この記事では「意馬心猿」について解説する。

端的に言えば意馬心猿の意味は「心が混乱して落ち着かないようす」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「意馬心猿」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「意馬心猿」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「意馬心猿」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「いばしんえん」です。さまざまな観点から「意馬心猿」をチェックしていきますよ。

「意馬心猿」の意味は?

「意馬心猿」には、次のような意味があります。ここでは、現在使われている意味合いについて確認していきますよ。

1.心が煩悩や欲情などに乱されて落ち着かないこと。また、そういう心を抑制できないこと。

出典:四字熟語辞典(学研)

漢字を見ていくと、「意」は心のことなので馬のような心と猿のような心ということです。そこから、「走り回る馬のような心」と「落ち着きのない猿のような心」という意味になっています。

動物のようであるというのは本能のままであり、自分をコントロールできていないということです。人間でいうところの煩悩や欲情などを抑えきれずに落ち着かない気持ちであることにつながりますね。意味としては、落ち着かないことのほか、欲や心の乱れを抑えきれないようすを表します。

「意馬心猿」の語源は?

次に「意馬心猿」の語源を確認しておきましょう。

中国の唐の時代に作成された「参同契(さんどうかい)」という禅の詩に記述があります。そこには「如し其れ心猿定まらず、意馬四馳すれば、則ち神気外に散乱す」と「意馬心猿」が二字ずつに分かれて記載されているそうです。今でも、仏教の曹洞宗において読誦する経典の一つになっています。

また、中国の明の時代の「伝習録」にも登場しますよ。「伝習録」は儒学や陽明学の入門書であり、王陽明の言行を弟子が書物として残したものです。ここには、「初学時、心猿意馬、栓縛不定」とあり、初学のうちは心が不安定でつなぎとめることはできないという意味で書かれています。

\次のページで「「意馬心猿」の使い方・例文」を解説!/

「意馬心猿」の使い方・例文

「意馬心猿」の使い方を例文を使って見ていきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。意味だけでなく、文法的な使い方にも注目してみましょう。

1.金策に奔走しているところなので、欲望だの意馬心猿だのとは縁のない生活だ。
2.あなたはお姉ちゃんなのだから、意馬心猿ではなく周りに配慮して行動したほうがいい。

意味としては、いずれの例文も煩悩を抑えられないようすを表しています。例文1.ではお金に困っている状況なので欲望など言っていられる状況ではないということ、例文2.は姉という立場から欲を抑えて自分をコントロールしたほうがいいということです。

基本的には、「意馬心猿の…」「意馬心猿で…」などの形で、名詞のカタマリとして使われることが多くなっていますよ。

「意馬心猿」の類義語は?違いは?

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それでは、「意馬心猿」の類義語についての説明です。「意馬心猿」は動物のように落ち着きがないとのことなので、考えのない言動が類義語となりますよ。

「軽率短慮」

「意馬心猿」の類義語には、「軽率短慮(けいそつたんりょ)」があります。意味は、よく考えないで軽はずみに物事を決めたり落ち着きのないことです。「軽率」は物事の善悪や成否をよく考えずに来たり行動したりすること、「短慮」は慎重さや思慮に欠けることを表しています。

「意馬心猿」は馬や猿のようにということなので、思慮に欠けるという「軽率短慮」は類義語になりますね。また、「短慮軽率」として二字ずつを逆にした表現としても使われます。

\次のページで「「心慌意乱」」を解説!/

「心慌意乱」

もう一つの類義語には、「心慌意乱(しんこういらん)」があります。慌てて心が乱れなにがなんだかわからなくなってしまう状態という意味です。「心慌」はあせりあわてること、「意乱」は心が入り乱れて混乱することを表しています。なお、訓読すると「心慌ただしく意乱れる」です。

使い方としては、「心慌意乱の…」「心慌意乱になる」など名詞のカタマリとして使うことが多くなっていますよ。

「意馬心猿」の対義語は?

次は、「意馬心猿」の対義語についての説明をしていきます。心が乱れ落ち着きがないという意味合いの対義語なので、落ち着いているという意味合いの表現を詳しく見ていきましょう。

「明鏡止水」

「意馬心猿」の対義語には、「明鏡止水(めいきょうしすい)」があります。意味のほうは、邪念がなく心が澄み切っていて落ち着いた心のことです。「明鏡」は澄んでいて曇りのない鏡のこと、「止水」は止まっているように見えるほどの静かな水のことを表しています。

意味合いとしては、心を乱すようなことがあろうとも何事もなかったかのようにというニュアンスも含まれていますよ。なお、「明鏡止水の心境」というように、心持ちを伝えるときに使われる四字熟語です。

「虚心坦懐」

対義語には、もう一つ「虚心坦懐(きょしんたんかい)」があります。心にわだかまりがなく気持ちが素直でさっぱりしていることという意味です。「虚心」は先入観やわだかまりがなくありのまま素直に受け入れられる心の状態のこと、「坦懐」はわだかまりなく穏やかでさっぱりしている心境のことを表しています。

なお、「虚心坦懐に意見の交換をする」など、これから何らかの物事に臨むときに使われることが多くなっていますよ。

「意馬心猿」の英訳は?

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最後に、「意馬心猿」の英訳についての説明です。「意馬心猿」の心が乱れているようすを英語で表現することができますよ。一緒に詳しく見ていきましょう。

「passions hard of control」

「意馬心猿」の英訳には、「passions hard of control」があります。意味としては「煩悩を制御するのは難しい」ということです。「passion」は情熱と肯定的な意味を表すこともありますが、「passions」とすると心に抑えきれない欲望などを表すことが多くなっています。

ほかには、「uncntrolable passions」という表し方もありますが、意味は全く同じものです。

\次のページで「「意馬心猿」を使いこなそう」を解説!/

「意馬心猿」を使いこなそう

今回の記事では「意馬心猿」の意味・使い方・類語などを説明しました。

意味の基本は、動物のように心をコントロールできていないようすでした。類義語や対義語では、「虚心坦懐」が物事に臨むときに使われるように、意味は近くても場面によって使わけるといい表現もありますよ。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「意馬心猿」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「意馬心猿」について解説する。

端的に言えば意馬心猿の意味は「心が混乱して落ち着かないようす」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「意馬心猿」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「意馬心猿」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「意馬心猿」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「いばしんえん」です。さまざまな観点から「意馬心猿」をチェックしていきますよ。

「意馬心猿」の意味は?

「意馬心猿」には、次のような意味があります。ここでは、現在使われている意味合いについて確認していきますよ。

1.心が煩悩や欲情などに乱されて落ち着かないこと。また、そういう心を抑制できないこと。

出典:四字熟語辞典(学研)

漢字を見ていくと、「意」は心のことなので馬のような心と猿のような心ということです。そこから、「走り回る馬のような心」と「落ち着きのない猿のような心」という意味になっています。

動物のようであるというのは本能のままであり、自分をコントロールできていないということです。人間でいうところの煩悩や欲情などを抑えきれずに落ち着かない気持ちであることにつながりますね。意味としては、落ち着かないことのほか、欲や心の乱れを抑えきれないようすを表します。

「意馬心猿」の語源は?

次に「意馬心猿」の語源を確認しておきましょう。

中国の唐の時代に作成された「参同契(さんどうかい)」という禅の詩に記述があります。そこには「如し其れ心猿定まらず、意馬四馳すれば、則ち神気外に散乱す」と「意馬心猿」が二字ずつに分かれて記載されているそうです。今でも、仏教の曹洞宗において読誦する経典の一つになっています。

また、中国の明の時代の「伝習録」にも登場しますよ。「伝習録」は儒学や陽明学の入門書であり、王陽明の言行を弟子が書物として残したものです。ここには、「初学時、心猿意馬、栓縛不定」とあり、初学のうちは心が不安定でつなぎとめることはできないという意味で書かれています。

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