今回のテーマは音と振動です。

音がなぜ聞こえるのか、それが振動によるものであることはみんな知っているでしょう。では音に高低、大きい小さいがあるのは振動がどう違うからかは説明できるか?音は見えないからイメージしづらいが、ある機械を使えば波の形を表すことができる。それを見れば音の高さ低さ、大きさ小ささがわかるんです。

今回は音と振動の関係を科学館職員、たかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

声が低く通りづらいのが悩みの科学館で働くリケジョ。さまざまな不思議な現象を解き明かす科学が大好きで、学生時代は化学部と国立大学の化学系で化学漬けの日々を送っていた。新エネルギー開発に関する研究をしていて、学会でも発表した。

音はなぜ聞こえるの?振動の役割は?

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家や学校でせわしなく聞こえる人の話し声、冷却ファンから聞こえる風切り音、外でひっきりなしに聞こえる自動車や航空機のエンジン音、機械のモーター音、そして音楽など音は世界中にあふれていますね。そもそもなぜ音は伝わるのでしょうか?まず音の正体と振動の役割から説明していきます。

人がしゃべるとき、喉が震えますね。人は喉の中に声帯があり、声帯が揺れる(振動する)ことで声を出すことができます。また太鼓を叩いた時に皮を見ると震えているのを観察することができることからも、音が振動で伝わっていることがわかりますね。この振動によって発生した波を音波といいます。

発生した音波は空気(気体)・水(液体)・金属(固体)などの媒体を振動させて伝播し、それを私たちは聞いています。音波は進行方向に向かって振動する波です。このように「進行方向に向かって振動する波」を縦波と呼びます。縦波といえば地震の時に最初に来る初期微動(P波)を思い浮かべる人が多いでしょう。他にバネの振動が縦波となります。

波についてはこちらの記事を確認してみてくださいね。

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音の特徴はどこできまる?

音の特徴はどこできまる?

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耳で聞き取る音、高いと低いでどのように振動の様子が違うかがわかりづらいですね。そこで役立つのがオシロスコープです。オシロスコープを使えば音を波形に表すことができます。

音の大小

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太鼓を弱くたたいたら小さな音、強くたたいたら大きな音が出ますね。オシロスコープで大きい音と小さい音を比べると、揺れ幅(振幅)が違うことがわかります。大きい音は振幅が大きく小さい音では振幅が小さくなるのです。

高い音と低い音

高い音と低い音

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幼稚園児の男の子が話す声と大人の男性が話す声、高さが異なりますね。男の子は10歳前後で声変りをし、声が低くなります。声や音の高さは何で決まるのでしょうか?

音の高さを決めるのは振動数です。振動が早く、多く震えるほど音は高くなります。逆に振動が遅く振える回数が少ないほど音は低くなるのです。

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そのため鉄琴木琴グランドピアノは右側の短い方で高い音、左側の長い方で低い音が出ます。アップライトピアノは弦を縦に、グランドピアノは弦を横に張っているのです。特徴的なグランドピアノの形状には、科学的な理由があったのですね。

音と周波数

1秒間の振動数を周波数(単位:Hz)といいます。周波数が小さいと振動数が少なく低い音、大きいと振動数が多く高い音となるのです。人間の耳に聞こえるのはその周波数が20~20kHzの音になります。ちなみに人の声の音域(音の高さ、声域)は男性で平均120~200Hz、平均200~300Hz、生まれたての赤ちゃんで440Hzくらいです。聞き取れる音の範囲から見ると結構低いですね。しかし、高齢になると高い音から聞き取りづらくなっていきます

なぜ高音から聞き取りづらくなるのでしょうか?それは「低音より高音を聞き取る細胞の方が負担が大きいから」です。耳にある有毛細胞のうち入り口付近にある細胞が高音奥にある細胞が低音を感知しています。そのためすべての音が流れ込んでくる入口に近い細胞(=高音を感知する細胞)の方が負担が大きく、劣化しやすいのです。人の耳が聞き取ることができる音の範囲は年齢で異なり個人差はありますが、17kHzくらいの高周波数のものは20代前半くらいまでしか聞き取ることができません。この音をモスキート音といいます。

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超音波の正体

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人が聞くことができない大きな(高い)周波数の音を超音波といいます。周波数でいうと20kHz以上です。超音波というと超音波洗浄機やイルカやコウモリが発生しているもの、というイメージがありますね。コウモリは自分の出した超音波によって獲物との距離を計算しています。また、イルカはコミュニケーションに超音波を使っているのです。また医療現場では超音波を対象物に充ててその反響で検査する超音波検査が行われています。

音の速さ

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音はどのくらいの速さで伝わるんでしょうか?音の速さは約340m/sです。日本で最も早い新幹線は320㎞/h、秒速に換算すると320㎞/3600sで88.8m/sと圧倒的に音の方が早いですね。では光と比べるとどうでしょうか?

光の速さは30万km/sと圧倒的に光の方が早く進みます。花火や雷を見ていると先に光が見え、その後音が聞こえてきますね。これは光の方がスピードがずっと速く、音が耳に届くよりも先に花火が光ったり雷が落ちているからです。

音のない世界

世界は音であふれている、と最初に言いましたが逆に音がないのではどんな世界なのでしょうか?音は媒体を通って届きます。そのため、真空では音を聞くことができません。例えば真空を作る機械を用意して、音を鳴らしながら徐々に空気を抜いていくと音が聞こえなくなっていきます。

では音を外に漏らさないようにするにはどうすればいいのでしょうか?そんなときに使われるのが防音材である吸音材遮音材です。吸音材は音を摩擦によって熱エネルギーに変換し音の振動を弱めます。音楽室の壁によく使われている穴の開いた壁がそうですね。一方遮音材は音を跳ね返すことで外へ出ないようにします。

また、周囲の音を消せるのがノイズキャンセリングです。現在では様々なノイズキャンセリングイヤホンが売られているので知っている人も多いでしょう。ノイズキャンセリングは雑音と逆位相(振幅が逆のもの)の音を流すことで雑音を消すことができます。

波と振動

音は振動によって伝わります。そのため、振動させることのできる媒体が必要です。子供のころに糸電話で遊んだことを思い出せばイメージしやすいでしょう。音はオシロスコープによって形にすることができます。大きい音では波が大きく、高い音になると振動が増えていくのです。波の形と音の特徴の関係を覚えてくださいね。

人が聞くことのできる音の範囲(周波数)は決まっています。年を重ねるほど高音から聞こえづらくなり、聞こえる音の周波数は徐々に狭くなっていくのです。一度狭くなった聞こえる音の範囲は戻らないので、耳は大切にしてくださいね。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

音はなぜ聞こえるの?音と振動の関係を科学館職員がわかりやすく解説

今回のテーマは音と振動です。

音がなぜ聞こえるのか、それが振動によるものであることはみんな知っているでしょう。では音に高低、大きい小さいがあるのは振動がどう違うからかは説明できるか?音は見えないからイメージしづらいが、ある機械を使えば波の形を表すことができる。それを見れば音の高さ低さ、大きさ小ささがわかるんです。

今回は音と振動の関係を科学館職員、たかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

声が低く通りづらいのが悩みの科学館で働くリケジョ。さまざまな不思議な現象を解き明かす科学が大好きで、学生時代は化学部と国立大学の化学系で化学漬けの日々を送っていた。新エネルギー開発に関する研究をしていて、学会でも発表した。

音はなぜ聞こえるの?振動の役割は?

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家や学校でせわしなく聞こえる人の話し声、冷却ファンから聞こえる風切り音、外でひっきりなしに聞こえる自動車や航空機のエンジン音、機械のモーター音、そして音楽など音は世界中にあふれていますね。そもそもなぜ音は伝わるのでしょうか?まず音の正体と振動の役割から説明していきます。

人がしゃべるとき、喉が震えますね。人は喉の中に声帯があり、声帯が揺れる(振動する)ことで声を出すことができます。また太鼓を叩いた時に皮を見ると震えているのを観察することができることからも、音が振動で伝わっていることがわかりますね。この振動によって発生した波を音波といいます。

発生した音波は空気(気体)・水(液体)・金属(固体)などの媒体を振動させて伝播し、それを私たちは聞いています。音波は進行方向に向かって振動する波です。このように「進行方向に向かって振動する波」を縦波と呼びます。縦波といえば地震の時に最初に来る初期微動(P波)を思い浮かべる人が多いでしょう。他にバネの振動が縦波となります。

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