熱力学物理理科

熱力学の基本としての温度と「熱力学第零法則」を理系ライターが丁寧にわかりやすく解説

温度目盛りについて

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温度を数値で表すには、温度に伴って変化する物質の性質を用います。物質の様態の変化、たとえば氷の融解や水の沸騰などはきまった温度で起こるので、これらの変化の起こる時ときの温度をきまった数値で表すことすればよいはずです。また、液体・気体の体積や固定の電気抵抗なども温度が変わるとその値が連続的に変わり、それぞれの温度に対して違う値となるから、これらの量を用いて温度の値を目盛ることができます。

日常に用いられる℃(セルシウス温度)は、1気圧のもとで、水と氷とが共存して熱平衡になる温度を0℃、水と水蒸気とが熱平衡になる温度を100℃とし、その間を100等分して1℃の温度差を定めたものです。しかし、100℃と0℃の間を100等分するといっても、温度計に用いる物質や物理量が違えば温度による変わり方が違ってきますので、温度計として何を使うかによって目盛りが違ってしまうことになります。

そこで、何か標準の温度計を決めておき、他の温度計はこの標準温度の目盛りに合わせることにすればよいでしょう。このように決めた温度の目盛りは、便宜的温度目盛りあるいは経験的温度目盛りとよばれます。

理想気体温度計について

理想気体温度計について

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一定量の気体では、温度が一定の場合は、その圧力pとその体積Vとの間にほとんど反比例の関係があること(ボイルの法則)が知られています。反比例の関係がどれくらい正確成り立つかは気体の種類によって違うのですが、一般に気体の密度が小さいほど正確です。そこで気体の密度を小さくした極限を考えるとpVが決まった温度になりますので、この値で温度を目盛ることにしてみましょう。

0℃と100℃それぞれのpVの値を考えると、pVの値と温度の数値t℃との間は上記1の式になります。これを変形したのが2の式です。実験値を用いるとtの係数は3になります。つまり、この温度目盛りでは、圧力を一定にすると温度が1℃上がるごとに0℃のときの体積の1/273.5ず増加することが分かるでしょう。よって4の式がでてきます。

この式をグラフにすると上記のようになり、t=-273.15でpVが0です。そこで、温度の原点をここに移すというのが自然な発想でしょう。この温度目盛りで表した温度(絶対温度)は℃のかわりにK(ケルビン温度)とします。Kと℃の関係は5の式です。ただし、理想気体とは厳密には純理論的な存在であることを注意しておきましょう。

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セルシウス温度は水の凝結と沸騰、ケルビン温度は理想気体の性質によって定義されている。日常生活や基本的な熱力学ではこれらの温度の定義で大抵問題はない。

温度の定義

最後に紹介した理想気体温度計の温度目盛りは、特定の物質の性質に頼らないでどのような物質に対しても成り立つ一般的な関係を使った熱力学的温度目盛りと一致します。今回は紹介しきれませんでしたが、熱力学的温度目盛りは可逆熱機関を考えることによって定義されたものです。

熱力学ではこのケルビン温度で問題ありませんが、熱現象をより精密に取り扱う統計力学においてはこの定義では不十分になります。そこでは分子の運動エネルギーや、エントロピーといった状態量による定義などとの対応が議論されるでしょう。その関係で、2019年よりケルビン温度の定義にはボルツマン定数が用いられるようになりました。

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