この記事では「隔靴掻痒(かっかそうよう)」という四字熟語について解説する。

端的に言えば「隔靴掻痒」の意味は「もどかしい」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「隔靴掻痒」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「隔靴掻痒」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「隔靴掻痒」の意味や使い方を見ていきましょう。

「隔靴掻痒」の意味は?

まずは、国語辞典の定義から。「隔靴掻痒」には、次のような意味があります。

思いどおりにいかなくて、もどかしいこと。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「隔靴掻痒」

「隔靴掻痒」は、靴の上からかゆいところをかくというのが本来の意味です。もちろん、靴の上からかいたのでは、かゆいところに手が届くはずもありません。

つまり、かゆいところがあってかこうとしているのに、それがかなわずにいる。それって、とてももどかしくていらいらしてきませんか?

実は、この「隔靴掻痒」という四字熟語が表すのもまさにそういった意味なのです。つまり、思い通りにならずに不満が募る様子をこの四字熟語は表しています。

「隔靴掻痒」の由来・出典は?

次に「隔靴掻痒」の語源を確認しておきましょう。この四字熟語は、北宋の時代の中国で書かれた「景徳伝灯録」の第二十二巻にその出典があります。

この書物の中に「隔靴掻痒」の一節が現れるのが、この四字熟語の由来です。ちなみに訓読すると「靴(くつ)を隔(へだ)てて痒(かゆ)きを掻(か)く」となります。

\次のページで「「隔靴掻痒」の使い方・例文」を解説!/

「隔靴掻痒」の使い方・例文

「隔靴掻痒」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

元プロ野球選手だった父親は、息子が練習する姿を隔靴掻痒たる思いで眺めているほかなかった。

真打として高座をつとめる兄弟子からみると、新弟子たちの不甲斐ない様子には隔靴掻痒の感もあろう。

隔靴掻痒しながら見守る将棋クラブの主宰者の心配をよそに、新人たちは伸び伸びと将棋を指していた。

「隔靴掻痒」の意味をきちんとつかむためには、思い通りになっていないのは何かをつかむことです。それが、かなわずにイライラが募っているわけですから。

最初の例文では、元プロ野球選手とあるので、野球の上手な父がなかなか上達しない息子の様子を見てじれているのでしょうね。元プロの自分ならば、おそらく造作もなくやってのけることをできずにいると。

二つめの例文では、兄弟子が新入りを見ているということから、先輩や師匠に対する心遣い、あるいは稽古に励む姿勢などがなっていないと感じているのではないでしょうか。

最後の例文で「隔靴掻痒」としているのは、新しくクラブのメンバーに入った新人たちに対する主宰者の心理が描かれています。おそらく、教えたとおりにきちんと指せているかどうかやきもきしているのでしょう。

#2 「隔靴掻痒」の類義語は?違いは?

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ところで、「隔靴掻痒」類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、中でも代表的なものを二つほどご紹介します。

「掉棒打星」

「掉棒打星(とうぼうだせい)」は、「隔靴掻痒」の類義語の中でもっとも代表的なものです。この四字熟語を訓読すると「棒を掉(ふる)い星を打つ」となります。

すなわち、棒で夜空の星を打ち落とすという意味であり、これはとうてい可能なことではありません。したがって、この四字熟語も無駄に労力を費やすこと思い通りにならない様子を表現しています。

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「憤懣焦燥」

「憤懣焦燥(ふんまんしょうそう)」もまた、「隔靴掻痒」の類義語といってもいい存在です。こちらは、難しい漢字も使用されているので、前半部と後半部分けて考えてみます。

前半部の「憤懣」が表すのは、怒りもだえる様子です。一方の後半部は、思い通りにいかず焦り苛立つ様子を表します。

この二つを合わせると見えてくるのが、自分の意思通りに行かず怒り焦っている様子です。

絵本関連の仕事がなかなか進まないことに、掉棒打星ともいえる感情が心の底から湧いてきた。

そのライターは取材を通じて現代医療の限界を知り、憤懣焦燥の感を禁じえなかった。

#3 「隔靴掻痒」の対義語は?

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では、「隔靴掻痒」対義語は、いったいどのようにとらえればいいのでしょうか。「隔靴掻痒」の意味が思い通りにいかずにもどかしい様子を表しているのなら、その対義語は思い通りに事が進んでいる様子を表すはずです。

ここでは、そのような意味合いを持つ四字熟語のうち、代表的なものを二つほどご紹介します。

「麻姑掻痒」

「麻姑掻痒(まこそうよう)」は、「隔靴掻痒」の対義語としてぜひ覚えておきたい四字熟語です。この熟語に登場する「麻姑」とは鳥のように爪が長かったとされる仙女のことを表しています。

つまり、この仙女に掻いてもらえれば痒いところにも難なく手が届くというわけです。このことから、事が思い通りに進んで満足するという意味合いでこの四字熟語が使われるようになりました。

「春風得意」

「春風得意(しゅんぷうとくい)」もまた、「隔靴掻痒」の対義語だといえるものです。前半の「春風」とは、春に吹く心地よい風を意味しています。

後半の「得意」が表すのは、自分の望みがかない満足している様子です。これら二つを合わせると、願いがかない春風に吹かれるがごとく心地がよいという意味が見えてきますね。

痒いところにも手が行き届くサービス、こういうのを麻姑掻痒っていうんだろうね。

春風得意といった表情から、我が社の重役連中が業績に満足していることが分かる。

\次のページで「「隔靴掻痒」の英訳は?」を解説!/

#4 「隔靴掻痒」の英訳は?

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最後に、「隔靴掻痒」英語訳についてもみていきましょう。こちらも、代表的なものは次の二つです。

「like kissing a beautiful woman through a pane of glass」

やや長いですが、「like kissing a beautiful woman through a pane of glass」は「隔靴掻痒」を英語訳したもののひとつです。こちらを直訳するとガラス板越しに美女とキスをするようにとなります。

なるほど、これは確かに分かりやすいたとえですね。この記事の読者が女性の方だった場合、「美女」を「イケメン」に置き換えるといいのではないでしょうか。

「frustrating」

「frustrating」もまた、「隔靴掻痒」の英語訳だといえるものです。この単語は、苛立たしい感情もどかしい感情を表します。

ただし、「隔靴掻痒」のような「たとえ」にはなっておらず、ストレートに苛立ちを表しているところが異なるポイントです。

「隔靴掻痒」を使いこなそう

この記事では「隔靴掻痒」の意味・使い方・類語などを説明しました。この四字熟語の表す意味は、思い通りにいかずもどかしいでしたね。

痒いところに手が届かずにイライラした経験をお持ちなら、これを生かさない手はありません。つまり、相手の痒いところに手が届くようなサービスを提供するのはいかがでしょうか。

もし、この四字熟語を使う機会があれば、ぜひ臆することなくどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「隔靴掻痒」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「隔靴掻痒(かっかそうよう)」という四字熟語について解説する。

端的に言えば「隔靴掻痒」の意味は「もどかしい」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「隔靴掻痒」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「隔靴掻痒」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「隔靴掻痒」の意味や使い方を見ていきましょう。

「隔靴掻痒」の意味は?

まずは、国語辞典の定義から。「隔靴掻痒」には、次のような意味があります。

思いどおりにいかなくて、もどかしいこと。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「隔靴掻痒」

「隔靴掻痒」は、靴の上からかゆいところをかくというのが本来の意味です。もちろん、靴の上からかいたのでは、かゆいところに手が届くはずもありません。

つまり、かゆいところがあってかこうとしているのに、それがかなわずにいる。それって、とてももどかしくていらいらしてきませんか?

実は、この「隔靴掻痒」という四字熟語が表すのもまさにそういった意味なのです。つまり、思い通りにならずに不満が募る様子をこの四字熟語は表しています。

「隔靴掻痒」の由来・出典は?

次に「隔靴掻痒」の語源を確認しておきましょう。この四字熟語は、北宋の時代の中国で書かれた「景徳伝灯録」の第二十二巻にその出典があります。

この書物の中に「隔靴掻痒」の一節が現れるのが、この四字熟語の由来です。ちなみに訓読すると「靴(くつ)を隔(へだ)てて痒(かゆ)きを掻(か)く」となります。

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