるので、周辺の木々を焼き払うことで十分に日光を浴びて自らの生息圏を広げようとするのです。もちろん植物が自ら火を起こしたり、意思をもって行動することはありません。しかし生き残るため、独自の進化を遂げるのは動物も植物も同じだということがわかりますね。

身近にも危険が潜む自然発火

自然発火とは人為的・意図的に火をつけることなく、火元なしで燃え始める(発火)現象です。つまり、焚火のために火を起こすこと(人為的)やガスが漏れているところでライターをつけること(引火)とは異なります。例えば油の酸化による発火、光の収束による収れん火災発生、落雷による自然災害などが自然発火の代表です。自宅の火災の原因はガスやヒーターの消し忘れ、寝たばこなどが挙げられますが、自然発火による火災が起こらないとも限りません。少しでも知識として知っておけるといいですね。また、今回は面白い植物を1つ紹介しました。直接ゴジアオイが山火事を引き起こすわけではないにしても、いざ発生したときには熱から種子を守り、揮発性の油で延焼を広げることで自らが有利になるように進化した植物ということですね。変わった特性・習性を持つ動植物について調べるのは面白いものです。ぜひいろいろな分野に興味を持って、知識を深めていってくださいね。

 

画像引用:いらすとや

" /> オカルト話ではありません!「自然発火」を元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

オカルト話ではありません!「自然発火」を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「自然発火」について詳しく勉強していこう。

自然に発火するなんてオカルト的な話だと思うやつもいるでしょう。ですがこれはれっきとした化学現象なんです。

日常生活で起こりうる自然発火についても化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.自然発火とは

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自然発火とは字のごとく自然に(人為的・意図的に火をつけることなく)出火する現象をいいます。火をつけていないのに出火…?と不思議に思うでしょう。

よくあるオカルト話には、火元のない場所で焼死体が見つかり、なぜか周辺にあった家具などは燃えずに残っていたなんていうものがありますね。これは人体発火現象ともいわれ、実際にまだ原因が判明していない事件も多々あります。これには様々な仮説がとなえられていますが、今回解説する自然発火とはまた別のお話です。

さて、本題の自然発火とは、自然界(主に森や林)などで起こるものと家や工場などで起こるものがあります。あなたの生活でも起こりうる現象でもあるので、しっかり学んでいきましょう。

2.自然発火の事例を解説

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そもそも発火とは、火元なしで自ら燃え始めることをいいます。例えば、ガソリンに火を近づけたことによる火災は火元があるので発火ではなく引火です。一方で天ぷら油を加熱したまま放置してしまったことによる火災は、油と火元が接しているわけではなく油自らが燃え始めるので発火に当たります。(ちなみに料理手法の1つであるフランベは揮発したアルコールに火をつけて行うので引火です。)しかし、いわゆる天ぷら油火災はガスコンロやIHコンロをつけるという明らかに人為的な火元がそもそもの原因になっているので、今回の解説からは除外します。アイロンのつけっぱなしによる火災も同様です。

詳しくはこちらでも解説しています。

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