今回は料理の化学「アルファ化」について詳しく勉強していこう。

ご飯といえば米、米といえば炊き立てが一番ですね。ところで「ご飯が炊ける」というのはどういう現象のことかわかるか?

米が炊けるご飯になる仕組みを化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.米とご飯

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米とご飯、英語ではどちらもriceですが、私たちは無意識のうちに日本語の使い分けをしていますよね。は袋に入って売られている状態で、生米という人もいるでしょう。一方ご飯といえば食事全般を指す場合もありますが、炊き上がってすぐに食べられる状態のことですね。

米は炊くことでご飯になり、食べられるようになります。もちろん生米そのままでも食べられないことはないかもしれませんが、それでは美味しくないはずです。では「炊く」ことで米にどのような変化が起こるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

2.ご飯の炊き方

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今までに自分でご飯を自分でご飯を炊いたことがありますか?家でお手伝いをしたり、キャンプや調理実習などで経験がある人も多そうですね。では「ご飯を美味しく炊くコツ」「フライパンを使ったご飯の炊き方」は知っているでしょうか。ここにご飯の化学が隠されているのです。

2-1.ご飯を美味しく炊くコツ

ご飯を美味しく炊くポイントは、米の研ぎ方にあります。

(1) 米を量った後、たっぷりの水を加えて手早くかき混ぜて水を捨てる

(2) 数回(1)を繰り返す (水が透明になるまでやる必要はない)

(3) 炊飯器に米の量に合わせて水を加え、最低30分置いてから炊く

(4) 蒸らし後、すぐにご飯をほぐす (蒸らす時間は炊飯時間に含まれているものが多い)

いかがでしょうか。普段やっている方法はこのようにできていましたか?

\次のページで「2-2.フライパンを使ったご飯の炊き方」を解説!/

2-2.フライパンを使ったご飯の炊き方

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フライパンを使う場合も上記(1)~(3)までは同じ方法になります。

(4)蓋をして強火で1分加熱し、沸騰させる

(5)弱火にして約5分、大きな気泡が出てくるのを確認する (まだ水分が多い場合は追加で約2分加熱)

(6)再度強火にして約1分、パチパチと音が出る

(7)蓋をしたまま10分程蒸らしてからほぐす

ピラフやパエリアを作るときにも応用でき、フライパンなら加熱時間10分でご飯が炊けるので月曜日の朝「お弁当の準備するの忘れちゃった!」というときにも使えますね。覚えておくと便利ですよ。

3.アルファ化とアルファデンプン

3.アルファ化とアルファデンプン

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今回のテーマであるアルファ化というのは、生米がご飯になる過程でのでんぷんの変化を指します。生米は水分が少ないために腐りにくいため保存がききますが、そのままでは消化されにくく食べにくいベータデンプンの状態です。それに水を加えて加熱(炊飯)することでやわらかくふっくらとしたご飯になります。これがアルファ化されたアルファデンプンです。炊いた後は水分を含むために消化されやすくなりますが、米の状態とは違って腐りやすくなってしまいますよね。これを熱風で急速に乾燥させることで保存性を高めたのがアルファ化米というものです。

アルファ化米とは、一度炊いたご飯を乾燥させることで水分を飛ばしたものをいいます。中のでんぷんはアルファデンプンのまま保たれるため、保存性の高いベータデンプンと消化しやすいアルファデンプンの特徴を兼ね備えているのです。洗米や付け置きの必要がないだけでなく、水やお湯を加えることで手軽に美味しいご飯を楽しめるというメリットもあります。実際に保存食や非常食として商品化され、スーパーでも手軽に買える商品になっていますよ。お米コーナーに行ったら表示をよくチェックしてみるといいですね。ネットショップなどで検索してみるのもよさそうです。

4.アルファ化が起こる仕組み

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アルファ化に必要なのは水と加熱です。炊飯器や窯、飯盒、フライパンなど、どんな方法を用いてもこの2つは必要になりますよね。すでに紹介したご飯の炊き方は、米のアルファ化を手助けするためのヒントが含まれていたのです。

洗米の際はたっぷりの水で素早く洗う➡最初の水分をより多く吸収するのできれいな水を含ませるため

透明になるまで研ぐ必要はない➡米粒の割れを防ぎ、米粒表面にある旨味成分を損なわないようにするため

最低30分はつけ置きする➡時間を置くことでしっかり水を浸透させるため

10分程度蒸らす➡釜の中の温度を均一にして米粒の中の水分を均等にするため

炊けたらすぐほぐす➡窯の中の余分な水分を飛ばして米粒1つ1つを切り離すため

これらを意識することでご飯の味は格段に変わります。もし芯が残ってるご飯になってしまうなら水分が米に十分いきわたっていないのが原因でしょう。水の分量が合っているのに…というときにはつけ置きと蒸らしの工程を見直すことで改善できます。べちゃっとしたご飯になってしまうのは水が多いか米を研ぎすぎている、または炊けた後すぐにほぐしていないことが原因かもしれませんよ。料理の工程にも科学的な意味があると考えると面白いですよね。

\次のページで「美味しいご飯はアルファ化に理由あり」を解説!/

デンプンのアルファ化はご飯だけでなくじゃがいもを原料にした片栗粉でも起こります。おもちが乾燥して硬くなってしまった(デンプンの老化)とき、温めなおすことで再度アルファ化することも可能です。ちなみに土鍋ご飯のおこげはメイラード反応が関わっていましたね。下記の記事もぜひ参考にしてみてください。

美味しいご飯はアルファ化に理由あり

硬くてそのままでは食べられない米は保存がきくベータデンプンの構造をしています。それがアルファデンプンとなったご飯になることでふっくらと美味しいご飯として食べられるようになりますね。このようなでんぷんの構造の変化アルファ化です。ご飯を炊く際にはいくつかのコツを知っておくことで、より美味しいご飯を楽しめるようになります。もしかしたらそのコツだけは知っていたという人もいるかもしれませんね。しかしなぜそうするのかまで知っていたという人はきっと少ないでしょう。料理などの身近なことに興味をもつと、自然と化学への興味につながりそうですね。

 

画像引用:いらすとや

" /> ご飯が炊けるってどういうこと?「アルファ化」を元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

ご飯が炊けるってどういうこと?「アルファ化」を元塾講師がわかりやすく解説

今回は料理の化学「アルファ化」について詳しく勉強していこう。

ご飯といえば米、米といえば炊き立てが一番ですね。ところで「ご飯が炊ける」というのはどういう現象のことかわかるか?

米が炊けるご飯になる仕組みを化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.米とご飯

image by iStockphoto

米とご飯、英語ではどちらもriceですが、私たちは無意識のうちに日本語の使い分けをしていますよね。は袋に入って売られている状態で、生米という人もいるでしょう。一方ご飯といえば食事全般を指す場合もありますが、炊き上がってすぐに食べられる状態のことですね。

米は炊くことでご飯になり、食べられるようになります。もちろん生米そのままでも食べられないことはないかもしれませんが、それでは美味しくないはずです。では「炊く」ことで米にどのような変化が起こるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

2.ご飯の炊き方

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今までに自分でご飯を自分でご飯を炊いたことがありますか?家でお手伝いをしたり、キャンプや調理実習などで経験がある人も多そうですね。では「ご飯を美味しく炊くコツ」「フライパンを使ったご飯の炊き方」は知っているでしょうか。ここにご飯の化学が隠されているのです。

2-1.ご飯を美味しく炊くコツ

ご飯を美味しく炊くポイントは、米の研ぎ方にあります。

(1) 米を量った後、たっぷりの水を加えて手早くかき混ぜて水を捨てる

(2) 数回(1)を繰り返す (水が透明になるまでやる必要はない)

(3) 炊飯器に米の量に合わせて水を加え、最低30分置いてから炊く

(4) 蒸らし後、すぐにご飯をほぐす (蒸らす時間は炊飯時間に含まれているものが多い)

いかがでしょうか。普段やっている方法はこのようにできていましたか?

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