Bateson, William – Mendel’s Principles of Heredity: A Defence, パブリック・ドメイン, リンクによる
メンデルよりも前の時代。人々は農作物の栽培や畜産の経験から、「子が親に似ること」「子が親の形質を受け継ぐことが多いこと」をなんとなく知っていました。大きな実をつける株をかけ合わせれば、その子どもも大きな実をつける…というような品種改良も、自然に行われています。
しかしその仕組みは、例えるならば2種類の液体を混ぜるように、両親の性質が混ざり合って子に伝わると考えられていたのです。
仮に遺伝情報の本体が液体のようなものであるとするならば、一度混ざり合った情報がはっきりと分かれて出現するのは不自然。メンデルの導き出した独立の法則や分離の法則は成り立たないでしょう。メンデルが「粒子のようなもの」を想定したのは、とても画期的なことでした。
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のちの世で、メンデルの考えた「粒子のようなもの」はのちに遺伝子と呼ばれるようになり、それが「粒子」ではなく、DNAという高分子の一部であるということが解明されます。
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メンデルの実験
メンデルは修道院の庭に生えていたエンドウマメを実験に使い、メンデルの法則を導き出しました。実験が行われたのは1856年から1863年の間です。
遺伝という現象を解明するため、メンデルはエンドウマメの7つの形質に注目し、それぞれの形質をもった純系の株をつくりました。
純系とは、「自家受粉を繰り返すことで遺伝的に均質な状態になった系統」です。純系の個体を交雑させ、その子どもに現れる形質を比較することで、メンデルは前述の3つの法則を見つけました。
では、例をあげましょう。
メンデルが実験に使用したエンドウマメは、花の色が2種類ありました。紫色のものと白色のものです。
その辺に生えている紫色の花をつけるエンドウマメ(以下、[紫])を2株とってきて受粉させると、その子どもはすべて[紫]になる…と思いきや、白い花をつけるエンドウマメ(以下、[白])が生まれることがあります。これは、それぞれの[紫]が2つもっている“花の色を決める遺伝子”のうち、1つが[白]にする遺伝子だったためです。
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