この記事では「粒粒辛苦(りゅうりゅうしんく)」という四字熟語について解説する。

端的に言えば「粒粒辛苦」の意味は「努力や我慢を重ねること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「粒粒辛苦」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「粒粒辛苦」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「粒粒辛苦」の意味や使い方を見ていきましょう。

「粒粒辛苦」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「粒粒辛苦」には、次のような意味があります。

米の一粒一粒が農民の苦労の結晶であること。転じて、こつこつと地道な努力を重ねること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「粒粒辛苦」

「粒粒辛苦(粒々辛苦とも)」の「粒粒」とは、一粒一粒という意味です。何の粒かといえば、それはお米を代表とする穀物の一粒一粒に他なりません。

一方、「辛苦」とはいったいどう意味なのでしょうか。こちらには、辛(つら)いことや苦しいことといった意味合いがあります。辛酸や苦心とは、非常に近い関係にある言葉です。

これらを合わせて考えると、お米の一粒一粒は農家の人々が苦労の末に苦労を重ねて育て上げたものであるという意味が見えてきます。これが後に転じてできたのが、現在の苦労や努力を重ねるという意味です。

「粒粒辛苦」の由来・出典は?

次に「粒粒辛苦」の由来や出典を確認しておきましょう。この四字熟語は、唐の時代の中国で活躍した李紳(りしん)という詩人が詠んだ「農を憫(あわれ)む」という詩がその出典です。

この詩の中で李紳は、農民の苦労を「粒粒皆辛苦なるを」と詠みあげています。これが由来となり、現在の「粒粒辛苦」という四字熟語が生まれました。

\次のページで「「粒粒辛苦」の使い方・例文」を解説!/

「粒粒辛苦」の使い方・例文

「粒粒辛苦」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。…

粒粒辛苦の末に、彼女は英語で通話することで海外の取引先と交渉ができるまでに成長した。

彼が豊富な知識や教養を備えているのも、粒粒辛苦たる努力が実を結んだ結晶だといえよう。

あなたが寝る間も惜しんで法律を学んできた様子は、まさに粒粒辛苦といえるものであった。

「粒粒辛苦」をきちんと理解するには、一つひとつ小さな努力や苦労を重ねてきたというニュアンスをくみ取ることが大切です。最初の例文では、英語がビジネスレベルで通用するようになるまでに、一つひとつハードルを越えてきた様子が目に浮かびます。

二つめの例文で描かれているのは、豊富な知識や教養が小さな努力の積み重ねで培われたものであるという事実です。最後の例文では、法学を修めるのにコツコツと努力や苦労を積み重ねてきた様子が描写されています。

このように、「粒粒辛苦」では単なる努力や苦労ではなく、一つひとつ細やかな労苦を積み重ねて努力してきたことを読み取らなければなりません。

#2 「粒粒辛苦」の類義語は?違いは?

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ところで、「粒粒辛苦」の類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、中でも代表的なものを二つほどご紹介します。

「苦心惨憺」

「苦心惨憺(くしんさんたん)」は、「粒粒辛苦」の類義語の中でも代表的なもののひとつです。前半部の「苦心」は割とよく見かけるものですが、後半部の「惨憺」とはいったいどのような意味なのでしょうか。

この言葉はさまざまな意味を持つ多義語ですが、ここでは「あれやこれや心を砕くさま」という意味で用いられています。つまり、この四字熟語全体で表しているのは、苦心を重ね心を砕いている様子だということが分かるはずです。

\次のページで「「千辛万苦」」を解説!/

「千辛万苦」

「千辛万苦(せんしんばんく)」もまた、「粒粒辛苦」の類義語だといえるものです。こちらは、「辛苦」という熟語をベースに、非常に多いことを表す「千」や「万」が付いて四字熟語を形成しています。

つまり、「辛苦」が非常に多いさまを表わしているというわけですね。では、ここでこれらの類義語を用いた例文をチェックしておきましょう。

苦心惨憺してようやく手に入れたレギュラーの座をそうやすやすと明け渡すわけにはいかない。

我々は、先人たちが千辛万苦の思いで培ってきたものを後生の人々にも伝えていかなければなるまい。

#3 「粒粒辛苦」の対義語は?

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さて、「粒粒辛苦」対義語はどのようにとらえればいいのでしょうか。苦労に苦労を重ねるの反対は、これといった障害もなく物事が順調に進んでいる様子を表す言葉ではないでしょうか。

「順風満帆」

「順風満帆(順風満帆)」は、「粒々辛苦」の対義語の中でも代表格といえるものです。この四字熟語は、思い通りに事が進んでいくことを表しています。

前半部の「順風」は追い風を表す言葉です。後半部の「満帆」は帆いっぱいに風を受けている様子を意味しています。

このように、「順風満帆」は物事がスムーズに進んでいる様子を航海にたとえて表現しているのが特徴です。

「無為不言」

「無為不言(ぶいふげん)」もまた、「粒粒辛苦」の対義語だといえるものです。こちらの四字熟語には、何もせず何も言わずとも物事がまくいくことを表しています。

ふだんは「無為」を「むい」と読んでしまうことが多いのですが、この四字熟語においては「ぶい」と読むことに注意しましょう。では、こちらも例文で使い方を確認しておきましょう。

君の班が立てた計画が順風満帆に進行しているからといって、けっして油断だけはしてくれるなよ。

社長はただ見守っているだけで仕事がうまくいっている様子は、まさに無為不言だといえるものだった。

\次のページで「「粒粒辛苦」の英訳は?」を解説!/

#4 「粒粒辛苦」の英訳は?

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最後に「粒粒辛苦」の英語訳についても見ておくことにしましょう。

「toil and moil」

「toil and moil」は、「粒粒辛苦」という四字熟語を忠実に英訳したものだといえます。前半の「toil」が表しているのは、骨を折って働くことです。

また、後半の「moil」には、コツコツと働くという意味合いがあります。この二つを合わせると、苦労しながらもコツコツと働くという「粒粒辛苦」と似たような意味が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

「work very hard」

「work very hard」もまた、「粒粒辛苦」の英語訳として十分に通用するものです。この表現は非常にシンプルなもので、非常に熱心に働くことを意味します。

「コツコツと」といった意味合いまでは表していませんが、これだけでも相手には言いたいことが伝わるはずです。

「粒粒辛苦」を使いこなそう

この記事では「粒粒辛苦」の意味・使い方・類語などを説明しました。この四字熟語の意味は、苦労や努力を重ねることでしたね。

かつて、数学の大家であるユークリッドは王に対し「学問に王道はなし」と言ったそうです。この言葉の裏にあるのは、地道な努力の積み重ねということなのでしょう。

まさに「粒粒辛苦」することによってのみ、修めることができるというわけですね。みなさんも、この四字熟語を使う機会に恵まれたら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「粒粒辛苦」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「粒粒辛苦(りゅうりゅうしんく)」という四字熟語について解説する。

端的に言えば「粒粒辛苦」の意味は「努力や我慢を重ねること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「粒粒辛苦」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「粒粒辛苦」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「粒粒辛苦」の意味や使い方を見ていきましょう。

「粒粒辛苦」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「粒粒辛苦」には、次のような意味があります。

米の一粒一粒が農民の苦労の結晶であること。転じて、こつこつと地道な努力を重ねること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「粒粒辛苦」

「粒粒辛苦(粒々辛苦とも)」の「粒粒」とは、一粒一粒という意味です。何の粒かといえば、それはお米を代表とする穀物の一粒一粒に他なりません。

一方、「辛苦」とはいったいどう意味なのでしょうか。こちらには、辛(つら)いことや苦しいことといった意味合いがあります。辛酸や苦心とは、非常に近い関係にある言葉です。

これらを合わせて考えると、お米の一粒一粒は農家の人々が苦労の末に苦労を重ねて育て上げたものであるという意味が見えてきます。これが後に転じてできたのが、現在の苦労や努力を重ねるという意味です。

「粒粒辛苦」の由来・出典は?

次に「粒粒辛苦」の由来や出典を確認しておきましょう。この四字熟語は、唐の時代の中国で活躍した李紳(りしん)という詩人が詠んだ「農を憫(あわれ)む」という詩がその出典です。

この詩の中で李紳は、農民の苦労を「粒粒皆辛苦なるを」と詠みあげています。これが由来となり、現在の「粒粒辛苦」という四字熟語が生まれました。

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