この記事では「悪口雑言」について解説する。
端的に言えば「悪口雑言」の意味は「いろいろと悪く言うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「悪口雑言」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「悪口雑言」には、次のような意味があります。
さんざん悪口を言うこと。いろいろののしること。また、その言葉。罵詈(ばり)雑言。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「悪口雑言」
漢字を分解すると、「悪口」は「悪く言うことや、悪口そのもの」のこと。「雑言」は「さまざまの悪口」のこと。合わせて「さまざまに悪口をいうこと」の意味になります。
「雑言」も、ただ言い散らかすだけではなく悪い意味が入っていることも忘れずにしましょう。また「ぞうげん」と読むこともできます。
どちらも「悪口や悪く言うこと」で、それを重ねているのですから、どれだけ悪く言うのか、言う量も多いということが想像できますね。あまり良い場面で使うとは思えない言葉ですが、漢字から想像できる内容としては、そこまで難しくはないでしょう。
この四字熟語で問われやすいのは、やはり読み方です。
「わるくち」や「ざつげん」などと読まないように要注意。「あっこう」も「ぞうごん」も、それぞれ熟語としても出題される単語です。しっかり読めるようにしておきましょう。
「悪口雑言」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
\次のページで「「悪口雑言」の類義語は?違いは?」を解説!/
・検索していたら、私の大好きなアイドルが悪口雑言を浴びせられていて、とてもショックを受けた。
・転職しようと思っていた会社が悪口雑言を述べられている口コミを発見してしまい、勢いで決めずに様子見しようと考えなおした。
・人気が出れば出るほど、ランキングサイトなどで悪口雑言の限りを尽くして貶めようとする悪質な人も現れてくる。
「とにかく悪く言うこと」のイメージがつきますでしょうか。ひと言ふた言ではなく、一方的に、言いたい放題言っているイメージもありますね。
「悪口雑言を浴びせる」「悪口雑言の限りを尽くす」などという表現も覚えておきましょう。四字熟語だけでも悪い意味がかなりありますが、さらに動詞で強める形ですね。
日常会話でそのまま使うような言葉ではないでしょうが、文章表現では目にすることもあるかもしれません。
そんなに悪く言うからにはきっと理由があるはず。もし文章中で見かけた場合は、誰が、何に対して、どうしてそうしたのかは注意したいですね。
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次に「悪口雑言」の類義語として、ここでは「罵詈雑言」「誹謗中傷」をご紹介します。細かいニュアンスの違いもありますので、合わせて覚えましょう。
「罵詈雑言(ばりぞうごん)」は「口ぎたなくののしること。またその言葉」。「罵」「詈」も、「ののしる(罵る)」という意味と読みを持つ漢字です。
「罵詈」とは「強い侮蔑」のことで、侮ったり、馬鹿にしたりと、相手をより傷つけようという意図が含まれているといえるでしょう。
「悪口雑言」よりも意味が強く、攻撃的なイメージがあります。使い方には注意したい言葉ですね。
また、ほぼ同じ意味で「罵詈讒謗(ばりざんぼう)」という四字熟語もありますが、どちらも漢字で書かせるのはかなりの高レベル。読みまでは押さえておきましょう。
・喧嘩に負けて感情的になった男が、相手に罵詈雑言を浴びせかけて警察に連れていかれた。
\次のページで「「誹謗中傷」」を解説!/
「誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)」は、「誹謗」が「悪口を言うこと、なじること」。「中傷」が「根拠のないことを言って相手の名誉を傷つけること」。
もともとは四字熟語ではなく載っていない辞書もありましたので、分解した意味をご紹介しています。
「中傷」という言葉には「根拠のないこと」や「嘘」を言って相手を貶める意味までありますから、ここまでくると完全に相手をやっつけてやろうという意図がある言葉です。
「悪口雑言」と完全な意味の一致はしていないことにも注意しましょう。
辞書には載っていませんでしたが、ニュースなどで「ネットの誹謗中傷により~」という言い回しを耳にしたことがある人は多いと思います。時事問題などで出てくる可能性はありますので、しっかり覚えておきましょう。
公式試合でライバルを誹謗中傷した選手が、スポーツマンシップに反しているとして、永久追放の処分を受けた。
「悪口雑言」の反対の意味としては「良い言葉をたくさん並べて、褒める」ということになるでしょうが、意外とぴったりの四字熟語がありませんでした。
四字熟語以外で考えれば「称賛する」「褒めたたえる」などという表現が妥当でしょう。ただ「褒める」よりも、動作を強める言葉が付いていたほうがいいですね。
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「悪口雑言」の英語訳には、名詞「invective」「revilement」があります。動詞にしたい場合は「revile」。例文で確認してください。
名詞「invective」「revilement」は、それぞれ「ののしりの言葉」やそのまま「悪口雑言」の意味を持つ単語です。
「revilement」は動詞「revile」で「~をののしる、悪口を言う」という形にもなります。文脈に合わせて単語を選択できるようにしましょう。
There are many invectives against politician who caused scandal.
スキャンダルを起こした政治家に対して、多くの悪口雑言が述べられている。
She began to revile him during the date.
彼女はデート中に彼を罵り始めた。
\次のページで「「悪口雑言」を使いこなそう」を解説!/
この記事では「悪口雑言」の意味・使い方・類語などを説明しました。
悪く言う、というだけでも様々表現があるのですね。それだけ人は何を言われるかが気になってしまうものとも考えられます。
ご紹介のとおり「誹謗中傷」は、現在では四字熟語ではないそう。しかし今の社会においてはむしろよく聞く言葉ですから、今後四字熟語としても認められていくかもしれません。
社会の中でどんな言葉が必要とされているのか、言葉の移り変わりから注目してみるのも、きっと面白いですよ。