この記事では「疾風怒濤」について解説する。

端的に言えば疾風怒濤の意味は「激しく荒れ狂う様子」ですが、もっと幅広い意味や背景を知ると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「疾風怒濤」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「疾風怒濤」の意味や語源・使い方まとめ

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疾風怒濤は「しっぷうどとう」と読みます。それでは、早速「疾風怒濤」の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「疾風怒濤」の意味は?

疾風怒濤には次のような意味があります。

1、疾風と怒濤。

2、シュトゥルム━ウント━ドラングの訳語。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「疾風怒濤」

ふだん目にする機会が多いのは、1の意味での使い方です。2は文学史上の用語に近い言葉になります。

「疾風怒濤」の語源は?

疾風怒涛は「疾風」と「怒涛」という、二つの熟語が合わさってできた四字熟語です。疾風は「激しく早く吹く風」、怒涛は「荒れ狂う大波」という意味になります。疾風も怒涛も激しい天候を意味する言葉で、両方をあわせて荒れ狂う天候やそのイメージを意味する言葉です。

また、疾風と怒涛のそれぞれの意味から、18世紀のドイツで興った文学革新運動「シュトゥルム・ウント・ドラング」の和訳にもなっています。

\次のページで「「疾風怒濤」の使い方・例文」を解説!/

「疾風怒濤」の使い方・例文

それでは、「疾風怒濤」の例文を見てみましょう。先に説明した2の意味での使い方はあくまでも固有名詞なので、ここでは1の意味での使い方を見ていきましょう。

疾風怒濤のようにトラブルが舞い込んでくる。

・彼らは疾風怒濤の攻撃で勝利を収めた。

疾風怒濤の一年が始まる。

疾風怒濤は、嵐のような激しい状況を指す言葉です。そういった状況が当てはまるのならどんなシーンでも使えるので、便利な言葉といえるでしょう。

「疾風怒濤」の類義語は?違いは?

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疾風怒濤は、嵐のような激しい状況を「疾風(早く激しい風)」と「怒涛(荒れ狂う波)」に例えた表現です。他にも、変化や展開が激しい状況を自然現象にたとえた言葉はいくつかあります。

「疾風迅雷」

疾風迅雷は「しっぷうじんらい」と読みます。疾風は先に説明したとおりですが、「迅雷」は激しい雷を意味する言葉です。意味は疾風怒濤とほとんど変わりませんが、疾風怒濤よりもスピード感のあるニュアンスとなります。

\次のページで「「電光石火」」を解説!/

「電光石火」

電光石火は「でんこうせっか」と読みます。使われている漢字が比較的易しく、ゲームやアニメでも見かける機会の多い言葉です。「電光」は放電のような激しい光を、「石火」は石を打ち合わせたときに出る火花を指しています。瞬時に激しく光り輝く様子を表現していて、疾風怒濤よりもスピード感を重視した表現です。

「迅速果敢」

迅速果敢は「じんそくかかん」と読みます。こちらは自然現象にたとえた表現ではなく、そのままの様子を言葉にした表現です。「迅速」は非常に素早い様子を、「果敢」は決断力や勇気に富み、大胆な様子を意味します。つまり、素早く大胆な行動を指した言葉です。特に「果敢」は、人の心理に近いものを表す言葉ですので、「疾風怒濤」「疾風迅雷」「電光石火」に比べ、より心情をストレートに伝える表現といえるでしょう。その反面、人や動物など、心理描写のあるもの以外には、あまり使われない言葉でもあります。

「疾風怒濤」の対義語は?

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激しく荒れ狂う様子を表現したのが「疾風怒濤」なので、対義語は穏やかな様子を表現した言葉、ということになります。

「春風駘蕩」

春風駘蕩は「しゅんぷうたいとう」と読みます。「春風」は文字通り春の穏やかな風を、「駘蕩」は遮るもののない穏やかでのびのびとした様子を表す言葉です。このことから、春の優しい風が吹くのどかな風景を表現しています。そこから転じて、人柄が温厚で穏やかであることを指すときにも使うことができる言葉です。

「悠々閑々」

悠々閑々は「ゆうゆうかんかん」と読みます。「悠」も「閑」も、のんびりとゆったりとした様子を表す漢字で、それぞれ重ねて強調されているのがわかりますね。悠々閑々という言葉も、のんびりゆったりとした様子を表すのに使われる言葉です。

ドイツの文学革新運動「シュトゥルム・ウント・ドラング」とは?

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ここまで解説してきたのは、あくまでも日本語としての「疾風怒濤」の意味や使い方です。冒頭で紹介したとおり、疾風怒涛にはもう一つ、ドイツの文化革新運動「シュトゥルム・ウント・ドラング」の訳語としての意味があります。ここでは、シュトゥルム・ウント・ドラングについて触れておきましょう。

\次のページで「「シュトゥルム・ウント・ドラング」って、どんな運動?」を解説!/

「シュトゥルム・ウント・ドラング」って、どんな運動?

18世紀後半まで、ドイツをはじめヨーロッパの芸術で主流となっていたのは古典主義啓蒙主義でした。

古典主義は、古代ギリシャやローマの時代に生み出された芸術を理想とし、その流れを汲むことです。この時代の作品には統制や調和を重視する傾向があり、古典主義でも調和が大切なものとされました。文学の世界でも、この時代の叙述詩が至高とされていたのです。

啓蒙主義は、人が普遍的にもつ理性に重きを置いた考え方のことをいいます。人を含め、この世界に等しく当てはまる根本法則があり、人の理性によって認識できる、と考えられていました。そのため、感情のような制御できないものは軽視され、論理的で理性的なものが優先されたのです。

シュトゥルム・ウント・ドラングは、これらの考え方に反発した運動でした。どんなに理性的・合理的な考え方を優先しても、人の感情は無視できないという考え方に基づき、理性よりも感情が優越している、という考え方です。この運動が、後のロマン主義へとつながっていきました。

代表作を生み出した「ゲーテ」と「シラー」

シュトゥルム・ウント・ドラングを代表する文豪とされているのが、ゲーテシラーです。どちらも非常に有名な人物なので、名前を目にする機会も多いと思われます。

ゲーテは裕福な家庭に生まれ、24歳の若さで「若きウエルテルの悩み」を発表しました。この作品が、シュトゥルム・ウント・ドラングの先駆けとなったのです。

「若きウエルテルの悩み」に触発を受けたのが、大変な教養家として知られるシラーでした。シラーは「若きウエルテルの悩み」をはじめとするシュトゥルム・ウント・ドラングの作品に感銘を受け、18歳で「群盗」を執筆します。

ゲーテとシラーがシュトゥルム・ウント・ドラングに関わっていた頃、二人の直接の交流はありませんでした。別々の人生を歩んだ後、晩年に二人は初めて出会い、お互いの考え方に意気投合しました。このときの様子は、ゲーテが自身の作品「詩と真実」で詳しく述べています。やがて、二人は「ドイツ古典主義」という新しい文学ジャンルを確立していきました。

最終的にはシュトゥルム・ウント・ドラングともロマン主義とも異なる方向へ進んだ二人でしたが、二人を結びつけるきっかけとなったのが、シュトゥルム・ウント・ドラングだったのです。

「疾風怒濤」を使いこなそう

この記事では、「疾風怒濤」の意味や使い方、例文について説明しました。使われている漢字が激しいイメージを思い浮かべることが多く、状況や心境を伝えるのにわかりやすい言葉です。

また、訳語であるドイツの文学革新運動シュトゥルム・ウント・ドラングについても解説しました。シュトゥルム・ウント・ドラング自体は、日本語として疾風怒濤を使用する上では特に必要な情報ではありませんが、教養として知っておくと、使える機会があると思います。

状況を形容する言葉としての使い方と一緒に、文学史に関する教養としてシュトゥルム・ウント・ドラングも覚えておくと良いでしょう。

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【四字熟語】「疾風怒濤」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「疾風怒濤」について解説する。

端的に言えば疾風怒濤の意味は「激しく荒れ狂う様子」ですが、もっと幅広い意味や背景を知ると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「疾風怒濤」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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「疾風怒濤」の意味や語源・使い方まとめ

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疾風怒濤は「しっぷうどとう」と読みます。それでは、早速「疾風怒濤」の意味や使い方について詳しく見ていきましょう。

「疾風怒濤」の意味は?

疾風怒濤には次のような意味があります。

1、疾風と怒濤。

2、シュトゥルム━ウント━ドラングの訳語。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「疾風怒濤」

ふだん目にする機会が多いのは、1の意味での使い方です。2は文学史上の用語に近い言葉になります。

「疾風怒濤」の語源は?

疾風怒涛は「疾風」と「怒涛」という、二つの熟語が合わさってできた四字熟語です。疾風は「激しく早く吹く風」、怒涛は「荒れ狂う大波」という意味になります。疾風も怒涛も激しい天候を意味する言葉で、両方をあわせて荒れ狂う天候やそのイメージを意味する言葉です。

また、疾風と怒涛のそれぞれの意味から、18世紀のドイツで興った文学革新運動「シュトゥルム・ウント・ドラング」の和訳にもなっています。

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