この記事では「鼓腹撃壌」について解説する。

端的に言えば鼓腹撃壌の意味は「天下泰平で、人々が平和で安楽な暮らしをしていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「鼓腹撃壌」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「鼓腹撃壌」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「鼓腹撃壌」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「こふくげきじょう」です。意味だけでなく語源や使い方もチェックすることで理解が深まりますよ。

「鼓腹撃壌」の意味は?

「鼓腹撃壌」には、次のような意味があります。漢字をひとつひとつ見ていくと、なんだか激しそうな意味合いに思えるかもしれませんが、意味と関連する表現になっていますよ。

1.天下泰平で、人々が平和で安楽な暮らしを楽しんでいることのたとえ。

出典:四字熟語辞典(学研)

「鼓腹撃壌」は「腹を鼓(こ)し壌(つち)を撃つ」と読み下すことができ、「鼓腹」は腹つづみをポコポコと打つこと、「撃壌」は地面を足で踏みならして拍子をとることを表しています。このようすは、平和な世の中を楽しんでいるようすです。

世の中が平和であり善政が行われていることについて、それを楽しむようすを表す語句によって表現されている四字熟語になっています。

「鼓腹撃壌」の語源は?

次に「鼓腹撃壌」の語源を確認しておきましょう。中国の南宋の時代にまとめられた「十八史略(じゅうはっしりゃく)」という歴史読本に「鼓腹撃壌」の話が収録されています。

中国神話に登場する君主「堯(ぎょう)」は徳が高く聡明であると評判でした。誰に聞いても帝は素晴らしいということでしたが、とある一老人の言葉は少し違いました。「日が昇れば仕事をし、日が沈んだら休む。井戸を掘っては水を飲み、畑を耕しては食事をする。帝の力なぞどうして私に関わりがあろうか、いやない。」ということ。一見帝に否定的なようにも聞こえますが、堯は「自らの政治が国民に自分を意識させることなく、国民が豊な生活を営んでいる。」と理解をしたとされています。

その老人が話すようすが「腹つづみをうち、大地を足で踏みをしながら」であったことが、「鼓腹撃壌」という四字熟語のもととなったということです。

\次のページで「「鼓腹撃壌」の使い方・例文」を解説!/

「鼓腹撃壌」の使い方・例文

「鼓腹撃壌」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.現代の日本は戦争もなく使えるものを捨てる時代なので、鼓腹撃壌と言えるのかもしれない。
2.戦乱が絶えない中国の三国時代は朝廷でさえ脅かされ、鼓腹撃壌とはほど遠く人民は不安の中で暮らしていた。

意味については、いずれの例文も基本の意味の通り使われています。1.は戦争がなくモノが余っている世の中を「鼓腹撃壌」と言っており、2.は戦乱が絶えない世の中を「鼓腹撃壌」と言っていますね。

使い方としては、それぞれ「鼓腹撃壌と言える」「鼓腹撃壌とは」ということで名詞のカタマリとして使われています

「鼓腹撃壌」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

それでは、「鼓腹撃壌」の類義語についての説明です。意味が近い四字熟語を紹介していきますが、それぞれの持つニュアンスにも注目して見ていきましょう。

「尭風舜雨」

「鼓腹撃壌」の類義語には、「尭風舜雨(ぎょうふうしゅんう)」があります。意味は、天下泰平の世の中であることです。「堯」は「鼓腹撃壌」の語源に登場した君主であり、「舜」はその弟で兄とともに聖天子として崇められました。その「堯」と「舜」の善政による恵みが雨や風のように自然と与えられているようすを表しています

ほかに、「堯年舜日(ぎょうねんしゅんじつ)」という四字熟語ともあり、同じく天下泰平の世のことです。「堯」と「舜」が治めていた年月のように世の中が安泰であるということに由来します。

\次のページで「「安寧秩序」」を解説!/

「安寧秩序」

類義語には、もう一つ「安寧秩序(あんねいちつじょ)」があります。国や社会が乱れることなく平穏無事であることという意味です。「安寧」は世の中が安らかで不安のないこと、「秩序」は規律が正しく守られている状態のことを表しています。

意味としては、天下泰平の世であることのほか、秩序立っていることも意味に含まれているのがポイントです。そのため、秩序の乱れがあった時期やそのあとなどの時代によく使われる表現になっています。

「鼓腹撃壌」の対義語は?

次に、「鼓腹撃壌」の対義語についての説明です。「鼓腹撃壌」が天下泰平の世のことなので、世が乱れているのが対義語になります。それぞれの対義語の特徴を確認しましょう。

「末法末世」

「鼓腹撃壌」の対義語に、「末法末世(まっぽうまっせ)」がありますよ。意味のほうは、仏教が衰えて道徳が乱れた末の世のことです。「末法」とは悟りに入る人がいない時期のこと、「末世」は仏法のすれた世のことを表しています。

もとは仏教用語である「末法末世」は、釈迦の死から時間が遠く隔たることで釈迦の仏教の効力を失ってしまう時期のことです。しかし、仏教だけではなく一般に通じる表現ですよ。

「下陵上替」

もう一つの対義語には、「下陵上替(かりょうじょうたい)」があります。世の中が大いに乱れていて、下剋上が行われている世のことです。「陵」はしのぐこと、「替」が衰えることであり、「下陵ぎ、上替る(しもしのぎ、かみすたる)」と訓読します。

下剋上ということなので秩序が乱れているということでもあり、とても安心して暮らせる状態ではないことがわかりますね。

「鼓腹撃壌」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に、「鼓腹撃壌」の英訳についての説明です。意味の中心となる部分をとらえた英訳があるので、一緒に見ていきましょう。

「enjoyment of peace」

「鼓腹撃壌」の英訳には、「enjoyment of peace」があり、直訳すると「平和に恵まれていること」で、「鼓腹撃壌」の意味の重要な部分を表現することができる英訳です。

他の表現としては、「enjoyment of the blessings」もあり、これを直訳すると「天恵に恵まれていること」で、平和であることのほかに帝や君主によって太平の世になっているというニュアンスが含まれます。ただ、特別に「天恵」という意味を含める必要がなければ、より一般的な単語である「peace」のほうがいいかもしれませんね。

\次のページで「「鼓腹撃壌」を使いこなそう」を解説!/

「鼓腹撃壌」を使いこなそう

今回の記事では「鼓腹撃壌」の意味・使い方・類語などを説明しました。

意味は「人々が平和な暮らしを楽しんでいること」ですが、「鼓腹撃壌」は実際に人民が楽しんでいるようすそのものが四字熟語になったものです。食べ物にも満たされていて腹鼓をうちながら大地を踏みならすようすを見ると、確かに平和なようすを思い浮かべますね。

" /> 【四字熟語】「鼓腹撃壌」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【四字熟語】「鼓腹撃壌」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「鼓腹撃壌」について解説する。

端的に言えば鼓腹撃壌の意味は「天下泰平で、人々が平和で安楽な暮らしをしていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「鼓腹撃壌」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「鼓腹撃壌」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「鼓腹撃壌」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「こふくげきじょう」です。意味だけでなく語源や使い方もチェックすることで理解が深まりますよ。

「鼓腹撃壌」の意味は?

「鼓腹撃壌」には、次のような意味があります。漢字をひとつひとつ見ていくと、なんだか激しそうな意味合いに思えるかもしれませんが、意味と関連する表現になっていますよ。

1.天下泰平で、人々が平和で安楽な暮らしを楽しんでいることのたとえ。

出典:四字熟語辞典(学研)

「鼓腹撃壌」は「腹を鼓(こ)し壌(つち)を撃つ」と読み下すことができ、「鼓腹」は腹つづみをポコポコと打つこと、「撃壌」は地面を足で踏みならして拍子をとることを表しています。このようすは、平和な世の中を楽しんでいるようすです。

世の中が平和であり善政が行われていることについて、それを楽しむようすを表す語句によって表現されている四字熟語になっています。

「鼓腹撃壌」の語源は?

次に「鼓腹撃壌」の語源を確認しておきましょう。中国の南宋の時代にまとめられた「十八史略(じゅうはっしりゃく)」という歴史読本に「鼓腹撃壌」の話が収録されています。

中国神話に登場する君主「堯(ぎょう)」は徳が高く聡明であると評判でした。誰に聞いても帝は素晴らしいということでしたが、とある一老人の言葉は少し違いました。「日が昇れば仕事をし、日が沈んだら休む。井戸を掘っては水を飲み、畑を耕しては食事をする。帝の力なぞどうして私に関わりがあろうか、いやない。」ということ。一見帝に否定的なようにも聞こえますが、堯は「自らの政治が国民に自分を意識させることなく、国民が豊な生活を営んでいる。」と理解をしたとされています。

その老人が話すようすが「腹つづみをうち、大地を足で踏みをしながら」であったことが、「鼓腹撃壌」という四字熟語のもととなったということです。

\次のページで「「鼓腹撃壌」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: