この記事では「一目(いちもく)置く」という慣用句について解説する。

端的に言えば「一目置く」の意味は「敬意を払う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「一目置く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「一目置く」の意味や語源・使い方のまとめ

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それでは早速「一目置く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一目置く」の意味は?

「一目置く」には、次のような意味があります。

自分より優れていることを認めて敬意を払う。一歩譲る。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「一目置く」

「一目置く」の「一目」とは、いったい何を意味しているのでしょうか。これは、囲碁にその由来があります。

「目」とは、碁石を置くことのできる場所、つまり碁盤の目のことを表した言葉です。盤上の縦線と横線の交わった場所がこれにあたります。

囲碁の世界では、実力の劣る側が最初に一つ碁石を置いて対戦することがあるそうです。いわゆるハンデを付けて対戦していると理解してください。

そんなわけで、「一目置く」とは自分の方が相手よりも実力が劣っていることを認め敬意を払っている様子を表しているのです。

「一目置く」の使い方・例文

「一目置く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「一目置く」の類義語は?違いは?」を解説!/

自分よりも速いサーブを打てる相手選手を見ると、悔しいけれど一目置かざるをえない

高校の頃から各大会で優勝してきたA君は、クイズ研究会の先輩からも一目置かれている。

同期の健太はお客様からの信頼も厚く、部長からも一目置かれる存在で正直言ってうらやましい。

「一目置く」を用いるときに気をつけてほしいポイントがひとつあります。それは、この表現を使う相手が自分(たち)と同等か目下でなければならないということです。

通常、この慣用句は自分よりも格上の相手に対しては使いません。同等か目下だと思っていたのに殊の外優れていたので、それを認めて敬意を払うからです。

逆にこの表現を見かけたときは、そういった人間関係にあることを頭に入れた上で内容を理解するようにしましょう。

今回の「一目置く」のように、囲碁が由来の慣用句は意外にたくさんあります。「岡目八目(傍目八目)」や「駄目を押す」などは、その典型例です。

「目」を用いたもの以外にも、「白黒をつける(黒白をつけるとも)」や「布石を打つ」なども囲碁に由来しています。そう考えると、囲碁は知らず知らずのうちに私たちの生活の中に溶け込んでいるといえそうです。

#2 「一目置く」の類義語は?違いは?

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ところで、「一目置く」の類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。このことを考えるとき、ポイントは二つあります。

一つめは、相手が何かに優れていることを表現している言葉でなければならないという点です。もうひとつは、それにより尊敬されているという点がポイントとして挙げられます。

「異彩を放つ」

「異彩を放つ」は、一段と優れて見える様子を表した言葉です。また、単に他とは異なって見える場合に用いられることもあります。

この言葉は、集団の中で他人とは違った何かを持ち合わせている人に対して使うのが一般的です。「彩」にはいろどりという意味の他にも、姿や様子といった意味合いもあります。

ただし、一段と優れているとはいえ、それで敬意を払われているかどうかまでは分かりません。

\次のページで「「脱帽する」」を解説!/

「脱帽する」

「脱帽する」もまた、「一目置く」の類義語といえる存在です。こちらの慣用句を用いることで、敬意を表したり降参の意を表したりすることができます。

この表現にある「脱帽」は、「帽子を脱ぐ」という意味です。同様の表現に「シャッポを脱ぐ」という表現もあります。

いずれにしても、帽子を脱ぐことによって相手に敬意を表している点は変わりません。ただし、相手が優れているからなのかどうかまでは分かりません。

同じ高校生が描いた作品の中でも彼女の絵だけは、色使いから何からきわめて異彩を放っていた。

渾身のストレートをスタンドにまで運ばれた相手ピッチャーも、おそらく君に脱帽したはずだ。

#3 「一目置く」の対義語は?

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では、「一目置く」の対義語にはどのようなものが考えられるのでしょうか。ここでもポイントは二つあります。

一つ目は、相手が自分よりも劣っていると考えること。そして、もうひとつは、それにより相手を蔑んでいるという点です。

ここでは、そのような意味合いを持った慣用表現を二つほどご紹介いたします。

「見下す」

「見下す」は、相手のことを上から見下ろす様子から生まれた言葉です。この言葉には、相手を自分よりも劣っていると考えさげすむという意味合いがあります。

似た言葉に「見下げる」というのもありますが、ほぼ同様の意味を持つと考えて差し支えありません。

「上から目線」

「上から目線」もまた、「一目置く」の対義語だといっていい存在です。こちらも先ほどの「見下す」同様に、自分の方が相手よりも能力や立場が上であると認識したときに使われます。

ただし、この表現はあくまでも俗語なので、ビジネスシーンなどで使う際には注意が必要でしょう。似たような表現の「マウントを取る」も同様です。

では、これらの対義語を用いた例文も確認しておきましょう。

たしかに、部長は優秀な方だが、時折部下のことを見下したような態度をとることがある。

みんな同じ平社員なのだから、上から目線であれこれ指摘してくるのはやめてもらえませんか。

\次のページで「「一目置く」の英訳は?」を解説!/

#4 「一目置く」の英訳は?

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最後に「一目置く」の英語表現もご紹介しておきましょう。

「acknowledge someone's superiority」

「acknowledge someone's superiority」を直訳すると、「だれかの優位性を認める」となります。つまり、相手が優れていることを認めるというわけですね。

これは、「一目置く」の意味に通じるものがあります。ただし、そのことで相手を尊敬しているかどうかは不明です。

「look up to」

「look up to」もまた、「一目置く」の英語訳だといえるものです。こちらは、「〇〇を見上げる」「〇〇を尊敬する」という意味を表します。

ただし、その理由が自分よりも優れたところがあるからかどうかまでは分かりません。それでは、最後にこれらの英語表現を用いた例文も押さえておきましょう。

They hardly acknowledge my superiority.
彼らは、なかなか私に一目置いてくれない。

I think you should look up to her.
君たちは、彼女に一目置くべきだと思うよ。

「一目置く」を使いこなそう

この記事では「一目置く」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句の意味は、相手が優れていることを認め敬意を払うことでしたね。

また、「一目」が囲碁に由来する言葉だということも学べたのではないでしょうか。ふだんは囲碁をやらないという人でも、案外とこういった慣用句は使われているものです。

みなさんも、この慣用句を使う機会があったら、臆することなくどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「一目置く」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「一目(いちもく)置く」という慣用句について解説する。

端的に言えば「一目置く」の意味は「敬意を払う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「一目置く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「一目置く」の意味や語源・使い方のまとめ

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それでは早速「一目置く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一目置く」の意味は?

「一目置く」には、次のような意味があります。

自分より優れていることを認めて敬意を払う。一歩譲る。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「一目置く」

「一目置く」の「一目」とは、いったい何を意味しているのでしょうか。これは、囲碁にその由来があります。

「目」とは、碁石を置くことのできる場所、つまり碁盤の目のことを表した言葉です。盤上の縦線と横線の交わった場所がこれにあたります。

囲碁の世界では、実力の劣る側が最初に一つ碁石を置いて対戦することがあるそうです。いわゆるハンデを付けて対戦していると理解してください。

そんなわけで、「一目置く」とは自分の方が相手よりも実力が劣っていることを認め敬意を払っている様子を表しているのです。

「一目置く」の使い方・例文

「一目置く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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