この記事では「十字砲火」について解説する。

端的に言えば十字砲火の意味は「交差するように飛び交う砲火」のことですが、深く知ることで、十字砲火が登場する映画や小説などの作品をより理解することができるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「十字砲火」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「十字砲火」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 46695939

十字砲火は「じゅうじほうか」と読みます。それでは、早速「十字砲火」の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「十字砲火」の意味は?

十字砲火には、次のような意味があります。

左右から交差するように飛び交う砲火。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「十字砲火」

機関銃などの自動火器が開発された第一次世界大戦以降に考案された戦術の一つです。かなり限定的な場面を指しているので、あまり一般生活で使用する機会のある言葉ではありません。歴史小説や資料などで見かける機会の多い言葉です。どちらかといえば軍事用語に属す言葉でしょう。また、十字砲火は連続して銃弾や砲弾を発射する兵器ができたあとの言葉なので、たとえば火縄銃での戦闘で十字砲火という言葉が使われることはありません。

「十字砲火」の使い方・例文

それでは、「十字砲火」の例文を見てみましょう。

\次のページで「軍事用語として使われる「十字砲火」以外の四字熟語は?」を解説!/

・敵の歩哨に見つかった部隊は、猛烈な十字砲火を浴びせられた。

・大通りで敵に十字砲火を浴びせるため、通りの左右に機関銃陣地を配置した。

十字砲火を用いる場面が、機関銃などの自動火器を使用する場面に限定されるため、戦争を題材にした歴史小説や資料以外の文脈で見かけることはほとんどありません。

軍事用語として使われる「十字砲火」以外の四字熟語は?

image by PIXTA / 5794895

十字砲火以外にも、軍事用語や戦争の場面で使われる四字熟語はたくさんあります。中には、歴史小説などで見かける機会の多い言葉もあるので、いくつか覚えておくといいでしょう。

「艦砲射撃」

艦砲射撃は「かんぽうしゃげき」と読みます。戦艦などに搭載した機関砲や主砲による砲撃のことです。戦艦から戦艦に向けて艦砲射撃が行われることはもちろん、戦闘機に向けて行われることや、洋上から地上目標に向かって行われることもありました。ミサイルが主流となった現在ではあまり行われませんが、第二次世界大戦までは、地上の敵を海に浮かぶ戦艦から攻撃することも珍しくなかったのです。なお、艦砲射撃はあくまで機関砲や主砲での攻撃を指し、ミサイル攻撃を艦砲射撃と呼ぶことはありません。

「絨毯爆撃」

絨毯爆撃は「じゅうたんばくげき」と読みます。絨毯とは、部屋などに敷く敷物の絨毯と同じ意味です。絨毯爆撃とは、ある特定の地域を、絨毯を敷き詰めるようにくまなく爆撃することをいいます。航空機に大量の爆弾を搭載し、敵国の領土に直接落とすようになったことで、可能になった戦術です。太平洋戦争で日本がアメリカから受けた東京大空襲も、絨毯爆撃の一種といえるでしょう。都市や軍需工場の機能を奪って国力を削ぐための戦術ですが、戦争に関係のない一般市民に多数の犠牲が出ることから、現在ではたとえ戦争であっても行われません

\次のページで「「機銃掃射」」を解説!/

「機銃掃射」

機銃掃射は「きじゅうそうしゃ」と読みます。これは、機関銃などを用いて敵をなぎ払うように射撃することです。「掃射」が、なぎ払うような射撃を意味します。個別の標的をピンポイントに狙うのではなく、複数いる敵をまんべんなく射撃するイメージですね。これも十字砲火と同じく、機関銃のような自動火器が発明されてから生み出された戦術のひとつです。

「十字砲火」はどんなときに使われる?

image by PIXTA / 28351438

十字砲火が、機関銃などの自動火器による射撃の一種であることは先に紹介しました。しかし、歴史小説や資料を読んでいて突然「十字砲火を浴びせられた」と書かれていても、ぱっと状況が思い浮かびません。そこで、十字砲火がどんなときに使われる射撃方法なのか考えてみたいと思います。

「十字砲火」はなぜ行う?

多くの場合、十字砲火が行われるのは地上にいる敵を地上から狙う場合か、航空機を地上から狙う場合です。どちらも、ある地点を敵が通過するのを阻止するために行われます。

たとえば、敵に渡られては困る橋があった場合の防衛を考えて見ましょう。その橋の味方陣地側から、橋の両端から対角線上に向かって射撃できるよう、2基の機関銃を設置します。そうすることで、敵は橋を渡ろうとすると十字砲火にさらされることになり、容易に橋を突破できなくなるのです

また、敵の航空機を地上から撃墜しようとした場合、標的が早すぎて一機ずつ狙うのは至難の技です。そこで、敵の航空機が通過する地帯で、十字砲火を行う場所をいくつも設置することで、その地帯そのものを通過しにくくすることができます

このように、十字砲火は敵を確実に仕留めるために行われるよりも、敵部隊の進行を阻むために行われる戦術なのです。

「十字砲火」を行うのはどんなとき?

先に説明したとおり、十字砲火は敵の進行を阻止することが主な目的です。そのためには、敵が通過する場所があらかじめわかっていなければいけません。または、敵に通られては困る場所で十字砲火を行う準備をすることになります。どちらの場合も、十字砲火は「待ち伏せ」として行われることがポイントです。そのため、味方陣地の防衛や敵の進行ルート妨害のために行われることが多く、突撃や侵攻、潜入などの場面で十字砲火を行うことはあまりありません。十字砲火を行う場合、射線がちゃんと十字になるよう、機関銃の位置を計算して設置し、しばらく撃ちっ放しにしても大丈夫なように銃弾も多く補給しておくのが鉄則です。地上の敵を想定した十字砲火の場合、敵の掃射にあわないよう、十字砲火に用いる機関銃の高さを左右で変えることもあります。

現在では、戦闘機や爆撃機は超音速で上空を飛行することが多く、地上から発射した機関砲は届きません。戦闘機や爆撃機が地表近くを飛行した場合や、相手がヘリコプターだった場合も、小型のロケット砲や誘導ミサイルがあるため、対空機関砲で敵の航空機を狙って十字砲火を行うことは少なくなりました

「十字砲火」の欠点

味方陣地の防衛や敵の進行ルート妨害のために行われる十字砲火ですが、いくつかの欠点があります。

まず、十字砲火を行っている射手の位置が敵から分かりやすいということです。十字砲火に用いる機関銃は重いものが多い上に、十字砲火を行うという作戦のためにその場所に設置されているので、簡単には移動できません。一方、敵からすれば、撃たれた方向を確認すれば、十字砲火を行っている射手の位置はすぐにわかってしまいます。遠距離から狙撃されたり、死角に回りこまれないよう、注意が必要です。

また、当然ながら十字砲火を行うための機関銃などがなければ、十字砲火は行えません。威力と速射性に優れた火器を使わないと十字砲火は効果が薄いので、小銃しか持ち合わせがない少人数の部隊では、十字砲火を行うのは難しいでしょう。

さらに、十字砲火はある程度、機関銃などを撃ちっ放しにする戦術です。弾薬に余裕がないときに行うと、あっという間に弾切れになってしまいます。

十字砲火は適切な場面で行うととても効果的な戦術ですが、このような欠点をはらんだ戦術でもあるため、判断を誤ればおおきな犠牲が出る一面がありました。小説などで十字砲火という言葉が出てきた際には、このあたりのことも知ったうえで読むと、内容をさらに深めることができるかもしれません。

\次のページで「「十字砲火」を使いこなそう」を解説!/

「十字砲火」を使いこなそう

この記事では、「十字砲火」の意味や使い方、例文について説明しました。十字砲火という言葉そのものは、あくまでも機関銃の使い方のひとつです。そのため、普段の生活の中で十字砲火と口にしたり、目にする機会はほとんどないでしょう。ただ、歴史小説や資料で見た際、この記事で紹介した背景などを知った上で読めば、どんな情景なのか、どういった事情があるのか、深く想像しながら読むことができます。十字砲火に関する軍事的な知見は、日常生活ではほとんど必要のないものですが、知っておけば役立つこともあるのです。

" /> 【四字熟語】「十字砲火」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【四字熟語】「十字砲火」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「十字砲火」について解説する。

端的に言えば十字砲火の意味は「交差するように飛び交う砲火」のことですが、深く知ることで、十字砲火が登場する映画や小説などの作品をより理解することができるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「十字砲火」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「十字砲火」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 46695939

十字砲火は「じゅうじほうか」と読みます。それでは、早速「十字砲火」の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「十字砲火」の意味は?

十字砲火には、次のような意味があります。

左右から交差するように飛び交う砲火。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「十字砲火」

機関銃などの自動火器が開発された第一次世界大戦以降に考案された戦術の一つです。かなり限定的な場面を指しているので、あまり一般生活で使用する機会のある言葉ではありません。歴史小説や資料などで見かける機会の多い言葉です。どちらかといえば軍事用語に属す言葉でしょう。また、十字砲火は連続して銃弾や砲弾を発射する兵器ができたあとの言葉なので、たとえば火縄銃での戦闘で十字砲火という言葉が使われることはありません。

「十字砲火」の使い方・例文

それでは、「十字砲火」の例文を見てみましょう。

\次のページで「軍事用語として使われる「十字砲火」以外の四字熟語は?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: