この記事では「弱肉強食」について解説する。

端的に言えば弱肉強食の意味は「弱者が強者の餌食になること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「弱肉強食」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「弱肉強食」の意味や語源・使い方まとめ

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弱肉強食は「じゃくにくきょうしょく」と読みます。それでは、早速「弱肉強食」の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「弱肉強食」の意味は?

弱肉強食には次のような意味があります。

弱者が強者のえじきとなること。強者が弱者を思うままに滅して栄えること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「弱肉強食」

弱いものの肉は、強いものの食物となる、というところから、より強い肉食動物が優位に立つ自然界の摂理を表し、さらには人間社会の上下関係などを表現する際にも使われるようになった言葉です。

「弱肉強食」の語源は?

弱肉強食はもともと、唐の時代の中国で生まれた言葉です。

文学者である韓愈が、仏僧の文鴨に送った詩の一節に「弱之肉強之食」とあります。訳すと「弱いものの肉は強いものの食となる」という意味で、これが現在の弱肉強食の語源となっているのです。

ただし、韓愈のこの表現には前後関係があります。韓愈の詩には、「そもそも鳥はうつむいて餌をついばむが顔を上げると四方を見まわす。そもそも獣は深い山奥に住んで出てくる時を選ぶ。他のものが自分に害を為すのではないかと恐れるためだが、それでも免れることはできず、弱いものの肉は強いものの食物である。今わたしと文暢はやすらかに暮らしゆっくりと食事をし、余裕を持ってのんびりと生きて死ぬ。獣や鳥などとは違い、やすらかに暮らせる、その拠ってくるところを知らないでよいだろうか。」と書かれています。「野生の動物は自分がより強いものに襲われるのではないかとおびえて暮らすが、人間である自分たちにはそういった心配はない。その理由を知らないでいていいのだろうか」と、人としての在り方を問う内容なのです。

弱肉強食という部分だけをピックアップし、自然界の摂理や人間関係にまで拡大して表現するようになったのは、韓愈の詩が書かれてからずっと後の話ですが、間違った使い方というわけではありません。

「弱肉強食」の使い方・例文

それでは、「弱肉強食」の例文を見てみましょう。

\次のページで「「弱肉強食」の類義語は?違いは?」を解説!/

1、どんなに小さな生き物も、弱肉強食という厳しい自然の掟にさらされている。

2、性格のいい人でも、弱肉強食の社会で生きていけるとは限らない。

1の例文は自然界の様子の表現として、2の例文は人間社会の様子の表現として使っていますね。両方に共通する特徴として、ネガティブな場面で使われているのがわかると思います。弱者が強者の犠牲になる様子を表現する言葉なので、ポジティブな場面で使われることはあまりありません。

「弱肉強食」の類義語は?違いは?

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弱肉強食は、弱者と強者の厳しい関係を示した言葉です。同じような意味の類義語を確認していきましょう。

「優勝劣敗」

優勝劣敗は「ゆうしょうれっぱい」と読みます。読んで字のごとく、優れたものが勝利し、劣ったものが敗北するという意味です。弱肉強食と良く似た意味の言葉ですが、より勝負に特化した言葉であるといえるでしょう。

・プロのスポーツ選手は、優勝劣敗の厳しい世界で生きている。

・両者に勝ってもらいたいが、優勝劣敗の非常な現実がある。

「適者生存」

適者生存は「てきしゃせいぞん」と読み、適者生存の原則ともいいます。四字熟語というより、専門用語に近い言葉です。社会進化論者であるハーバート・スペンサーが提唱した言葉で、生息する環境に最も適応した種が生き残るという意味があります。あくまでも環境に適応したかどうかで生存の可否が決まるのであって、捕食者か被捕食者かは関係ない、という趣旨です。弱肉強食と良く似た言葉ですが、弱肉強食でいう「弱者」「強者」が環境への適応度合いで規定される点がポイントになります。また、弱肉強食は強者が弱者を虐げる様子を連想しますが、適者生存はあくまでも生き残るのであって、相手を退けるとは限りません。

\次のページで「「弱肉強食」の対義語は?」を解説!/

・同期で何人も入社したが、結局3年続いたのは彼だけだった。まさに適者生存だ。

・カンブリア大爆発では様々な生物が誕生したが、適者生存の原則で次々に淘汰され、消えていった。

「弱肉強食」の対義語は?

それでは、弱肉強食の対義語にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。

「共存共栄」

共存共栄は「きょうぞんきょうえい」と読みます。互いに共に生き、共に栄えるという意味です。大手企業の創業者である松下幸之助氏が大切にした考え方としても知られています。

・商店街の皆で共存共栄し、この地域を活性化していきたい。

・ライバル会社との競合ではなく、共存共栄の道を探る。

・共産主義と資本主義の共存共栄などできるはずがない。

自然界は本当に「弱肉強食」?

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弱肉強食という言葉は、自然界の厳しさを示すのにもよく使われる言葉です。もちろん、基本的に小型の生き物が自分より大型の肉食動物に見つかれば食べられてしまいますし、体が大きく健康な個体は小さく弱い個体よりも生き残る確率が上がります。しかし、自然界が完全に弱肉強食の世界なのかというと、そうとも限りません。実際にはもっと複雑な関係が組み合わさって構築されています。ここでは、弱肉強食に当てはまらない特殊な関係性である「共生」についてみていきましょう。

「共生」とは?

生物学用語でいうところの「共生」とは、ある複数種の生き物同士が何かの相互関係を保って生活していることです。たとえば、映画で有名になった魚のクマノミは、イソギンチャクの近くで小さな群れを作って暮らしています。このクマノミとイソギンチャクの関係が、共生です。共生には大きく分けて3種類あります。

\次のページで「「相利共生」」を解説!/

「相利共生」

相利共生は「そうりきょうせい」と読みます。これは、共生関係にある生き物のすべてが互いに利益を得ている状態です。一般的に共生というと、このイメージが強いとのではないでしょうか。たとえば、ハキリアリというアリは自分の巣でキノコを育て、食べています。このキノコはハキリアリが運んでくる刻んだ葉がないと生育できず、ハキリアリはこのキノコを食べないと生きていけないのです。互いに利益があるので、ハキリアリとキノコは相利共生にあるといえます。

「偏利共生」

偏利共生は「へんりきょうせい」と読みます。これは、共生関係にある生き物のうち片方だけが利益を得ている状態です。実は、先に紹介したクマノミとイソギンチャクの関係は偏利共生になります。イソギンチャクは触手の先端に毒針を持っていますが、クマノミは刺されません。そのため、クマノミはイソギンチャクの中に隠れることで、自分の身を守ることができます。ところが、イソギンチャクはクマノミがいても何のメリットもないのです。特に不利益もないので、この場合は偏利共生となります。

「寄生」

寄生は「きせい」と読みます。これは、共生関係にある生き物のうち片方に利益があり、片方に不利益がある状態です。共生とはちょっと意味が違うような気がしますが、生物学の世界ではこれも共生の一種となります。たとえば、漢方薬としても有名な冬虫夏草は、虫に寄生するキノコの一種です。地中で生活するセミの幼虫などに取り付き、その幼虫を養分にしてキノコを形成します。取り付かれた幼虫はキノコに栄養を取られ、最終的には死亡しまうのです。キノコだけに利益があり、幼虫にとっては不利益となるので、この関係は寄生といえます。

「弱肉強食」と「共生」

弱肉強食は、あくまでも強者が弱者を食べる(または優位に立つ)ことをいいます。ところが、共生関係にある生き物は必ずしも弱肉強食にあるとは限りません。共生の例として挙げたハキリアリとキノコ、クマノミとイソギンチャク、セミの幼虫と冬虫夏草は、共生以外の関係では互いに衝突することがありません。野生の世界が弱肉強食だとは限らないのです。

「弱肉強食」を使いこなそう

この記事では、「弱肉強食」の意味や使い方、例文について説明しました。相手との関係において厳しく非情である様子を、分かりやすく伝えることができる言葉です。野生生物の表現で使われることが多い言葉ですが、人間関係においても使うことができます。

また、野生生物の関係が必ずしも弱肉強食とは限らないことについても解説しました。大型の肉食動物が圧倒的に強いイメージがある野生の世界ですが、私達が思う以上に複雑な関係で成り立っているのです。弱肉強食という言葉の意味や使い方だけでなく、生物学など別分野へ深掘りすることで、自分の知見をより深めることができますね。

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【四字熟語】「弱肉強食」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「弱肉強食」について解説する。

端的に言えば弱肉強食の意味は「弱者が強者の餌食になること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「弱肉強食」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「弱肉強食」の意味や語源・使い方まとめ

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弱肉強食は「じゃくにくきょうしょく」と読みます。それでは、早速「弱肉強食」の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「弱肉強食」の意味は?

弱肉強食には次のような意味があります。

弱者が強者のえじきとなること。強者が弱者を思うままに滅して栄えること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「弱肉強食」

弱いものの肉は、強いものの食物となる、というところから、より強い肉食動物が優位に立つ自然界の摂理を表し、さらには人間社会の上下関係などを表現する際にも使われるようになった言葉です。

「弱肉強食」の語源は?

弱肉強食はもともと、唐の時代の中国で生まれた言葉です。

文学者である韓愈が、仏僧の文鴨に送った詩の一節に「弱之肉強之食」とあります。訳すと「弱いものの肉は強いものの食となる」という意味で、これが現在の弱肉強食の語源となっているのです。

ただし、韓愈のこの表現には前後関係があります。韓愈の詩には、「そもそも鳥はうつむいて餌をついばむが顔を上げると四方を見まわす。そもそも獣は深い山奥に住んで出てくる時を選ぶ。他のものが自分に害を為すのではないかと恐れるためだが、それでも免れることはできず、弱いものの肉は強いものの食物である。今わたしと文暢はやすらかに暮らしゆっくりと食事をし、余裕を持ってのんびりと生きて死ぬ。獣や鳥などとは違い、やすらかに暮らせる、その拠ってくるところを知らないでよいだろうか。」と書かれています。「野生の動物は自分がより強いものに襲われるのではないかとおびえて暮らすが、人間である自分たちにはそういった心配はない。その理由を知らないでいていいのだろうか」と、人としての在り方を問う内容なのです。

弱肉強食という部分だけをピックアップし、自然界の摂理や人間関係にまで拡大して表現するようになったのは、韓愈の詩が書かれてからずっと後の話ですが、間違った使い方というわけではありません。

「弱肉強食」の使い方・例文

それでは、「弱肉強食」の例文を見てみましょう。

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