端的に言えば、勇猛果敢の意味は「勇ましく決断力があること」です。今では良い意味で使われているが、語源の『漢書』では、ある人物を批判的に評価する場面で使われているぞ。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「勇猛果敢」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。
ライター/ユーリ
日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。
「勇猛果敢」の意味
まず、国語辞典で「勇猛果敢」の意味をチェックしましょう。
勇ましくて勢いがあり、決断力に富んでいること。恐れずに思いきって実行すること。
出典:四字熟語辞典(学研)「勇猛果敢」
「勇猛」は漢字の意味のとおりに「勇ましく猛々しい」こと。「果敢」は「決断力に富み、思いきりがよい」という意味があります。「勇猛果敢」は「勇ましくて勢いがあり、決断力に富んでいる」「恐れずに思い切って実行する」という意味です。
「勇猛果敢」の語源は『漢書』!
「勇猛果敢」の語源は『漢書(かんじょ)』「翟方進伝(てきほうしんでん)」です。『漢書』は、二十四史のひとつで前漢のことを記した歴史書。政治家の翟方進(てきほうしん)は、成帝の妻の父である紅陽侯(こうようこう)とその一派を批判します。
過絶於人、勇猛果敢、處事不疑、所居皆尚殘賊酷虐。
人に過絶(かぜつ)し、勇猛果敢、事を処するに疑わず、居(お)る所皆残賊(ざんぞく)酷虐(こくぎゃく)を尚(たっと)ぶ。
出典:『漢書』「翟方進伝」
人のふむべき道を超越し、勇猛果敢、そのことに対して疑いを持たず、人の道にはずれた乱暴や、むごいことを平気でする、という意味です。
成帝は翟方進の進言を受入れ、紅陽侯らを解任し故郷へ帰らせました。今ではポジティブな意味合いで使われることが多い「勇猛果敢」ですが、由来となった故事では、ネガティブな意味合いで使われていたようですね。
「勇猛果敢」の使い方
次は例文で「勇猛果敢」の使い方を見ていきましょう。
1.転職の面接で座右の銘を問われて「勇猛果敢」と答えたら、面接官に好感を持たれたらしく、内定を得ることができた。
2.どんな難しそうな案件でも恐れず取り組んでいく課長は、入社したての僕にとって、勇猛果敢なビジネスマンの鑑(かがみ)に見えた。
最初の例文は、「勇猛果敢」をモットーとしていることで、決断力があり、困難に立ち向かう姿勢があることをアピールできたということですね。面接官は「勇猛果敢」の語源となった故事成語はきっと知らなかったでしょう。2番目の例文は、新入社員の目には、実行力や決断力がある課長が理想的なビジネスパーソンに映ったという意味です。現在では「勇猛果敢」はポジティブな誉め言葉として使われていますよ。
「剛毅果断(ごうきかだん)」:思い切って物事を行う
「剛毅」は「意志が強く容易に屈しない」こと。「果断」は「ためらわずに思い切って行う」という意味です。「剛毅果断」は「意志が強く、ためらわず思い切って物事を行う」という意味ですよ。
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