この記事では「尻に火がつく」について解説する。

端的に言えば「尻に火がつく」の意味は「事態が切迫して時間がないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗を呼んです。一緒に「尻に火がつく」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「尻に火がつく」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「尻に火がつく」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「尻に火がつく」の意味は?

尻に火がつく」には、次のような意味があります。

事態が差し迫って、追いつめられた状態になる。

出典:goo辞書

お尻に火がついたら?それは熱くてたまりません。やけどをしてしまう状況です。あわてて逃げ出して、お尻の火を消さないといけません。

それまでのんびりしていたとしても、一気に急ぎのモードに入ってしまいます。

これが「尻に火がついた状態」となるわけです。

「尻に火がつく」の由来は?

次に「尻に火がつく」の由来をみてみましょう。

「尻」は人体の後ろの方ですから、尻に火がつけば、人間はどうしても前に進みます。前に逃げ出そうとするからです。これはもともとのんびりとしていて、本当はなにかをしなければいけないのにダラダラしている人が、後ろから火が迫ってくればいやでも逃げ出す、つまり事を始める、ということを意味しています。

いつもきちんと計画的に過ごしている人は、後ろから火が迫ってくる前に自発的に動いて事を始めていますから、尻に火などつかないということで、無計画な人、目標に向かって歩み出していない人のお尻に、しばしば火がつくことがある、ということですね。

\次のページで「「尻に火がつく」の使い方・例文」を解説!/

「尻に火がつく」の使い方・例文

「尻に火がつく」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

夏休みの宿題をノートに一ページもやらずに毎日「明日、明日」と言いつつとうとう夏休みが残り一週間を切った小学生が、いよいよ尻に火がついて、せみの声を聞きながら必死に課題をこなしている様子も、夏の終わりの風物詩である。

尻に火がつかないと報告もしないし、やり始めもしないのは君の悪い癖だが、いつか設定された納期に間に合わないことになると思うから改めるべきだ。

あの人、とうとう尻に火がついたけど、頭に血が上ってしまって冷静さを失って回答もできずにいるね。

日本語学校の宿題がたまってしまって、今になって尻に火がついている

資金提供者への月々の借金返済を怠っていたら、そのうちに尻に火がついてしまいそうだ。

やはり、物事は内容を吟味して、総合的、計画的に段取りよく進め、あとで仕事がたまって苦労しないようにしないといけないようです。先に苦労するか、後で苦労するか、という選択になります。だいたい、尻に火がつくとろくなことがありません。やはり火がついてしまう前に行動を起こすのが吉、と言うものでしょう。

「尻に火がつく」の類義語は?違いは?

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「尻に火がつく」と似た意味を持つ言葉はとしては、「緊急事態」「焦眉の急」などがあります。

「緊急事態」

「緊急事態」は、事態が切迫していて猶予の時間がなく、すぐに判断や行動をしなければいけない状態です。

「尻に火がつく」は和語だけあって、のどかな感じの連想もしてしまいそうですが、緊急事態と漢語で書かれると、硬い感じがする分、切迫感が強まるように思えます。

\次のページで「「焦眉の急」」を解説!/

「焦眉の急」

「焦眉の急」は、「しょうびのきゅう」と読みます。差し迫った危険や難題が存在することを意味し、急いで対処しなければならない状態です。

「焦眉」は「眉毛が焦げる」ということで、眉毛が焦げるほどに火が近くまで迫っている状態を表しますから、「尻に火がつく」とは、火が迫ってきている方向が前と後ろで異なりますが、とてもよく似た言葉となります。火が前から来ているにせよ、後ろから来ているにせよ、逃げる方向は火とは反対の方向になりますし、急いで逃げないといけないのも同様ですね。

「尻に火がつく」の対義語は?

「尻に火がつく」は、準備が整っていないところに危険や納期が迫ってきてしまっている状態ですので、準備が整っている状態を示す語は対義語となりえます。

また、危機が寸前まで迫ってきて、火がつけば慌てふためくというのが「尻に火がつく」という慣用句の意味ですから、慌てふためかないのであれば、それは「尻に火がついた」状態とは反対の状態と言えましょう。

「準備万端」

準備をしていない状態で危機が迫ってくるから、「尻に火がついた」状態となってしまうのですから、準備が整っていれば「尻に火がつき」ません。そこで、「準備万端」(じゅんびばんたん。準備が整っていて、危機が迫ってきてもうろたえない状態)が対義語となります。

「泰然自若」

危機が迫ってきてうろたえ、慌てるのが「尻に火がついた」状態です。かりに危機が迫ってきていても平気でいるなら、それは「尻に火がつく」とは反対になります。こういった状態の人を「泰然自若」の人と言いますね。「泰然」は、安らかな心で落ち着いており、事態に動揺することがないようすを、「自若」も同じような意味を表すものです。どっしりと構えてうろたえることがないさまは、「尻に火がついた」状態とは対極にあると言えましょう。

「尻に火がつく」の英訳は?

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最後に、「尻に火がつく」を英語で表現するとどうなるのか確認しておきましょう。

「This problem is pressing.」

「This problem is pressing.」で、尻に火がついた、という意味になります。

pressing」が差し迫った状態をあらわし、「problem」が、「問題」や「難題」ですので、「This problem is pressing.」は、「この難題が差し迫った状態で存在する。」すなわち、「尻に火がついた」となります。

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「尻に火がつく」を使いこなそう

この記事では「尻に火がつく」の意味・使い方・類語などを説明しました。一見ユーモラスにさえ聞こえる言葉ですが、実際には修羅場を招きかねない状態です。やる気を出すのは尻に火がついた後、と決めている人もいるでしょうが、宿題でも仕事でもなんでも、最後に徹夜続きで仕上げるようになると、体をこわします。ですから、これは自分ではなく、他人に仕事をしてもらうときに使う言葉でしょう。そう、あなたの周りのぐうたらな誰かさんを動かすときに、ていねいに上品に、相手のお尻に火をつけるのです。そうやけどをしない程度にね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「尻に火がつく」の意味や使い方は?例文や類語を教材系ライターがわかりやすく解説!

この記事では「尻に火がつく」について解説する。

端的に言えば「尻に火がつく」の意味は「事態が切迫して時間がないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗を呼んです。一緒に「尻に火がつく」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「尻に火がつく」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「尻に火がつく」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「尻に火がつく」の意味は?

尻に火がつく」には、次のような意味があります。

事態が差し迫って、追いつめられた状態になる。

出典:goo辞書

お尻に火がついたら?それは熱くてたまりません。やけどをしてしまう状況です。あわてて逃げ出して、お尻の火を消さないといけません。

それまでのんびりしていたとしても、一気に急ぎのモードに入ってしまいます。

これが「尻に火がついた状態」となるわけです。

「尻に火がつく」の由来は?

次に「尻に火がつく」の由来をみてみましょう。

「尻」は人体の後ろの方ですから、尻に火がつけば、人間はどうしても前に進みます。前に逃げ出そうとするからです。これはもともとのんびりとしていて、本当はなにかをしなければいけないのにダラダラしている人が、後ろから火が迫ってくればいやでも逃げ出す、つまり事を始める、ということを意味しています。

いつもきちんと計画的に過ごしている人は、後ろから火が迫ってくる前に自発的に動いて事を始めていますから、尻に火などつかないということで、無計画な人、目標に向かって歩み出していない人のお尻に、しばしば火がつくことがある、ということですね。

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