
「through thick and thin」
良い時もわるいときも。thick は厚いthinは薄いを意味します。古い英語表現で当たりにくさが多い茂ってる時も、枯れはてているときも一緒にいる関係。配偶者であれ、友達であれ、そういう関係でいたいものですね。
宋弘は未遂に終わりましたが、自殺をしたことがあります。反乱軍が首都を征服し、仕えることを求められた際、水に飛び込みこれを拒否したのです。前述しましたが、宋弘の活躍した時代は前漢末期、新、後漢の三つにまたがる激動の時代。王朝が切り替わる際は波乱がつきもので前漢から新への転換は平和的に行われた(禅譲)ことになってますが実質はクーデター。さらに政治が失敗し新から後漢に代わる際には赤眉・緑林の乱という大戦乱がありました。その後も各地で群雄割拠の様相を呈しましたので糟糠の妻のエピソードを聞いて想像するようなほんわかした時代ではまったくありません。
そんな状況下で中華をまとめ上げ、戦国時代のようになるでもなく後漢という統一王朝が成立しえたのは、光武帝の歴史でもまれにみる英雄ぶりにあるといっても過言ではありません。その威厳も、臣下へのカリスマも絶大でした。そんな大英雄の誘いを袖にできる宋弘もまた豪傑であったというべきでしょう。
「糟糠之妻」を使いこなそう
「糟糠之妻」について解説させていただきましたがいかがだったでしょうか。役人として成功するだけでなく、皇帝の姉を妻にもてばもう鬼に金棒であったでしょうに、その誘いをはねのけた宋弘の妻への愛は非常に深いものであったのでしょう。笑って許す光武帝だったからよかったようなものの、皇帝が違えば姉に恥をかかせたとして死罪になった可能性も十分にあります。それでも意志が貫ける宋弘はすごいですね。
現代日本で貧乏から大金持ちへの大ブレイクというと想像しやすいのはお笑い芸人などでしょか。人気者になったとたんに美人の女優さんとアイドルと付き合いだす人を見るとなんだかな、と思う反面昔からの彼女や奥さんを大切にする人を見ると好感度が上がったりします。
酒かすや米ぬかにまみれた妻の方が大切、なんていうと現代ではフェミニストな人たちに攻撃されてしまいそうにも思えますが、糟糠と宋弘が同じ音で掛かっていて、男もひっくりめて貧乏な状態で乗り切ってきたを指していることを覚えておきたいですね。