今回のテーマは小さな生き物、微生物です。微生物は、人の目で見られなくらいのサイズの生き物のことです。たとえ目で存在を確認することができたとしても、その体のつくりは顕微鏡がないと確認することはできない。

地球上のいろんなところに微生物は生息している。空気中にいる微生物もいれば、体の中にいる微生物もいる。そして人の生活に役立つものもあれば病気の原因となっているものもあるんです。

今回は微生物がどんな生物なのかについて科学館職員のたかはしふみかが説明します。

ライター/たかはし ふみか

不思議を追求する科学が好きで理系に進んだリケジョ。高校は化学部、大学では工学部の化学科と化学漬けの学生生活を送っていた。

微生物ってどんな生き物?

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微生物とは「肉眼でその存在を確認できないほど小さな生き物」の総称です。細菌、菌類、ウィルスなど様々な生き物が微生物の仲間とされています。その種類は多く、生態も様々です。

ウィルスは細胞を持たず、他の生物の細胞に入り込んで増殖します。そのため厳密に生物ではありません。しかし、ウィルスも微生物として扱われます。

微生物の大きさ

微生物の大きさ

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目に見えないほど小さな生き物である微生物、実はその大きさに明確な定義はありません。

例えばインフルエンザウィルスの大きさは80120nmくらい、皮膚にいる表皮ブドウ菌1μmくらいの大きさです。比較的大きな微生物のゾウリムシ0.1㎜ほどあり、中には1㎜も超える大きなものもいます。しかし、1㎜の大きさでは存在を確認できても、どんな体かは判断できませんね。そのためゾウリムシも微生物に分類されています。

菌の数え方

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こんな小さな微生物をどうやって数えるのでしょうか。菌を数えるときは顕微鏡でその数を数える方法や、培養して育ったコロニー(単一細胞が育った集団)の数を数える方法があります。

顕微鏡を使って菌の数を数えるときに使うのがセルカウンタープレートです。セルカウンタープレートに菌の数を数えたい液を入れ、そして1つのマス目にどれだけの菌がいるかを数えます。また、菌を希釈した溶液をシャーレで培養しコロニーの数を数えるという方法もあるのです。例えば菌の数を調べたい溶液1mlを培地に撒いてそのまま培養し、10個のコロニーが育てばこの溶液1mlには10匹の菌がいたことになります。

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液体1ml中に1000個のコロニーを形成できるほどの菌がいたとします。ひとつのシャーレに1000個もコロニーができたとしたら数えづらいですね。また、あまり菌が多いと顕微鏡で数えるのは困難です。

菌が多すぎると正しく数えることができないので、必要に応じて適度に希釈する必要があります。必要に応じて菌の数を数えたい溶液を10倍、100倍と希釈して濃度を薄くするのです。希釈して菌の数を数えたときは、希釈した濃度の液体中の菌の数であることに注意してください。10倍希釈した場合、元の液には数えた数の10倍の菌がいることになります。

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微生物学の発展

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微生物学の発展にかせないのが顕微鏡です。顕微鏡が発明され小さいものがよく見えるようになったおかげで、微生物が発見されました。最初の顕微鏡が作られたのは1590年です。その後ガリレオ・ガリレイによって改良され、1674年にレーウェンフックによって微生物が発見されました。

顕微鏡の歴史について知りたい人はこちらの記事も読んでみてくださいね。

微生物の生活

微生物は様々な環境で暮らしています。水や土壌の中にいるほか、人間が暮らすことができない極端な環境、さらに生物の体の中で暮らす微生物もいるのです。

劣悪な環境で生きる!極限環境微生物

極端に寒いところや熱いところ、極端に酸性やアルカリ性のところで暮らす、むしろそういう状況でしか生存、繁殖できない微生物も存在します。このような微生物を極限環境微生物というのです。特に古細菌に極端な環境に適応できる菌が多くいます。

生物の体にもいる微生物

人の体にも微生物はいます。人体の中には100兆個以上の微生物が存在しているのです。微生物は皮膚の表面や腸内などに存在し、時に人間に有益な働きをしています。例えば皮膚には皮膚ブドウ球菌アクネ菌黄色ブドウ球菌などの菌がいるのです。

このように人間の体内や表面にいる菌は常在菌と言われています。免疫力があるときには無害な常在菌ですが、体が弱っているときには感染症の原因となり、このような感染を日和見感染と呼ぶのです。

腸内にもたくさんの菌がいます。体に良い働きをするのが善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)、体に悪い働きをするのが悪玉菌(大腸菌など)です。そして善玉菌が多いときはよい働き、悪玉菌が多いときに悪い働きをする菌を日和見菌と言います。

微生物を学ぶ上で覚えておきたい生物のこと

微生物を学ぶ上で覚えておきたい生物のこと

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微生物の種類を学ぶのに、生物の基礎となる原核生物と真核生物についておさらいしましょう。

原核生物
原核生物は核膜がなく、遺伝子情報が細胞質中に存在しています。細胞壁を持っていますが、葉緑体はなく光合成はしません。つくりの簡単な原核生物が進化して真核生物となったと言われています。

真核生物
核膜に包まれた核がを持つ生物です。

ウィルス
自己増殖できないウィルスはほかの生物の細胞を使って複製して増殖します。生命の最小単位である細胞を持たず、そのため非生物という扱いをされることもあるのです。

原核生物、真核生物についてはこちらの記事も読んでみてくださいね。

微生物紹介

それでは微生物の仲間を紹介していきます。

真菌

真菌とは真核生物で、カビや酵母などが含まれます。

糸状の形状(菌糸)をしたカビ。湿気を好み、食べ物や壁、さらに衣類までにも発生します。カビは見た目が不潔で嫌な臭いがするうえ、食中毒やアレルギーの原因となる嫌われものです。その一方、分泌する酵素の働きが食品をおいしくしてくれるというメリットがあります。カビでおいしくなる、といえばアオカビを使ったゴルゴンゾーラなどのチーズですね。

また酵母は酒造りやパン作りに欠かせません。さらに酵母は便秘解消やリラックス効果があるとしてサプリの成分になっています。

古細菌

古細菌にはメタン菌、高度好塩菌、超好熱菌などが含まれています。原核生物で大きさは0.5μmから大きくても10μm程度。ほとんどが極限環境微生物であり、中には120度を超える高温で増殖できる菌もいるのです。

実はおならに含まれるメタンガスを作っているのがこの古細菌のメタン菌になります。メタン菌は海底堆積物や地殻内にも存在する菌です。おなかの中に海底に暮らすのと同じ古細菌がいるとはびっくりですね。

細菌

細菌(バクテリア)とは大腸菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌、結核菌などのことで大きさは0.5~10μmほど。核を持たない原核生物です。細菌は17世紀に発見され、その後コッホが細菌の培養方法を確立し細菌による病気をの存在を証明しました。

様々な環境で生存可能な存在し、南極に存在する細菌もいます。しかし低温度や高圧の環境下でも平気なのに乾燥には弱いが特徴です。また腸内にも細菌は存在し(腸内細菌)、食物の消化を行っています。

コッホについてはこちらの記事をどうぞ。

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原虫

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真核単細胞で、寄生性であり病原性のあるものも多くいます。微生物の中では比較的サイズが大きく1~20μmほど。ゾウリムシやアメーバーが原虫に分類されています。

ウィルス

微生物の中でも特に小さいのがウィルス。種類によっても異なりますが、大きさは20~300nmしかありません。

ネットワーク経由で入ってきてパソコンを感染させ、悪質なダメージを与えるプログラムをコンピューターウィルスと呼びますね。その由来である微生物のウィルスは病原体となって生物に感染病を感染させます。ウィルスといえばインフルエンザウィルスコロナウィルスがありますね。

微生物の仲間たち

地球上のいたるところに微生物は存在しています。それは土の中や水の中、人の体内、さらには人間は到底暮らせないような過酷な環境だったりするのです。普段は何の問題もない菌も、体調が悪く免疫力が落ちているときには重篤な症状を引き起こす場合があります。

しかし、菌は悪い物ばかりではありません。菌のおかげで人間の食生活は豊かになったのです。菌を上手に活用し、健康に生活したいですね。

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理科生物生物の分類・進化

微生物って何?どんな種類がいるの?科学館職員がわかりやすく解説

今回のテーマは小さな生き物、微生物です。微生物は、人の目で見られなくらいのサイズの生き物のことです。たとえ目で存在を確認することができたとしても、その体のつくりは顕微鏡がないと確認することはできない。

地球上のいろんなところに微生物は生息している。空気中にいる微生物もいれば、体の中にいる微生物もいる。そして人の生活に役立つものもあれば病気の原因となっているものもあるんです。

今回は微生物がどんな生物なのかについて科学館職員のたかはしふみかが説明します。

ライター/たかはし ふみか

不思議を追求する科学が好きで理系に進んだリケジョ。高校は化学部、大学では工学部の化学科と化学漬けの学生生活を送っていた。

微生物ってどんな生き物?

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微生物とは「肉眼でその存在を確認できないほど小さな生き物」の総称です。細菌、菌類、ウィルスなど様々な生き物が微生物の仲間とされています。その種類は多く、生態も様々です。

ウィルスは細胞を持たず、他の生物の細胞に入り込んで増殖します。そのため厳密に生物ではありません。しかし、ウィルスも微生物として扱われます。

微生物の大きさ

微生物の大きさ

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目に見えないほど小さな生き物である微生物、実はその大きさに明確な定義はありません。

例えばインフルエンザウィルスの大きさは80120nmくらい、皮膚にいる表皮ブドウ菌1μmくらいの大きさです。比較的大きな微生物のゾウリムシ0.1㎜ほどあり、中には1㎜も超える大きなものもいます。しかし、1㎜の大きさでは存在を確認できても、どんな体かは判断できませんね。そのためゾウリムシも微生物に分類されています。

菌の数え方

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こんな小さな微生物をどうやって数えるのでしょうか。菌を数えるときは顕微鏡でその数を数える方法や、培養して育ったコロニー(単一細胞が育った集団)の数を数える方法があります。

顕微鏡を使って菌の数を数えるときに使うのがセルカウンタープレートです。セルカウンタープレートに菌の数を数えたい液を入れ、そして1つのマス目にどれだけの菌がいるかを数えます。また、菌を希釈した溶液をシャーレで培養しコロニーの数を数えるという方法もあるのです。例えば菌の数を調べたい溶液1mlを培地に撒いてそのまま培養し、10個のコロニーが育てばこの溶液1mlには10匹の菌がいたことになります。

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液体1ml中に1000個のコロニーを形成できるほどの菌がいたとします。ひとつのシャーレに1000個もコロニーができたとしたら数えづらいですね。また、あまり菌が多いと顕微鏡で数えるのは困難です。

菌が多すぎると正しく数えることができないので、必要に応じて適度に希釈する必要があります。必要に応じて菌の数を数えたい溶液を10倍、100倍と希釈して濃度を薄くするのです。希釈して菌の数を数えたときは、希釈した濃度の液体中の菌の数であることに注意してください。10倍希釈した場合、元の液には数えた数の10倍の菌がいることになります。

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