この記事では「安心立命」について解説する。

端的に言えば安心立命の意味は「身を天命にまかせ、どんな時も動揺しないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「安心立命」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「安心立命」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「安心立命」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「あんしんりつめい」と読むほか、仏教語としては「あんじんりゅうめい」「あんじんりゅうみょう」などと読むことがあります。

「安心立命」の意味は?

「安心立命」には、次のような意味があります。由来は古くなっていますが、まずは現在の意味を正しく知っておきましょう。

1.心を安らかにして身を天命にまかせ、どんなときにも動揺しないこと。人力のすべてを尽くして身を天命にまかせ、いかなるときも他のものに心を動かさないこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)

中心となる意味は「動揺しないこと」ですが、どういう心持ちによって「動揺しないこと」につながっていくのかというところに「安心立命」の特徴があります。

やるべきことをやることによって将来がどのようになっても受け入れられるよう心の準備をしておくこと、これによって動揺しない心が生まれるということです。どのようにして動揺しない心に至るのかというところまで含む四字熟語になっています。

「安心立命」の語源は?

次に「安心立命」の語源を確認しておきましょう。「安心」は仏教を信じることにより悟りに近い心を得ることであり、煩悩を離れて心安らかになることです。「立命」は身を天にまかせ利益や名声などのあらゆることに心を動かさないことを意味しています。

もともとは儒教の用語でしたが、仏教のとくに禅宗でも用いるようになりました。仏教では、信仰によって心安らかになるという意味合いで使われます。なお、禅宗の歴史書である「景徳傳燈録(けいとくでんとうろく)」に記述が残っているとされていますよ。

\次のページで「「安心立命」の使い方・例文」を解説!/

「安心立命」の使い方・例文

「安心立命」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。意味合いのほか、使い方の特徴を文法的な観点からも確認していきますよ。

1.その道の達人や研究者など何事かに向き合う人たちは、安心立命の境地に至ることが多い。
2.安心立命するためには、やるべきことをやるだけでなく知識や教養を身につけることも大切だ。

意味合いとしては、例文の1.も2.も基本的な意味の通りになっています。ただ、いずれも宗教的な意味ではなく、やるべきことをやることにより動じない気持ちになるということを表していますよ。

使い方については、例文1.は「安心立命の…」と名詞として使われており、例文2.では「安心立命する…」と動詞化した表現として使われています。文脈に合わせた形で使うといいですね。

「安心立命」の類義語は?違いは?

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それでは、「安心立命」の類義語についての説明です。「安心立命」の意味の中心である「動揺しない」という部分と近い意味を持つ類義語を見ていきましょう。

「泰然自若」

「安心立命」の類義語には、「泰然自若(たいぜんじじゃく)」があります。意味のほうは、落ち着いていてどんなことにも動じないことです。「泰然」は落ち着いていて物事に動じないこと、「自若」はどんなことにも慌てず驚かず落ち着いているようすを表しています。

使い方としては、「泰然自若として…」と表現されることが多く、その他には、三島由紀夫の作品で「泰然自若たるものね」という表現もされていますよ。

\次のページで「「余裕綽綽」」を解説!/

「余裕綽綽」

もう一つの類義語には、「余裕綽綽(よゆうしゃくしゃく)」があります。ゆったりとして焦らず落ち着き払ったようすという意味です。「余裕」は焦らずゆったりしていてゆとりのあること、「綽綽」は落ち着いていてこせこせしていないようすを表しています。

もとは「孟子」に由来する言葉ですが、現在の日本で使われる表現としては全く宗教色はなく、広く使われている表現です。

「安心立命」の対義語は?

次に、「安心立命」の対義語についての説明です。動揺しないという意味合いの「安心立命」ですから、対義語としては「動揺しているようす」を表す表現になりますよ。

「右往左往」

「安心立命」の対義語には、「右往左往」があります。意味は、混乱してうろたえ右に行ったり左に行ったりすることです。「往」が「行く」という意味から右に行ったり左に行ったりということですが、どうしたらよいかわからずうろたえているようすとしてとらえています。

多くの場合は、「右往左往する」と動詞化した表現で使われますよ。意味が右に行ったり左に行ったりという動作を表しているので、動詞化した表現であってもまったく違和感がありませんね。

「周章狼狽」

対義語には、もう一つ「周章狼狽(しゅうしょうろうばい)」があります。驚き慌ててひどくうろたえることという意味です。「周章」も「狼狽」もともに慌てふためくことを意味しており、重ねて強調した意味になっています。

こちらも、「右往左往」と同じく「周章狼狽する」という動詞化した表現で使われることが多くなっていますよ。「安心立命」は動じないという意味なので動きをイメージしませんが、対義語は「動じる」ので動きのイメージにつながることもその原因かもしれませんね。

「安心立命」の英訳は?

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最後に、「安心立命」の英訳についての説明です。「安心立命」の意味の中心である「動揺しない」ということをさまざまな表現で表しています。

「spiritual peace」

「安心立命」の英訳には、「spiritual peace」があります。直訳すると「精神的な平穏」といったところです。慌てたり動揺したりしないことを「平穏」という言葉で言い換えていますね。

ほかには、「true philosophy」とすると「本当の冷静さ、真の悟り」という意味でとらえることができます。動じないようすや煩悩から離れているようすがイメージできる表現です。

\次のページで「「安心立命」を使いこなそう」を解説!/

「安心立命」を使いこなそう

今回の記事では「安心立命」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「安心立命」は儒教や仏教がもとになっている言葉なので、信仰によって煩悩から離れることで動揺しないことにつながっていきます。今では特定の信仰をしていなくても、やるべきことをやり身を天命にまかせる気持ちで動じないようにすることを表すことも多くなっていますよ

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【四字熟語】「安心立命」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「安心立命」について解説する。

端的に言えば安心立命の意味は「身を天命にまかせ、どんな時も動揺しないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「安心立命」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「安心立命」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「安心立命」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「あんしんりつめい」と読むほか、仏教語としては「あんじんりゅうめい」「あんじんりゅうみょう」などと読むことがあります。

「安心立命」の意味は?

「安心立命」には、次のような意味があります。由来は古くなっていますが、まずは現在の意味を正しく知っておきましょう。

1.心を安らかにして身を天命にまかせ、どんなときにも動揺しないこと。人力のすべてを尽くして身を天命にまかせ、いかなるときも他のものに心を動かさないこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)

中心となる意味は「動揺しないこと」ですが、どういう心持ちによって「動揺しないこと」につながっていくのかというところに「安心立命」の特徴があります。

やるべきことをやることによって将来がどのようになっても受け入れられるよう心の準備をしておくこと、これによって動揺しない心が生まれるということです。どのようにして動揺しない心に至るのかというところまで含む四字熟語になっています。

「安心立命」の語源は?

次に「安心立命」の語源を確認しておきましょう。「安心」は仏教を信じることにより悟りに近い心を得ることであり、煩悩を離れて心安らかになることです。「立命」は身を天にまかせ利益や名声などのあらゆることに心を動かさないことを意味しています。

もともとは儒教の用語でしたが、仏教のとくに禅宗でも用いるようになりました。仏教では、信仰によって心安らかになるという意味合いで使われます。なお、禅宗の歴史書である「景徳傳燈録(けいとくでんとうろく)」に記述が残っているとされていますよ。

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