この記事では「一石を投じる」について解説する。

端的に言えば一石を投じるの意味は「問題の提起」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「一石を投じる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「一石を投じる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一石を投じる(いっせきをとうじる)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一石を投じる」の意味は?

「一石を投じる」には、次のような意味があります。

反響を呼ぶような問題を投げかける。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一石を投じる」

「一石を投じる(いっせきをとうじる)」とは、何らかの事柄に対して新しい意見や問題を投げかけて周囲に反響をもたらすという意味の慣用句です。

当たり前や常識とされてきたことと異なる意見を表明した結果、大きな話題となる時に使われます。従来とは違うアイディアにより議論が盛んになり、結果として新しい発展につながることも多々。現代社会ではできる限り波風を立てないように過ごす傾向もありますが、あえてこのような“議論を起こす”ことで新しい何かが生じることもあるでしょう。

「一石を投じる」の語源は?

次に「一石を投じる」の語源を確認しておきましょう。これは石が水面に投げ込まれると、波紋が大きく広がることに由来しています。

それまで静かだった水面が、ひとつの石を投げ込まれたことで何重もの同心円状の波を広げていく様子。この「一石」を新たな意見に、水面に波紋が広がる様子を周囲への影響に見立てたのが「一石を投じる」です。

\次のページで「「一石を投じる」の使い方・例文」を解説!/

「一石を投じる」の使い方・例文

「一石を投じる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼が会議で一石を投じたことで、新しいプロジェクトが立ち上げられた。
2.教授の報告は、来週の学会で一石を投じるものになるだろう。
3.この状況を打開するためには、誰かが一石を投じる必要がある。

「一石を投じる」は小さな何かが影響を与えて広がること。これまでにない何かが新しく取り入れられるシーンでよく使われ、議論が活発になることや新たなステージに進むことを期待して用いられるのが一般的です。

また「一石を投じる」は、波が起こって広がることをたとえています。そのため物事が広がらない場合や、結果何も引き起こされなかった状況では「一石を投じる」という言葉を使うことはできません。たとえば「一石を投じた提案をしたが、特に効果はなかった」といった使い方は誤用なので注意しましょう。

「一石を投じる」の類義語は?違いは?

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「一石を投じる」に類似した意味を持つ慣用句として、ここでは2つの語句を解説します。

「物議を醸す」

「物議(ぶつぎ)」は世間の論争や噂、「醸す(かもす)」は醤油や酒を醸造することから転じて生み出すことを指し、「物議を醸す(ぶつぎをかもす)」は、世間の議論を引き起こすという意味を持ちます。

ですが「物議を醸す」には周囲の迷惑になることを引き起こすことや、騒ぎになる、というネガティブな意味も強く含んだ言葉です。そのため「一石を投じる」よりもやや否定的なニュアンスで使われます。

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「波紋を呼ぶ」

「一石を投じる」と水面に波紋が広がっていきますが、この波紋を引き起こすことそのものを指すのが「波紋を呼ぶ」という慣用句。これも「一石を投じる」の類語表現として挙げられる語句です。

ただし「一石を投じる」は自分が“意識的に行動した結果影響を及ぼすこと”を指しますが、「波紋を呼ぶ」では“意識せずした行動が予想外に影響を与えた”場合にも使用されます。特に周囲を意図せず動揺させた場合に用いることが多い語句です。

「一石を投じる」の対義語は?

「一石を投じる」の反対の意味とはどんなものでしょうか。今回は問題を提起して周囲の議論を呼び起こす「一石を投じる」に対し、問題を提起せず無視するような言葉を対義語としました。そのような意味を持つ言葉として、「棚上げ」と「店晒し」の2つの語句を紹介します。

「棚上げ」

「棚上げ(たなあげ)」とは、問題を保留にして解決や処理を後回しにすること。トラブルや解消すべき問題があるにもかかわらず、そのままにしてしまうことを意味します。問題提起をする「一石を投じる」とは反対の姿勢になりますね。

なおよく似た言葉に「棚に上げる」という言葉もありますが、これは“不都合なことに触れずにいる”という意味です。“一時保留にする”意味の「棚上げ」とは少し違いますので注意してください。

「店晒し」

「店晒し」は「たなざらし」と読み、問題を未解決や未処理のまま放置すること。売れ残りの商品が店頭の棚に放置されたままになっている様子をたとえた表現です。

これも問題を無責任に見て見ぬふりをするという点で、「一石を投じる」とは正反対の様子を表します。

なお「棚晒し」や「店曝し」と表記することもありますが、すべて同じ語句です。

「一石を投じる」の英訳は?

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最後に、「一石を投じる」の英語表現を確認しましょう。

「to create a stir」

「to create a stir」波紋を投げかけること。「一石を投じる」の英語訳としてよく挙げられます。

「stir」はかき混ぜることや動かすことを表した動詞で、「a stir」で世間の騒ぎや評判という意味です。そのため「to create a stir」は直訳で世間の騒ぎを引き起こすことを指し、世間を騒がせるような「一石を投じる」という表現になります。

\次のページで「「to make waves」」を解説!/

「to make waves」

「to make waves」は波風を立てることや波乱を起こすことといった意味ですが、事を荒立てるなど否定的なニュアンスの強い表現です。

より否定的な意味で「一石を投じる」を表現したい場合には、この表現を用いるのもいいでしょう。

「一石を投じる」を使いこなそう

この記事では「一石を投じる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

それまでにないアイディアや、これまでとは異なる意見を発するのは簡単なことはなく、苦手な人も多いと思います。ですが物事が進まず新しい段階に進ませたいと思う場合には、時には勇気を出して一石を投じてみるのもいいのではないでしょうか。そこから新しい可能性が見えることもあるかもしれませんよ。

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国語言葉の意味

【慣用句】「一石を投じる」の意味や使い方は?例文や類語を元広告会社勤務ライターがわかりやすく解説!

この記事では「一石を投じる」について解説する。

端的に言えば一石を投じるの意味は「問題の提起」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「一石を投じる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「一石を投じる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一石を投じる(いっせきをとうじる)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一石を投じる」の意味は?

「一石を投じる」には、次のような意味があります。

反響を呼ぶような問題を投げかける。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一石を投じる」

「一石を投じる(いっせきをとうじる)」とは、何らかの事柄に対して新しい意見や問題を投げかけて周囲に反響をもたらすという意味の慣用句です。

当たり前や常識とされてきたことと異なる意見を表明した結果、大きな話題となる時に使われます。従来とは違うアイディアにより議論が盛んになり、結果として新しい発展につながることも多々。現代社会ではできる限り波風を立てないように過ごす傾向もありますが、あえてこのような“議論を起こす”ことで新しい何かが生じることもあるでしょう。

「一石を投じる」の語源は?

次に「一石を投じる」の語源を確認しておきましょう。これは石が水面に投げ込まれると、波紋が大きく広がることに由来しています。

それまで静かだった水面が、ひとつの石を投げ込まれたことで何重もの同心円状の波を広げていく様子。この「一石」を新たな意見に、水面に波紋が広がる様子を周囲への影響に見立てたのが「一石を投じる」です。

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