この記事では「櫛風沐雨」について解説する。

端的に言えば櫛風沐雨の意味は「世の中のさまざまな辛苦にさらされること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「櫛風沐雨」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「櫛風沐雨」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「櫛風沐雨」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「しっぷうもくう」です。意味や語源、使い方など幅広くチェックしていくと理解を深められますよ。

「櫛風沐雨」の意味は?

「櫛風沐雨」には、次のような意味があります。もととなる意味は漢字のイメージ通りですが、まずは現在の意味を正確にチェックしていきましょう。

1.外で雨風に当たりながら、あれこれ仕事で奔走すること。さまざまな苦労を重ねて働いていることのたとえ。

出典:四字熟語辞典(学研)

「櫛風沐雨」は「風に櫛(くしけず)り、雨に沐(かみあら)う」と訓読し、「櫛風」は風に髪が櫛(くしけず)られること、「沐雨」は雨で髪が洗われることを表しています。そのことから、外で雨風に当たりながら、仕事で奔走するなど苦労して働くことにつながっていますよ。

また、仕事に限定されることなく、世の中のさまざまな辛苦にさらされていることに例えられることもあります。ただし、辛苦にさらされながらも働くようすについての言葉なので、なんとか頑張って働いている人に対する表現です。

「櫛風沐雨」の語源は?

次に「櫛風沐雨」の語源を確認しておきましょう。

「櫛風沐雨」は、33篇ある『荘子(そうじ)』の最後「天下篇」に記載されています。『荘子』とは中国の老荘思想を代表する荘子によって書かれた文献です。

その中の墨子が禹王(うおう)について述べた文に「甚風(じんぷう)に沐(もく)し、疾雨(しつう)に櫛(くしけず)り、萬國を置く」とあります。意味は、激しい風に吹きさらされて、ひどい雨を頭から浴びながら、多くの都をつくった」です。このような状況下で多くの都を建設した禹王の話が「櫛風沐雨」の由来となっています。

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「櫛風沐雨」の使い方・例文

「櫛風沐雨」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。二通りの例文を見ながら特徴を見てみるといいですね。

1.櫛風沐雨の生活は身体には負担はあるが、日々努力を続けること自体に満足感はある。
2.台風や暴風雨などの災害が起こったときに救助する仕事は、文字通り櫛風沐雨と言える。

それぞれの例文では、「櫛風沐雨」の意味の通り「苦労を重ねて働いている」ようすとして使っています。大変な仕事をしているということから、よく頑張っているという評価でどちらかというとプラスのイメージでとらえられることが多くなっていますよ。

また、「櫛風沐雨の…」や「櫛風沐雨と…」など名詞のカタマリとして使用するのが一般的です。「櫛風沐雨する」という言い方はあまりしませんよ。

「櫛風沐雨」の類義語は?違いは?

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それでは、「櫛風沐雨」の類義語についての説明です。類義語はたくさんあるので、そのうち代表的なものをチェックしていきましょう。

「辛労辛苦」

「櫛風沐雨」の類義語には、「辛労辛苦(しんろうしんく)」があります。意味は、大変つらい目にあって心を痛めたり苦労することです。「労」は骨を折って働くこと、「苦」は耐えがたいような圧迫を感じることを表します。これに、辛いという意味を重ねて強調していますよ。辛い目に合うのは仕事上のことに限らず、あらゆることが対象です。

なお、一般的には「辛労辛苦の…」「辛労辛苦で…」などの使い方をすることが多くなっています。

\次のページで「「蛍窓雪案」」を解説!/

「蛍窓雪案」

もう一つの類義語には、「蛍窓雪案(けいそうせつあん)」があります。これは、苦労しながら勉学に励むことという意味です。「蛍窓」は蛍の光で窓が明るくなっていること、「雪案」は雪明かりで机の上が明るくなっていることを表しています。「案」は机のことです。

「櫛風沐雨」は仕事の苦労についての四字熟語でしたが、「蛍窓雪案」は苦労しながら勉強するという四字熟語になっています。仕事と勉強ではやや違いはありますが、近い意味の言葉と言えますね。

「櫛風沐雨」の対義語は?

次は、「櫛風沐雨」の対義語についての説明です。「櫛風沐雨」は苦労して仕事をするという意味合いでしたが、二通りの方向性についての対義語を紹介します。

「安居楽業」

「櫛風沐雨」の対義語には、「安居楽業(あんきょらくぎょう)」があります。意味のほうは、社会的地位や住まいなどの環境に不満がなく自分の仕事を楽しんでできる状況であることです。「居に安んじ、業を楽しむ」と訓読します。

「櫛風沐雨」は苦労して仕事をするということでしたから、安心できる環境で仕事を楽しめるという「安居楽業」は対義語になりますね。

「一竿風月」

対義語には、もう一つ「一竿風月(いっかんふうげつ)」があります。俗事を離れて自然に親しみ悠悠自適の生活を送ることという意味です。

「一竿」は一本の釣り竿のこと、「風月」は自然の風物を味わうことを表しており、釣り竿を手にして風流を楽しむという意味につながっています。苦労して仕事をする「櫛風沐雨」に対し、苦労もなく仕事もしなくてもよいという意味になっていますよ。

「櫛風沐雨」の英訳は?

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最後に、「櫛風沐雨」の英訳についての説明です。「櫛風沐雨」の意味合いに近い表現があるので、詳しく見ていきましょう。

「struggling through wind and rain」

「櫛風沐雨」の英訳には、「struggling through wind and rain」があります。直訳すると「風や雨の中でもがくこと」です。「struggle」という単語は「努力する、もがく」という意味の動詞なので、「櫛風沐雨」の苦難の中で取り組むイメージを含んでいます。

ほかには、「life of hardships」として「辛苦の人生」という表現もありますよ。「life」は「生活、命、人生」と幅広い意味があるので、基本単語ではありますが侮れません。

\次のページで「「櫛風沐雨」を使いこなそう」を解説!/

「櫛風沐雨」を使いこなそう

今回の記事では「櫛風沐雨」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「櫛風沐雨」は苦労して仕事をすることでしたが、その苦労や努力を認めてプラスのイメージで使われることが多くなっています。もとの意味も、禹王が苦労の末に都を次々に造ったということなので、プラスのイメージです。これらを考慮して使い分けるといいですね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「櫛風沐雨」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「櫛風沐雨」について解説する。

端的に言えば櫛風沐雨の意味は「世の中のさまざまな辛苦にさらされること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「櫛風沐雨」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「櫛風沐雨」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「櫛風沐雨」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「しっぷうもくう」です。意味や語源、使い方など幅広くチェックしていくと理解を深められますよ。

「櫛風沐雨」の意味は?

「櫛風沐雨」には、次のような意味があります。もととなる意味は漢字のイメージ通りですが、まずは現在の意味を正確にチェックしていきましょう。

1.外で雨風に当たりながら、あれこれ仕事で奔走すること。さまざまな苦労を重ねて働いていることのたとえ。

出典:四字熟語辞典(学研)

「櫛風沐雨」は「風に櫛(くしけず)り、雨に沐(かみあら)う」と訓読し、「櫛風」は風に髪が櫛(くしけず)られること、「沐雨」は雨で髪が洗われることを表しています。そのことから、外で雨風に当たりながら、仕事で奔走するなど苦労して働くことにつながっていますよ。

また、仕事に限定されることなく、世の中のさまざまな辛苦にさらされていることに例えられることもあります。ただし、辛苦にさらされながらも働くようすについての言葉なので、なんとか頑張って働いている人に対する表現です。

「櫛風沐雨」の語源は?

次に「櫛風沐雨」の語源を確認しておきましょう。

「櫛風沐雨」は、33篇ある『荘子(そうじ)』の最後「天下篇」に記載されています。『荘子』とは中国の老荘思想を代表する荘子によって書かれた文献です。

その中の墨子が禹王(うおう)について述べた文に「甚風(じんぷう)に沐(もく)し、疾雨(しつう)に櫛(くしけず)り、萬國を置く」とあります。意味は、激しい風に吹きさらされて、ひどい雨を頭から浴びながら、多くの都をつくった」です。このような状況下で多くの都を建設した禹王の話が「櫛風沐雨」の由来となっています。

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