ポンプって何のために使うのか?流体を流すためか?川の水はポンプなんて使わなくても流れるではないか?とは言え、川の流れは一方向にしか流れないな。海から山方向に逆流なんて不幸な災害を除き有り得ない。

ポンプを使うと、水にエネルギーに加えて好きな方向、例えば下流→上流側のように本来流れない方向にも流すことが出来る。今回はポンプの設計経験があるR175と初心者目線で解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。技術者の経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.ポンプの役割

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何もしなければ流体(液体や気体)はどんな動きをするか?川の源流は基本的に山の中、標高が高い所。そこから標高が低い方に流れ最終的に海に行き着きますね。水をはじめ流体は放っておけば勝手に低い方に流れていくもの。

流体を運びたい時、高いところから低いところなら流路を工夫して流せますが、低所→高所だと重力に逆らうことになり、そうは行きません。ポンプの役割は流体に速度や圧力といったエネルギーを加え本来流れていかない方向にも流れるようにすること。

2.エネルギーと流体の流れ

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なぜ上流から下流に流れるか?それは上流の方が位置エネルギーが大きいから。位置エネルギーは高さに比例、したがって標高が高い上流側の水は高いエネルギーを持つことになります。上流の水は高い位置エネルギーを運動エネルギーに変換して流速が生じ低い方向に向かって行くもの。

位置エネルギーじゃなくても、何かしらエネルギーを与えてやれば流れていきます。例えば、壁が斜面になっている池に石を投げ込み衝撃(エネルギー)を与えると。ばしゃーん。その衝撃で斜面の下→に水が流れていきますね。

水にエネルギーを与えると流れ(流速)を生み出すことが可能。しかし、闇雲にエネルギーを与えてもスムーズに流せません。水を上流に流すために延々とに石をバシャバシャ投げ込むわけにもいきませんね。

3.どうやって流体を動かすか?

闇雲に力を与えても動かず。かといってよいしょよいしょとバケツリレーでもするか?あまり効率的ではなさそうですね。

ポンプの原理のポイントは圧力

ポンプの原理のポイントは圧力

image by Study-Z編集部

流体を移動させる原動力は「圧力差」。圧力が高い方(エネルギー大)から低い方(エネルギー小)に流体が移動する性質があり、風が吹くのもこのため。風を構成する空気も水と同じ「流体」であり、気圧が高い方から低い方に空気が移動することで「が発生しているのです。

水も圧力が高い所と低いところを作ってやれば移動していくもので、ポンプはこの性質を利用しています。

\次のページで「4.ポンプの仕組み」を解説!/

4.ポンプの仕組み

上述のように、流体が圧力の高い方から低い方に向かう性質を利用。ポンプでは流体の圧力を上げたり下げたりして流体を移動させます

例えば、ポンプを使えば低所から高所への流体の移送も可能です。低所側の圧力を高くすれば流体は圧力が低いままの高所側に流れます。重力によって元々高所→低所に流れよとしますが、それに抗うだけの圧力を付加してやれば高所側に水を送ることが可能です。

また、自然にしてるとちょろちょろとしか流れない場合でも流路の途中にポンプを設置してエネルギーを与えることで流量を増やすことも可能。

ポンプの吸い込み機能

ポンプはまず周りから流体を集めてくる機能「吸い込み」が必要。吸い込み口にて、何らかの方法で圧力が低い状態を作り流体を集めてきます。

ポンプの吐出機能

吸い込み口で集めて流体を吐き出すのもポンプの機能。吸い込み口とは逆に圧力を高くして、流体を吐き出します。圧力を高めることでエネルギーを与えていることになり、このエネルギー運動エネルギーになって流れていくというもの。本来流れないような(下流→上流)のような方向にも流体を流すことが可能です。

ポンプの例

吸込機能吐出機能があり、流体を外に漏らさないようになっていればポンプとしての機能を果たします。ですがその機構はまちまちです。ストローでジュースを吸い上げるのも一種のポンプのようなもの。ストローで吸うことで真空状態を作ると(圧力が低い)、そこにジュース(流体)が移動してくるのです。以下、ポンプの構造例を示し基礎的な解説をします。

\次のページで「5.注射器もポンプ~容積型ポンプ~」を解説!/

5.注射器もポンプ~容積型ポンプ~

流体を吸い上げて、別のところに吐き出す注射器は容積型ポンプの往復動ポンプに該当します。

このように、空間の体積を変えることで圧力差を与えるポンプが「容積型ポンプ」です。

注射器での吸込

注射器での吸込

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吸い込み時は、シリンダ内の体積広げることで圧力を下げるボイルの法則より(温度が変わらないとしたら)体積と圧力は反比例。体積を広げることで圧力を下げられます。圧力が下がったシリンダ内には流体が移動してきますね。

注射器での吐出

注射器での吐出

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吐き出す時は、逆にシリンダ内体積狭めて圧力上げます。シリンダ内の圧力が高くなると、流体はより圧力の低いところ、つまり「外」に出ていこうとしますね。

6.渦巻型ポンプ~ターボ形ポンプ~

6.渦巻型ポンプ~ターボ形ポンプ~

image by Study-Z編集部

ポンプと言えば何となく、中にある羽根車が回転することで流体を送り出しているイメージがありますね?これらはいわゆる「ターボ形ポンプ」に分類され、羽根車の回転による遠心力を使って流体に圧力差を与える仕組み。

ここでは、渦巻き型ポンプの仕組みを例に見ましょう。羽根車が回転すると、その遠心力によって流体は外側に移動。その結果外側ほど圧力が高く、内側は低くなります。

吸込

吸込側では圧力を低くする必要があります。渦巻き型ポンプでは遠心力によって外側に集まってくるもの。その結果内側圧力が低下。そう、ここを吸込側にしてやればうまくいきますね。外側に流体を持っていかれてしまう内側には、次々と流体がやってきます。

\次のページで「吐出」を解説!/

吐出

遠心力により外側は圧力が高くなっている外側を吐出口にすればうまくいきます。圧力が高いと、流体は逃げるように圧力が低いところを探して移動していく、つまり「外」に出ていこうとしますね。

流体に圧力差を与えて運ぶ

ポンプは圧力が高い方から低い方に流体が移動するという性質を利用しています。吸い込み側では圧力を低くして流体を回収し、吐出側では圧力を高くすることで流体を押し出す。
勢いよく押し出すことで流体にエネルギーを与えられ、本来流れないような(下流→上流)方向のような流れも可能にします。
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流体力学物理理科

ポンプってどういう原理?元ポンプ設計者が初心者目線でわかりやすく解説

ポンプって何のために使うのか?流体を流すためか?川の水はポンプなんて使わなくても流れるではないか?とは言え、川の流れは一方向にしか流れないな。海から山方向に逆流なんて不幸な災害を除き有り得ない。

ポンプを使うと、水にエネルギーに加えて好きな方向、例えば下流→上流側のように本来流れない方向にも流すことが出来る。今回はポンプの設計経験があるR175と初心者目線で解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。技術者の経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.ポンプの役割

image by iStockphoto

何もしなければ流体(液体や気体)はどんな動きをするか?川の源流は基本的に山の中、標高が高い所。そこから標高が低い方に流れ最終的に海に行き着きますね。水をはじめ流体は放っておけば勝手に低い方に流れていくもの。

流体を運びたい時、高いところから低いところなら流路を工夫して流せますが、低所→高所だと重力に逆らうことになり、そうは行きません。ポンプの役割は流体に速度や圧力といったエネルギーを加え本来流れていかない方向にも流れるようにすること。

2.エネルギーと流体の流れ

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なぜ上流から下流に流れるか?それは上流の方が位置エネルギーが大きいから。位置エネルギーは高さに比例、したがって標高が高い上流側の水は高いエネルギーを持つことになります。上流の水は高い位置エネルギーを運動エネルギーに変換して流速が生じ低い方向に向かって行くもの。

位置エネルギーじゃなくても、何かしらエネルギーを与えてやれば流れていきます。例えば、壁が斜面になっている池に石を投げ込み衝撃(エネルギー)を与えると。ばしゃーん。その衝撃で斜面の下→に水が流れていきますね。

水にエネルギーを与えると流れ(流速)を生み出すことが可能。しかし、闇雲にエネルギーを与えてもスムーズに流せません。水を上流に流すために延々とに石をバシャバシャ投げ込むわけにもいきませんね。

3.どうやって流体を動かすか?

闇雲に力を与えても動かず。かといってよいしょよいしょとバケツリレーでもするか?あまり効率的ではなさそうですね。

ポンプの原理のポイントは圧力

ポンプの原理のポイントは圧力

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流体を移動させる原動力は「圧力差」。圧力が高い方(エネルギー大)から低い方(エネルギー小)に流体が移動する性質があり、風が吹くのもこのため。風を構成する空気も水と同じ「流体」であり、気圧が高い方から低い方に空気が移動することで「が発生しているのです。

水も圧力が高い所と低いところを作ってやれば移動していくもので、ポンプはこの性質を利用しています。

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