この記事では 「砂上の楼閣」について解説する。

端的に言えば、砂上の楼閣の意味は「見掛け倒し」と「実現不可能」ですが、意味やニュアンスを理解しておくと、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「砂上の楼閣」の意味や例文、類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「砂上の楼閣」の意味・語源・使い方

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さっそく「砂上の楼閣」の意味や語源を調べ、例文を使って使い方を見てみましょう。

「砂上の楼閣」の意味

まずは辞書で意味を調べてみましょう。

見かけはりっぱであるが、基礎がしっかりしていないために長く維持できない物事のたとえ。また、実現不可能なことのたとえ。
[補説]「机上の空論」との混同で、「机上の楼閣」とするのは誤り。

出典:小学館デジタル大辞泉「砂上の楼閣」

「楼閣」は2階建て以上の立派な高層の建物のことを指します。いくら建物が立派でも、砂地のような基礎がしっかりしていない場所では、いつ崩れるかわかりません。そこから「見掛け倒しで物事が長く続かないこと」、さらに「実現不可能」という意味で使われるようになりました。

「砂上の楼閣」の語源

次に「砂上の楼閣」の語源を見てみましょう。語源は新約聖書のマタイによる福音書第7章、「山上の垂訓」と呼ばれる一節にあります。

それで、わたしのこれらの言葉を聞いて行うものを、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができよう。雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけても、倒れることはない。岩を土台としているからである。また、わたしのこれらの言葉を聞いても行わない者を、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができよう。雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまう。そしてその倒れ方はひどいのである。

引用:マタイによる福音書第7章24節~27節

イエスの「山上の垂訓」を聞いてその教えを実行する人を、地盤がしっかりした岩の上に家を建てる賢い人に例え、教えを聞いても実行しない人を、砂の上に家を建てる愚かな人に例えています。硬い岩盤で基礎工事をするのは大変ですが、砂の上に立派な家を建てたとしても、基礎が弱いのですぐ壊れてしまいますね。

\次のページで「「砂上の楼閣」例文と使い方」を解説!/

「砂上の楼閣」例文と使い方

つぎに「砂上の楼閣」の例文で使い方を見てみましょう。

1.熱烈な恋愛の末の結婚だったが、お嬢様育ちの彼女と貧しい家庭に育った彼では価値観が違いすぎ、結婚生活は砂上の楼閣となった。
2.画期的な新技術を使った新商品を大々的に発売するという社長の計画は、開発段階から行き詰まった。この商品のヒットによって業界トップに躍り出るという社長の夢は、砂上の楼閣に過ぎなかった。

最初の例文は人間関係が長続きしなかったという意味です。2番目の例文は「実現不可能」という意味で使われていますね。

「砂上の楼閣」の類義語

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次に「砂上の楼閣」の類義語を見てみましょう。

「羊頭狗肉」:見かけ倒し

「羊頭狗肉」は羊の頭を看板に掲げていながら、実際に売っているのは犬の肉という意味。中国の故事成語です。「見かけは立派でも、実質が伴っていないこと」を表します。外見は立派だが見かけ倒しであるという意味の類義語です。

「机上の空論」「空理空論」など:現実には役に立たない

「空論」は「実際の役に立たない理論」のこと。「机上の空論」は、「机に向かって頭の中だけで考えた現実には役に立たない理論」を意味しています。「座上の空論」も同じ意味です。

「空理」は仏教用語で、世の中のものはすべて因縁によって起こる仮のものなので、実体がないということ。そこから実際の役に立たない理論を意味するようになりました。「空理」も「空論」も同じ意味で、言葉を二つ重ねて「空理空論」とすることによって意味を強調しています。

「空中楼閣」「海市蜃楼」:実体がないもの

「空中楼閣」は「くうちゅうろうかく」と読みます。意味は、「想像の中だけで抽象的に構築された実態のない物事」のこと。「海市蜃楼」は「かいししんろう」と読みます。「海市」も「蜃楼」も蜃気楼のこと。蜃気楼は光の異常屈折によって砂漠や海上で虚像が見える現象で、転じて実体がないものという意味でも使われます。「海市蜃楼」「実体がないもの」「現実性のない考え」という意味です。

\次のページで「「畳の上の水練」「素引きの精兵」:実戦で役に立たない」を解説!/

「畳の上の水練」「素引きの精兵」:実戦で役に立たない

「畳の上の水練(すいれん)」は、いくら畳の上で泳ぐ練習をしても、水の中で泳げるわけではないことから、「理論は立派でも実地訓練をしていないので、実際の役に立たない」という意味を表すようになりました。「素引きの精兵」「すびきのせいびょう」と読みます。「素引き」は弓を矢につがえずに、張りの強さを試すために弦だけを引いてみること。これも「理論だけで、実戦では役に立たない」という意味です。

「絵に描いた餅」「取らぬ狸の皮算用」:実現性のない計画

「絵に描いた餅」は、どれだけうまく描いても食べられないことから、「役に立たない」ことや「実現しない計画」のことを意味しています。「取らぬ狸の皮算用」は、まだ狸を捕まえていないのに、皮を売った収入をあてにするということ。「現実に手に入るかわからないものをあてにして計画する」という意味で使われます。

「砂上の楼閣」の反対語

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次に「砂上の楼閣」の反対語を見てみましょう。

「堅実」:手堅い

「堅実」は物事のやり方や考え方が手堅くて確実であること、しっかりしていてあぶなげない様子のことです。

「用意周到」:手抜かりがない

「用意周到」は細かいところまで用意が行き届いていて、準備に手抜かりがないことです。

「砂上の楼閣」の英訳は?

次に「砂上の楼閣」の英訳を見てみましょう。

「house built on sand」

\次のページで「「house of cards」」を解説!/

Everyone who hears these words of mine, and doesn’t do them will be like a foolish man, who built his house on the sand.
わたしのこれらの言葉を聞いてもそれを行なわないすべての者は,砂の上に自分の家を建てた愚かな人に似ている。

例文は、語源となった聖書のマタイによる福音書第7章26節の英訳です。「house built on sand」は砂の上の家で「砂上の楼閣」という意味になります。

「house of cards」

Her plans are a house of cards.
彼女の計画は砂上の楼閣だ。

「house of cards」は「トランプの札で作った家」。転じてトランプで作った家のように不安定な建物や計画を意味する言葉になりました。

「砂上の楼閣」の意味を知って、実現可能な計画を立てよう!

この記事では、 「砂上の楼閣」についての意味、類義語から英訳などを説明しました。

砂上の楼閣は、見かけは立派でも基礎がしっかりしない砂の上に建てた建物は長く維持できないということから、「見掛け倒し」「実現不可能」というふたつの意味で使われるようになりました。「机上の空論」「空中楼閣」「畳の上の水練」「絵に描いた餅」など、類義語がたくさんあります。

「砂上の楼閣」の意味と使い方を理解して、仕事や勉強の計画を立てるときは「砂上の楼閣」とならないように、実現可能な計画を立ててくださいね。

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類義語がいっぱい!「砂上の楼閣」の意味・語源・例文などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では 「砂上の楼閣」について解説する。

端的に言えば、砂上の楼閣の意味は「見掛け倒し」と「実現不可能」ですが、意味やニュアンスを理解しておくと、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「砂上の楼閣」の意味や例文、類義語などを見ていきます。

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日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「砂上の楼閣」の意味・語源・使い方

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さっそく「砂上の楼閣」の意味や語源を調べ、例文を使って使い方を見てみましょう。

「砂上の楼閣」の意味

まずは辞書で意味を調べてみましょう。

見かけはりっぱであるが、基礎がしっかりしていないために長く維持できない物事のたとえ。また、実現不可能なことのたとえ。
[補説]「机上の空論」との混同で、「机上の楼閣」とするのは誤り。

出典:小学館デジタル大辞泉「砂上の楼閣」

「楼閣」は2階建て以上の立派な高層の建物のことを指します。いくら建物が立派でも、砂地のような基礎がしっかりしていない場所では、いつ崩れるかわかりません。そこから「見掛け倒しで物事が長く続かないこと」、さらに「実現不可能」という意味で使われるようになりました。

「砂上の楼閣」の語源

次に「砂上の楼閣」の語源を見てみましょう。語源は新約聖書のマタイによる福音書第7章、「山上の垂訓」と呼ばれる一節にあります。

それで、わたしのこれらの言葉を聞いて行うものを、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができよう。雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけても、倒れることはない。岩を土台としているからである。また、わたしのこれらの言葉を聞いても行わない者を、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができよう。雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまう。そしてその倒れ方はひどいのである。

引用:マタイによる福音書第7章24節~27節

イエスの「山上の垂訓」を聞いてその教えを実行する人を、地盤がしっかりした岩の上に家を建てる賢い人に例え、教えを聞いても実行しない人を、砂の上に家を建てる愚かな人に例えています。硬い岩盤で基礎工事をするのは大変ですが、砂の上に立派な家を建てたとしても、基礎が弱いのですぐ壊れてしまいますね。

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