物理で出てくる単振動。波を表す式だから「三角関数」が出てくる上、変位、速度、加速度の変換には「微積分」まで出てきて何だか取っつきづらい。そんな単振動に取っつきやすくしてくれるトピックスの1つが「振り子」。

この記事では、振り子の原理を応用した実用品「振り子時計」の解説を通して単振動への理解を深めよう。理系ライターのR175と解説していく。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.振り子時計とは

image by iStockphoto

時計は時刻を正確に刻めるというのが最大の機能であり、その機能を得るために振り子の等時性」を利用しているのが「振り子時計」。「等時性」とは振り子の振れ幅が変わっても振れる周期が変わらないという性質。時計には持ってこいの性質ですね。この記事ではまず、振り子の等時性を解説してから振り子時計の仕組みを見ていきましょう。

2.振り子の「等時性」について

振り子の重さ、振れ幅、長さをそれぞれ変えて「振れる周期」にどう影響するかという実験はよくされていますね。「長さ」のみ影響して振れ幅と重さは関係なしという結果が得られると思います。

また、振り子の周期の公式を見ても関係するのは、円周率πと重力加速度gと振り子の長さlであり、振り子の重さと振れ幅は出てきません。一体どこにいってしまったのでしょうか?

以下、振り子の動きを単振動として読み解いていくことで振り子の「等時性」を確認していきましょう。

3.振り子と単振動

振り子の周期を表す式そのものは「すっきり」感がありますが、一体どんな過程で出て来たのでしょうか。順を追ってみてきましょう。

まず、一番知りたい振り子の周期をTとしましょう。Tを求めるためには、振り子がどんな動きをしているかを式で表さないと不明。つまり、あるタイミングtに振り子はどこの位置xにあるかを式で表さないと周期を求めるには至りません。

\次のページで「結局単振動」を解説!/

結局単振動

結局単振動

image by Study-Z編集部

振り子はいつどこにあるのか?それを表すために単振動の変位を表す式が必要になります。振り子の動きは一定周期で行ったり来たりする「」のような動き。あるタイミングtで、振り子xを表してみましょう。

考え方としては、ド真ん中基準で左と右それぞれに最大Aだけ振れ、一定周期で行ったり来たり。行ったり来たりを繰り返しを表すのに便利なのは波の動きを表す三角関数。sin()は-1から1までを1周期ごとに行ったり来たり。とりあえず()内は空白で、あとで解説。これに振れ幅Aを掛けてAsin()にすると-AからA、左と右をを行ったり来たりしていることを表せますね。振り子の位置を表す式がAsin()で表せそう。時間tが入っていないので()内は時間tが絡んだ式になることが予想されます。

sin()の()内はどう表すか

sin()の()内はどう表すか

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振れ幅を係数にして、Asin()にすれば上手いこと表せそう。()内はどのタイミングかを表すtが入っていて且つ1周で2π進むということを表せたらOK。

先ほど1周するのにT(周期)かかることを先ほど定義しました。t=0から始まって1周してくるタイミングがt=T。t=0なら()内は0、t=Tを代入したら()内が2πになる形にすればOK。

それを満たす()内の形は2π(t/T)。しかしこれだとやや複雑なので、2π/Tをω(オメガ)とします。2πという角度をTだけかけて変化するという意味なので、ω=2π/Tは1秒あたりに変化する角度(角速度)。

よって、最初真下に居た振り子がt秒後にどこの位置xにいるかを表す式はx=Asin(ωt)となります。ωが分かれば即周期Tが分かる。いかにしてωを求めるかという視点で考えていきましょう。

力のつり合い式とωを紐づけ

ωを求めたい。そこで、変位をωを使って表した。とはいえ、残念ながら「変位=何か」にさっと表せそうにはありませんね。

一方、振り子は糸と重りが繋がったものなので「力」のつり合い式ならたてられそう。「そこにωを絡ませられないか?」。変位とωは紐づきました。ここからωを力に絡ませるためにはどうしましょう。変位と力の関係はよくわかりませんね。

変位ではなく「速度」、いや「加速度?」。「加速度」なら力とモロ関係ありますね。運動方程式より力=質量x加速度。振り子に働く力をFとして、質量をmとしましょう。あとは、「加速度」。

振り子に働く力

振り子に働く力

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まずは、振り子に働く力のつり合い式をたてましょう。イラストのように、(1°とか3°とか5°とかそれくらい)微小な角度Θだけ振れている時に振り子に働く力は?質量mの振り子が右半分(変位xが正の位置)にあるとしましょう。振り子の振れに関係のある水平方向の力は左向きにmgx/l(イラスト内参照)。xが+の時力は-の向きなので振り子に働く力は-mgx/l。

因みに、イラスト内記載の通り微小な角度ならcos(Θ)=1として全然問題ありませんから気にしないで近似してください。イラストの表にある通り、15°くらい振れてもほとんどズレはありません。

変位から加速度求める

変位から加速度求める

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「加速度」は変位から求めることが可能。数学のルールに則り、変位をtで2回微分してやれば晴れて「加速度」が分かります(イラスト参照)。加速度aは結局-ω^2と変位xを掛けた形に。よって、力は-m ω^2 x。振れ幅Aはこの段階で消滅。

晴れてωが明らかに

晴れてωが明らかに

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力のつり合い式=ωが絡んだ式と置いてやれば、晴れてωが求まりますね。力のつり合い式やωが絡んだ運動方程式そのものには質量mが登場していますが、両者を=でつなぐと打ち消し合って消えてしまいます。結果ωは重力加速度と振り子の長さによることが分かりますね。

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4.振り子時計の仕組み

4.振り子時計の仕組み

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ここにきてやっと本題、「振り子時計」の仕組みを見ていきましょう。振り子は振れ幅や重さに関係なく極めて正確に規則正しく揺れます。振り子時計では、ぜんまいのように放っておいたら周り続けるものを定期的に「妨害」。妨害するタイミングが振り子により極めて正確にコントロールされるため、ぜんまいの回転が多少速くても遅くても正確な速度で回ります。

時計の下で揺れてる振り子。ずっと揺れていると振れ幅が小さくなりそうですが、これも影響なし。前述の通り、振り子の周期に影響するのは「振り子の長さ」と「重力加速度」のみ。緯度によって若干変わってくる重力加速度を考慮しておけば、あとは振り子の長さのみで決まるのが振り子の周期。振れ幅が減衰しても問題なし

極めて正確な周期

振り子と時計は非常に相性が良いでしょう。振り子の周期、は単振動で考えていけば、「振り子の長さ」と「重力加速度」で決まることが分かります。

振れ幅など、変化しやすい数値の影響を受けないため極めて正確なリズムを保ち、時刻を正確に刻むことに貢献しますね。

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物理物理学・力学理科

「振り子時計」の原理って?ポイントは単振動ー理系ライターがわかりやすく解説

物理で出てくる単振動。波を表す式だから「三角関数」が出てくる上、変位、速度、加速度の変換には「微積分」まで出てきて何だか取っつきづらい。そんな単振動に取っつきやすくしてくれるトピックスの1つが「振り子」。

この記事では、振り子の原理を応用した実用品「振り子時計」の解説を通して単振動への理解を深めよう。理系ライターのR175と解説していく。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.振り子時計とは

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時計は時刻を正確に刻めるというのが最大の機能であり、その機能を得るために振り子の等時性」を利用しているのが「振り子時計」。「等時性」とは振り子の振れ幅が変わっても振れる周期が変わらないという性質。時計には持ってこいの性質ですね。この記事ではまず、振り子の等時性を解説してから振り子時計の仕組みを見ていきましょう。

2.振り子の「等時性」について

振り子の重さ、振れ幅、長さをそれぞれ変えて「振れる周期」にどう影響するかという実験はよくされていますね。「長さ」のみ影響して振れ幅と重さは関係なしという結果が得られると思います。

また、振り子の周期の公式を見ても関係するのは、円周率πと重力加速度gと振り子の長さlであり、振り子の重さと振れ幅は出てきません。一体どこにいってしまったのでしょうか?

以下、振り子の動きを単振動として読み解いていくことで振り子の「等時性」を確認していきましょう。

3.振り子と単振動

振り子の周期を表す式そのものは「すっきり」感がありますが、一体どんな過程で出て来たのでしょうか。順を追ってみてきましょう。

まず、一番知りたい振り子の周期をTとしましょう。Tを求めるためには、振り子がどんな動きをしているかを式で表さないと不明。つまり、あるタイミングtに振り子はどこの位置xにあるかを式で表さないと周期を求めるには至りません。

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