この記事では「門戸を開く」について解説する。

端的に言えば「門戸を開く」の意味は「人や物を受け入れること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗を呼んです。一緒に「門戸を開く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「門戸を開く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「門戸を開く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「門戸を開く」の意味は?

「門戸を開く」には、次のような意味があります。

禁止や制限をしないで、交流・通商・出入りなどを自由にする。

出典:三省堂 大辞林 第三版

「門戸」(もんこ)というのは、「門」と「戸」で、家などの入り口を指します。門や戸は開閉できるものですが、それを「開く」というのですから、人や物が入ってこられるような状態にしておくことになりますね。

門や戸を「閉じて」いるときには人や物が入ってくることはありません。これは入ってくることを「制限している」状態であるのに対して、「開いた」状態では制限を解除していることになるので、「門戸を開く」というのは、出入りを「自由に」する、ということになります。

「門戸を開く」の由来は?

次に「門戸を開く」の由来を確認しておきましょう。

」は、もともとは家などの入り口としての門という物体ですが、出入り口ですから、人や物の通る場所という意味ももつものです。

また家そのものを指す場合もあり、これは、「誰々先生の一門」というのが「誰々先生は一家をなしている」というのと同じ意味であるように、学問や技芸での一派、流派を意味することもあります

」は、日本語の「戸(と)」は、何かに面したところ、何かと何かを区切るもの、という意味をもちますが、門戸という熟語は、漢語に特徴的な、「同じ意味の言葉を連ねて意味を強調する」というものです。つまり、「門」と同様の意味で「戸」という文字を使っていることになります。

そこで「門戸を開く」は、家や場所の出入り口で人や物などの流通に制約をしないで、玄関を開けておく、往来を自由にしておく、という意味、そして、学問や技芸の世界で先生やその一派が入門を自由に許す、という意味になるのです。

\次のページで「「門戸を開く」の使い方・例文」を解説!/

「門戸を開く」の使い方・例文

「門戸を開く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.日本では江戸時代の末期に、貿易における門戸を開き、それまでの特定の国だけと貿易を行い、商品を輸入、輸出する体制から転換がはかられたという歴史がある。

2.「現代の弘法大師」と呼ばれる書の大家は、全世界すべての書道家に門戸を開いていることで知られる。

3.大国の要求に屈して、また甘言に目がくらんで、門戸を開いたばかりに衰退し滅亡した国の歴史は、多くの教訓を含んでいる。

4.日本の大学は、貧富や門地を問わず、すべての若者に門戸を開く存在であるのが原則である。

5.門戸を開くということと、異文化の間で摩擦が生じるということとは、同じ事柄の裏表であり、それらは紛争や戦争の原因になるという面と、通商や文明の発展に資するという面の両面をもっている。

門戸を開くことは、江戸時代末期に鎖国をやめて開国した日本の「文明開化」という言葉の響きから、また、一門や学校の開放性を示すものとして、好意的に取られる場合も多いものです。

一方で、日本の鎖国解除も外国からの圧力によるものであるし、開放するということは流入する勢力が強すぎるときには乗っ取られる場合もあるのだから、安易に推奨されるべきものではないでしょう。充分に力を蓄えた者が満を持して「門戸を開き」、一家に人を迎えたり、一国に文物や人間が流入することを受け入れる、というのが理想と言えるのではないでしょうか。

「門戸を開く」の類義語は?違いは?

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「門戸を開く」と似た意味を持つ言葉はいくつかありますが、ここではその中で「千客万来」「来るものは拒まず」をご紹介します。

「千客万来」

「千客万来」は、お店などに、多くの客がやってきて賑わうことです。

「門戸を開く」は、通商の場合に加えて学問や技芸の場合もありますが、「千客万来」はお店の営業での話が基本で、お金のやり取りのないところではあまり使いません。お金のやり取りのないところでの人の往来の場合には、「門戸を開く」とか「門戸開放」という方がぴったりくるでしょう。

\次のページで「「来るものは拒まず」」を解説!/

「来るものは拒まず」

「来るものは拒まず」は、「来る者は拒まず、去る者は追わず」というふうに使われることが多いものです。

これは、門戸が開かれているので、その門を入ってこようとする者は拒否しないし、また出ていこうとする者を無理に引き留めておくこともない、というとても自由な、無為自然とでもいうような感じのする言葉ですね。「門戸を開く」とは、とても似た意味の言葉です。

「門戸を開く」の対義語は?

対義語は、「門戸を閉じる」となりますが、熟語としては「鎖国」「管理貿易」「閉鎖性」などが挙げられます。

「鎖国」

「鎖国」は、ある国が国際的な人の往来や貿易、通商において、相手国を限定したり、人の入国規制や、貿易の量を調節をしたりする体制を指します。特に日本の江戸時代の大部分にわたって行われた外国人の入国規制、入国管理、通商の限定、制限の体制を言う場合が多いです。

日本では江戸時代の末期に、外国諸勢力の圧力もあって鎖国体制を放棄し、門戸を開いたと言えるので、「鎖国」と「門戸を開くこと(門戸開放)」が対義語となることがわかります。

「管理貿易」

「管理貿易」は、ほぼ「鎖国」と同義ですが、特に人間の往来以外の、物流、貿易の面での鎖国を意味すると考えてよいでしょう。つまり貿易や通商において、相手国を限定し、また、貿易量を調節、制限する体制となります。

「閉鎖性」

「門戸を開く」というのは、門や戸を開き、人や物の往来を制限せず自由にさせる、という意味です。「開放性」をあらわす言葉でもありますね。

そこで、対義語として、「閉鎖性」を挙げることができます。

閉鎖性という言葉は、単にある場所で門や戸を閉じてしまうということにとどまらず、その結果としての人や物の往来の管理、制限も意味するので、受け入れを限定、管理、制限するということにつながるものです。ですから、まさに「門戸を開く」の対義語だと言えましょう。

「門戸を開く」の英訳は?

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最後に、「門戸を開く」を英語で表現するとどうなるのか確認しておきましょう。

\次のページで「「open the door」」を解説!/

「open the door」

「open the door」で、「門戸を開く」という意味です。

例えば、以下のように使います。

Japan opened the door to America.

日本はアメリカに門戸を開き、通商をするようになった。

「門戸を開く」を使いこなそう

この記事では「門戸を開く」の意味・使い方・類語などを説明しました。

門や戸を開けるという単純な行為が、発展して、「一家をなす者が弟子や同人を広く制限せずに招き入れる」という意味にまでつながるのは、おもしろいところです。「門戸を開く」というのは、日本語ないし、漢語の奥深さを存分に味わえる言葉ですね。大切にしたいものです。

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国語言葉の意味

【慣用句】「門戸を開く」の意味や使い方は?例文や類語を教材系ライターがわかりやすく解説!

この記事では「門戸を開く」について解説する。

端的に言えば「門戸を開く」の意味は「人や物を受け入れること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗を呼んです。一緒に「門戸を開く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「門戸を開く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「門戸を開く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「門戸を開く」の意味は?

「門戸を開く」には、次のような意味があります。

禁止や制限をしないで、交流・通商・出入りなどを自由にする。

出典:三省堂 大辞林 第三版

「門戸」(もんこ)というのは、「門」と「戸」で、家などの入り口を指します。門や戸は開閉できるものですが、それを「開く」というのですから、人や物が入ってこられるような状態にしておくことになりますね。

門や戸を「閉じて」いるときには人や物が入ってくることはありません。これは入ってくることを「制限している」状態であるのに対して、「開いた」状態では制限を解除していることになるので、「門戸を開く」というのは、出入りを「自由に」する、ということになります。

「門戸を開く」の由来は?

次に「門戸を開く」の由来を確認しておきましょう。

」は、もともとは家などの入り口としての門という物体ですが、出入り口ですから、人や物の通る場所という意味ももつものです。

また家そのものを指す場合もあり、これは、「誰々先生の一門」というのが「誰々先生は一家をなしている」というのと同じ意味であるように、学問や技芸での一派、流派を意味することもあります

」は、日本語の「戸(と)」は、何かに面したところ、何かと何かを区切るもの、という意味をもちますが、門戸という熟語は、漢語に特徴的な、「同じ意味の言葉を連ねて意味を強調する」というものです。つまり、「門」と同様の意味で「戸」という文字を使っていることになります。

そこで「門戸を開く」は、家や場所の出入り口で人や物などの流通に制約をしないで、玄関を開けておく、往来を自由にしておく、という意味、そして、学問や技芸の世界で先生やその一派が入門を自由に許す、という意味になるのです。

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