この記事では「一宿一飯」について解説する。

端的に言えば一宿一飯の意味は「小さな恩義も大事にすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「一宿一飯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「一宿一飯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一宿一飯(いっしゅくいっぱん)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一宿一飯」の意味は?

「一宿一飯」には、次のような意味があります。

ちょっとした世話になること。また、ちょっとした恩義でも忘れてはいけないという戒めの語。旅先などで、一晩泊めてもらったり一度食事を恵まれたりする意から。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「一宿一飯」

「一宿一飯」とは「一宿」と「一飯」の二つの語句を組み合わせたもので、「一宿」は出先や旅先で一夜泊めてもらうことを指し、「一飯」は一回食事をご馳走(ごちそう)になることを指しています。

これらを組み合わせた「一宿一飯」は、他人の世話になることや小さな恩も忘れてはいけない、という意味を持つ四字熟語です。

なお、ここでは「宿泊させてもらうこと」や「食事をふるまわれること」自体は大したことではなく、ちょっとしたこととして扱われていることに注意しましょう。

しかしそんな「ささいな恩義」も忘れず大事にする、というのが「一宿一飯」です。

「一宿一飯」の語源は?

次に「一宿一飯」の語源を確認しておきましょう。「一宿一飯」はもともと、博徒(ばくと)が用いた語句だと言われています。

博徒とは博打(ばくち)を打つ者のこと。いわゆるギャンブルで生計を立てていた人のことです。彼らは日々賭場で金銭を賭けて博打をし、生活をしていました。

ギャンブルのため、もちろん生活は安定しません。博徒の中には家を持たないものも多かったそうです。

そんな彼らは賭場から賭場を渡り歩くことも多く、旅先で止めてもらったり、食事を振る舞われたりと人の世話になることも多くありました。

そして昔の博徒はこのような恩義を受けると、生涯の恩義として大事にしたと言われています。これが「一宿一飯」の由来です。

\次のページで「「一宿一飯」の使い方・例文」を解説!/

「一宿一飯」の使い方・例文

「一宿一飯」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.あの友人には以前終電を逃してしまった際に世話になったため、一宿一飯の恩がある。
2.一宿一飯の恩も返せていないのに、ただ見ていることなどできません。
3.先生には昔、何度も泊めてもらってはよく面倒を見てもらった。一宿一飯の恩義では到底足りないほどだ。

例文を見ると分かりますが、基本的に「一宿一飯」は「恩義(恩)」と組み合わせて「一宿一飯の恩義(恩)」という形で使われます。

また、「一宿一飯」は比喩的表現よりも、実際に宿を借り食事を提供された状況で用いられることが多いのも特徴です。前後の文脈や様子も踏まえ、状況を的確に読み取るようにしましょう。

「一宿一飯」の類義語は?違いは?

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「一宿一飯」とは恩を大事に忘れないことです。このような意味を持つ類義語をいくつか見ていきましょう。

「一飯之恩」

「一飯之恩」は「いっぱんのおん」と読みます。文字通り、一回の食事をご馳走になっただけの少しだけの恩義という意味で、同時にそのような小さな恩義も忘れてはいけないことを指す言葉です。

そのため「一宿一飯」とはほぼ同義の類義語と言えます。他にも「一飯之報(いっぱんのむくい)」という語句がありますが、こちらもほぼ同様の意味です。

また、「一飯千金(いっぱんせんきん)」という語句も存在します。これは「たった一膳の食事という恵みでも、千金ほどの価値がある」という由来で、わずかな恵みにも厚く恩義を返すことを指す四字熟語です。「一飯千金」の場合は恩を返すことも意味に含まれている点で「一宿一飯」とは異なりますが、これも類義語のひとつと言えるでしょう。

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「飲水思源」

「飲水思源」は「いんすいしげん」と読み、他人から受けた恩を忘れてはいけないという意味を持つ四字熟語です。

もともとは、水を飲むときにはその源(水源)に思いを巡らせる、という様子からきたもので、物事の基本を忘れないという戒めの意味を持ちます。またそこから、井戸を掘った人(=水源を作った人)の苦労も忘れてはいけない、という解釈が生まれたことで、受けた恩を忘れないという意味も持つようになりました。

恩を忘れないという点で、「一宿一飯」の類義語と言えるでしょう。

「一宿一飯」の対義語は?

「一宿一飯」が小さな恩を忘れないという意味ならば、恩をあだで返すことや恩自体を忘れることは対義語となります。

「忘恩負義」

「忘恩負義」とは「ぼうおんふぎ」と読む四字熟語で、「負」は背く(そむく)ことを指します。

恩義を忘れて義理に背く。つまり恩をあだで返すことや裏切ることをを表しており、恩義を大事にする「一宿一飯」とは反対の意味を持つ対義語となります。

「得魚忘筌」

「得魚忘筌」は「とくぎょぼうせん」と読む四字熟語です。「筌(うけ)」は竹かごのようなもので、水中に沈めて魚を捕まえる際に使われる道具を指します。

魚を捕ってしまえばそれに役立った道具の筌のことなど忘れてしまうという由来から、目的を達するとそれまでに役立ったものの恩恵も忘れてしまう、というのが「得魚忘筌」です。

これも恩を大事にせず忘れてしまうことから、「一宿一飯」の対義語のひとつとなります。

「一宿一飯」の英訳は?

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「一宿一飯」を英語ではどう表現するのかも確認しておきましょう。内容によって複数の英語表現があるのでそれぞれご紹介します。

「a night’s lodging and a meal」

「lodging」は「宿泊」、「meal」は食事を意味する英単語です。そのため、「a night’s lodging and a meal」は直訳で「一晩の宿泊と食事」となり、「一宿一飯」そのものを表します。

ただしここはあくまで「一宿一飯」そのものを指しているため、「恩義」までは含まれていないので注意するようにしましょう。

なお、「and」でつないでいるため「a meal and a night’s lodging」の順になっても構いません

\次のページで「「the obligation incurred through accepting hospitality」」を解説!/

「the obligation incurred through accepting hospitality」

「the obligation incurred through accepting hospitality」「一宿一飯の恩義」の英語表現です。

「obligation」は義務を表し、「accepting hospitality」はおもてなしを受けることを表しています。そのためこのまま英語を直訳すると「おもてなしを受けたことで生じた義務(恩義)」となるでしょう。

「一宿一飯」が受けた恩を忘れないという意味のため、意訳ではほぼ同義になります。ですので、ただの一宿一飯ではなく恩義があることを強調したい際にはこの英語表現を用いるのもおすすめです。

「一宿一飯」を使いこなそう

この記事では「一宿一飯」の意味・使い方・類語などを説明しました。よく使われる単語なので知っている方も多かったとは思いますが、その由来までは知らない方も多かったのではないでしょうか。

現在の世の中は昔に比べとても便利になり、自分の力でできることも格段に増えたでしょう。ですがそれでも、生活の中で他人の力を借りたり誰かに助けてもらう必要があります。

「一宿一飯の恩」という言葉が現代でも多く使われること、それは人と人とが助け合って生きていくこと、そしてその恩義を忘れてはならないという教訓が、いつの時代でも変わらないことを表しているのかもしれません。

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【四字熟語】「一宿一飯」の意味や使い方は?例文や類語を元広告会社勤務ライターがわかりやすく解説!

この記事では「一宿一飯」について解説する。

端的に言えば一宿一飯の意味は「小さな恩義も大事にすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「一宿一飯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「一宿一飯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一宿一飯(いっしゅくいっぱん)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一宿一飯」の意味は?

「一宿一飯」には、次のような意味があります。

ちょっとした世話になること。また、ちょっとした恩義でも忘れてはいけないという戒めの語。旅先などで、一晩泊めてもらったり一度食事を恵まれたりする意から。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「一宿一飯」

「一宿一飯」とは「一宿」と「一飯」の二つの語句を組み合わせたもので、「一宿」は出先や旅先で一夜泊めてもらうことを指し、「一飯」は一回食事をご馳走(ごちそう)になることを指しています。

これらを組み合わせた「一宿一飯」は、他人の世話になることや小さな恩も忘れてはいけない、という意味を持つ四字熟語です。

なお、ここでは「宿泊させてもらうこと」や「食事をふるまわれること」自体は大したことではなく、ちょっとしたこととして扱われていることに注意しましょう。

しかしそんな「ささいな恩義」も忘れず大事にする、というのが「一宿一飯」です。

「一宿一飯」の語源は?

次に「一宿一飯」の語源を確認しておきましょう。「一宿一飯」はもともと、博徒(ばくと)が用いた語句だと言われています。

博徒とは博打(ばくち)を打つ者のこと。いわゆるギャンブルで生計を立てていた人のことです。彼らは日々賭場で金銭を賭けて博打をし、生活をしていました。

ギャンブルのため、もちろん生活は安定しません。博徒の中には家を持たないものも多かったそうです。

そんな彼らは賭場から賭場を渡り歩くことも多く、旅先で止めてもらったり、食事を振る舞われたりと人の世話になることも多くありました。

そして昔の博徒はこのような恩義を受けると、生涯の恩義として大事にしたと言われています。これが「一宿一飯」の由来です。

\次のページで「「一宿一飯」の使い方・例文」を解説!/

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