この記事では「深謀遠慮(しんぼうえんりょ)」について解説する。

端的に言えば「深謀遠慮」の意味は「深く考えること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「深謀遠慮」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「深謀遠慮」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「深謀遠慮」の意味や使い方などを見ていきましょう。

「深謀遠慮」の意味は?

「深謀遠慮」には、次のような意味があります。

先々のことまで考えた、深いはかりごと。深慮遠謀。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「深謀遠慮」

「深謀遠慮」の意味を「深謀」と「遠慮」に分けて考えてみましょう。「深謀」の「謀」には、計画や計略といった意味合いがあります。

つまり、「深謀」は深いところまで練り上げて立てられた計画や計略といったところでしょうか。一方の「遠慮」が表すのは、思いめぐらせるという意味です。

したがって、「遠慮」は遠い先のことまで思いをめぐらせることという意味になるのが分かるでしょう。こうしてみてみると、我々が普段使っている「遠慮」とは少し意味合いが異なるようですね。

「深謀遠慮」の使い方・例文

「深謀遠慮」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「深謀遠慮」の由来や出典は?」を解説!/

うちの部長が目先の利益だけではなく5年後、10年後を見据えている様子は、まさに深謀遠慮という言葉がぴったりだ。

こんなところにまで備えをしてあるとは、敵軍にいる軍師の深謀遠慮には本当に舌を巻くほかない。

深謀遠慮といえば、国家百年の大計としてまず教育に手を付けた明治の元勲たちには自然と頭の下がる思いだ。

「深謀遠慮」という四字熟語を使いこなすには、当然ポイントがあります。それは、ただ単に深く計画を立てることだけではなく、遠い将来まで見渡しているという点です。

どこまでが短期でどこからが長期なのかは、人によっても状況によっても異なるでしょう。ただ一つだけ言えるのは、それが目先のことだけではないということです。

一手も二手も先を読み、それに対してしっかりと備えていく。そういうことのできる様子を「深謀遠慮」と言います。

「深謀遠慮」の由来や出典は?

ここで「深謀遠慮」の由来や出典を押さえておきましょう。この四字熟語の出典は、前漢時代の学者である賈誼(かぎ)が著した「過秦論」という書物です。

この書物の中で、賈誼は秦のあまりにも行き過ぎた法治に対する批判を繰り広げています。その中に登場するのが次の一節です。

深謀遠慮 行軍用兵之道 非及曩時之士也」

これは、深く謀りごとをめぐらし、遠い将来のことまで思いをめぐらして、軍を進め兵を用いる点でもかつての諸侯国には及ばなかったという意味合いを表します。

#2 「深謀遠慮」の類義語は?違いは?

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さて、「深謀遠慮」の類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。

「熟慮断行」

「熟慮断行(じゅくりょだんこう)」は、「深謀遠慮」の類義語としてよく採り上げられるものです。この四字熟語には、よく考え抜いたうえで固い決意をもって行動するという意味があります。

「深謀遠慮」との違いは、ずばり「行動」の部分にあるといえるでしょう。「深謀遠慮」はきちんと先を見通したうえでじっくりと計画を練り上げますが、実際に行動したかどうかまでは触れられていません。

\次のページで「「千思万考」」を解説!/

「千思万考」

「千思万考(せんしばんこう)」もまた、「深謀遠慮」の類義語といって差し支えないものです。こちらの四字熟語は、何度も深く考えるときう意味をもちます。

深いところまでよく考えるという点では「深謀遠慮」とそっくりですが、将来のことまでしっかり見通しているかどうかまでは分かりません。

では、これらの類義語を用いた例文をチェックしてみましょう。

この状況を最小限の被害で乗り切るには、熟慮断行を貫き通すことが何よりも欠かせない。

私が尊敬してやまないかつての上司でもあるA課長は、まさに千思万考の人であった。

#3 「深謀遠慮」の対義語は?

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では、「深謀遠慮」は対義語にはどのようなものが考えられるのでしょうか。

「軽率短慮」

「軽率短慮(けいそつたんりょ)」は、「深謀遠慮」の対義語としてもっとも分かりやすいものかもしれません。この熟語の表す意味は、深く考えることなく軽々しく行動することです。

前半部の「軽率」は、みなさんも聞いたことのある言葉なのではないでしょうか。後半部の「短慮」には、考えが足らずに浅いという意味合いがあります。

「喉元思案」

「喉元思案(のどもとじあん)」もまた、「深謀遠慮」の対義語といって差し支えないものです。こちらの熟語にも、軽率な考えという意味合いがあります。

「思案」はともかくとして、なぜ「喉元」なのかを考えてみましょう。これは、胸の辺りにある「心」から考えたことではなく、胸よりも浅い「喉」の辺りで考えるからだとされています。

では、これらの対義語を用いた例文もここで忘れずにチェックしておきましょう。

あれほど綿密に作戦を立てるようにと忠告しておいたのに、君は本当に軽率短慮が過ぎるよ。

そんな喉元事案なんて、百戦錬磨の相手にはすぐに見透かされてしまうのではなかろうか。

\次のページで「「深謀遠慮」の英訳は?」を解説!/

#4 「深謀遠慮」の英訳は?

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では、最後に「深謀遠慮」の英語訳をご紹介していきましょう。

「mature consideration」

「mature consideration」は、「深謀遠慮」の英語訳として用いられるもののひとつです。この表現を直訳すると「熟慮」という意味になります。

「遠慮」と「熟慮」は似たような意味合いだから良しとしても、「深謀」の部分には特に言及がありません。したがって、「深謀遠慮」とまったく同様の意味合いかと言われれば、異なる部分もあると言わざるを得ません。

「long-sightedness」

「long-sightedness」もまた、「深謀遠慮」と近い意味を持った英語表現の一つです。こちらの英語表現に出てくる「sightedness」には、「目が見えること」という意味合いがあります。

つまり、「long-sightedness」には、遠く先まで見渡せることという意味合いがあるというわけです。こちらは、先ほどのものとは逆に「遠慮」の部分が明記されていません。

「深謀遠慮」を使いこなそう

この記事では「深謀遠慮」の意味・使い方・類語などを説明しました。この四字熟語は、先を見通してよく考えることという意味でしたね。

もちろん、「短慮」であることは論外ですが、あまり考えすぎて実行に移せないのもいかがなものかと思います。考えることと行動することの双方がバランスよく備わっているのが理想的でしょうか。

みなさんも機会があれば、「深謀遠慮」をどんどん使ってみてくださいね。

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【四字熟語】「深謀遠慮」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「深謀遠慮(しんぼうえんりょ)」について解説する。

端的に言えば「深謀遠慮」の意味は「深く考えること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「深謀遠慮」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「深謀遠慮」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「深謀遠慮」の意味や使い方などを見ていきましょう。

「深謀遠慮」の意味は?

「深謀遠慮」には、次のような意味があります。

先々のことまで考えた、深いはかりごと。深慮遠謀。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「深謀遠慮」

「深謀遠慮」の意味を「深謀」と「遠慮」に分けて考えてみましょう。「深謀」の「謀」には、計画や計略といった意味合いがあります。

つまり、「深謀」は深いところまで練り上げて立てられた計画や計略といったところでしょうか。一方の「遠慮」が表すのは、思いめぐらせるという意味です。

したがって、「遠慮」は遠い先のことまで思いをめぐらせることという意味になるのが分かるでしょう。こうしてみてみると、我々が普段使っている「遠慮」とは少し意味合いが異なるようですね。

「深謀遠慮」の使い方・例文

「深謀遠慮」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「深謀遠慮」の由来や出典は?」を解説!/

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