今回は酵素について学ぶぞ。

そもそも酵素が何か知っているか?酵素とは体の中で働く、タンパク質でできた生体触媒のことです。酵素は唾液や膵液、胃液の中にも含まれていて、消化を助けてくれる。酵素による反応を「酵素的反応」という。酵素としてイメージしやすいのは先ほど説明した唾液のアミラーゼや膵臓のリパーゼなどでしょう。ところで酵素は働く条件が限られていて最適な温度や㏗が決まっている。

酵素は体の中だけではなく、実は家事の現場でも活躍してくれている物資です。そんな酵素についてその働きや仕組みを科学館職員たかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

不思議な現象を追求する科学が好きで理系に進む。高校は化学部、大学は工学部化学系のリケジョ。

酵素とは

酵素とは

image by Study-Z編集部

酵素とは「生体内で様々な化学反応を進行させる触媒」のことです。

触媒は反応に必要なエネルギー(活性化エネルギー)を下げ、化学反応を進みやすくさせます。酵素に限らず触媒は繰り返し作用できるのが特徴です。触媒は化学反応をスムーズに進行させるために加えられ、触媒自体は変化しません。

酵素反応において酵素によって化学反応を起こす物質を基質と言います。例えば白米を食べると口の中でアミラーゼによってデンプンが基質となった反応が進むのです。酵素のアミラーゼと基質のデンプンは合わさって酵素基質複合体をつくり、反応によってできた反応生成物が酵素から離れていきます。ちなみにアミラーゼは世界で最初に見つかった酵素で、1833年にフランスの生化学者によって大麦の芽から取り出されました。

「もっと酵素を知りたい」という人はこちらの記事を読んでみてくださいね。

酵素の特徴

酵素はどんなも反応でも触媒として働けるかというとそうではありません。また、酵素は通常の触媒よりも作用する範囲が限定されています。

基質特異性

基質特異性

image by Study-Z編集部

酵素はどの反応でも自由に触媒の役割を果たせるわけではありません。酵素は特有の立体構造をしていて、特定の基質に対してしか働くことが出来ないのです。このような性質を基質特異性といいます。唾液のアミラーゼはデンプンの消化はできますが、 タンパク質の消化はできないのです。

酵素反応ではまず、酵素が特定の基質と酵素基質複合体を作ります。そしてできた反応生成物は酵素から離れ、再び触媒として反応を繰り返すことができるのです。

酵素の失活

酵素はどんな状況でも働けるかというと、そうではありません。これは酵素がタンパク質であることを考えるとわかりやすいですね。例えば牛乳は過熱すると膜を張り(ラムスデン現象)、酢を加えると分離します。これは温度や㏗などの状況によってタンパク質の立体構造が壊れて戻れなくなる(タンパク質の変性)からです。そのためタンパク質である酵素も働きやすい温度や㏗が決まっています。

\次のページで「酵素の種類」を解説!/

温度
酵素にはもっともよく働く温度、最適温度があります。低温すぎても高温すぎても酵素は働きません。そして多くの酵素は60℃以上で立体構造が変化し、触媒としての機能を失ってしまう(失活)のです。

pH
温度と同様に酵素には働きやすいpHがあります。例えばアミラーゼはpH7の時活発に働きますが、酸性に傾くと反応が進まなくなってしまうのです。一方、酸性の胃液に含まれるペプシンはpH2の時に最も効率よく働きます。

ラムスデン現象ってなんだっけ?という人にはこちらの記事がおすすめです。

酵素の種類

酵素の種類

image by Study-Z編集部

上の表からわかるように、口から摂取した食事は唾液のアミラーゼから始まり胃のペプシン小腸のマルターゼなど様々な酵素によって消化されていきます。

酵素を持つのは人間だけではありません。例えばカビや細菌が持つが持つセルラーゼセルロースをグルコースに分解することが可能です。セルロースは人間が食べることのできない植物の固い部分に含まれていて、紙にも含まれています。ヤギが紙を食べて消化できるのは、胃の中にある微生物がセルラーゼを分泌しているからなのです。ヤギ自身はセルラーゼを分泌できないので、セルロースを消化できません。

酵素の役割

酵素は体内で働くだけでなく、スーパーやドラックストア、ホームセンターで売っている食品や薬、洗剤にも含まれています。そして酵素の力を上手に使えば安いお肉をおいしく食べたり、頑固な血の汚れを落とすことが可能になるのです。

\次のページで「調理に使える酵素の裏技」を解説!/

調理に使える酵素の裏技

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例えばゼラチンを使ってフルーツゼリーを作る時、固まらない経験をしたことがある人もいるでしょう。これは入れたフルーツに原因があります。

パイナップルにはタンパク質分解酵素のプロテアーゼが含まれているのです。そのためパイナップルを入れると、酵素の働きでタンパク質であるゼラチンがうまく固まりません。パイナップル入りのゼリーを作る時は寒天を使う、またはパイナップルを70℃以上に加熱して酵素を失活させてから作ってくださいね。パイナップルの他にパパイヤやキウイなどにも含まれているので注意してください。

ところでこのパイナップルのプロテアーゼには活用法方法もあります。お肉もタンパク質でできているので、固い肉をパイナップルに漬けて柔らかくすることができるのです。またショウガにもプロテアーゼが含まれています。豚の生姜焼きがおいしいのはショウガのプロテアーゼがお肉を柔らかくしてくれているからなのです。さらにこのプロテアーゼは大根にも含まれています。お肉が固くて調理に困っている人はぜひ試してみてくださいね。

家事と酵素

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洗濯用洗剤にはアルカリセルラーゼという酵素が含まれています。この酵素が組織に絡みついた汚れを溶かしてくれているのです。洗濯の裏ワザとしてショウガや大根で血の汚れを落とすことができますハンカチなどにショウガや大根のしぼり汁を含ませて汚れを軽くとんとん叩いてみてください。先ほど紹介したプロテアーゼが血を分解し、汚れを落とすことができます。

また洗濯槽や風呂の追い炊きの配管の洗浄用にも酵素系洗剤があるので、気になる人はぜひ洗濯機やお風呂の掃除に使ってみてください。

アミラーゼの入手方法

先ほどから何度も登場している消化酵素のアミラーゼ。どうやって生産されているのでしょうか?

アミラーゼは大麦から発見されたことからわかるように、植物にも含まれています。果実が熟成するときや穀物が発芽するときにアミラーゼが合成されているのです。

工業的に大量生産するときは微生物から取り出しています。アミラーゼを生産する菌としてアスペルギウス・オリゼー(麹菌の一種、和名は二ホンコウジカビ)、枯草菌が使われているそうです。

酵素は体内で起こる反応の触媒

酵素は生体触媒として消化を手助けしています。毎日する食事の後に体の中ではたくさんの化学反応が起こっているのですね。酵素はどんな物質に対しても触媒として働くことができるのかというと、そうではありません。酵素は基質特異性と言って、特定の物質に対してしか働くことができないのです。

酵素は消化以外でも調理や洗濯など家事にも役立っています。酵素を上手に使えば安いお肉をおいしく食べたり、血の汚れを残さずきれいに落とすことができるのです。ぜひ、科学の知識を使って料理や洗濯をしてみてくださいね。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

酵素ってなに?どんな種類があるの?科学館職員がわかりやすく解説

今回は酵素について学ぶぞ。

そもそも酵素が何か知っているか?酵素とは体の中で働く、タンパク質でできた生体触媒のことです。酵素は唾液や膵液、胃液の中にも含まれていて、消化を助けてくれる。酵素による反応を「酵素的反応」という。酵素としてイメージしやすいのは先ほど説明した唾液のアミラーゼや膵臓のリパーゼなどでしょう。ところで酵素は働く条件が限られていて最適な温度や㏗が決まっている。

酵素は体の中だけではなく、実は家事の現場でも活躍してくれている物資です。そんな酵素についてその働きや仕組みを科学館職員たかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

不思議な現象を追求する科学が好きで理系に進む。高校は化学部、大学は工学部化学系のリケジョ。

酵素とは

酵素とは

image by Study-Z編集部

酵素とは「生体内で様々な化学反応を進行させる触媒」のことです。

触媒は反応に必要なエネルギー(活性化エネルギー)を下げ、化学反応を進みやすくさせます。酵素に限らず触媒は繰り返し作用できるのが特徴です。触媒は化学反応をスムーズに進行させるために加えられ、触媒自体は変化しません。

酵素反応において酵素によって化学反応を起こす物質を基質と言います。例えば白米を食べると口の中でアミラーゼによってデンプンが基質となった反応が進むのです。酵素のアミラーゼと基質のデンプンは合わさって酵素基質複合体をつくり、反応によってできた反応生成物が酵素から離れていきます。ちなみにアミラーゼは世界で最初に見つかった酵素で、1833年にフランスの生化学者によって大麦の芽から取り出されました。

「もっと酵素を知りたい」という人はこちらの記事を読んでみてくださいね。

酵素の特徴

酵素はどんなも反応でも触媒として働けるかというとそうではありません。また、酵素は通常の触媒よりも作用する範囲が限定されています。

基質特異性

基質特異性

image by Study-Z編集部

酵素はどの反応でも自由に触媒の役割を果たせるわけではありません。酵素は特有の立体構造をしていて、特定の基質に対してしか働くことが出来ないのです。このような性質を基質特異性といいます。唾液のアミラーゼはデンプンの消化はできますが、 タンパク質の消化はできないのです。

酵素反応ではまず、酵素が特定の基質と酵素基質複合体を作ります。そしてできた反応生成物は酵素から離れ、再び触媒として反応を繰り返すことができるのです。

酵素の失活

酵素はどんな状況でも働けるかというと、そうではありません。これは酵素がタンパク質であることを考えるとわかりやすいですね。例えば牛乳は過熱すると膜を張り(ラムスデン現象)、酢を加えると分離します。これは温度や㏗などの状況によってタンパク質の立体構造が壊れて戻れなくなる(タンパク質の変性)からです。そのためタンパク質である酵素も働きやすい温度や㏗が決まっています。

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