熱容量は熱力学ではよくでてくる量です。熱容量とともに熱力学の基本的な方法についても紹介しておこう。
今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。
ライター/トオル
今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していくぞ。
熱容量について
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熱容量は熱力学的にしばしばでてくる量です。熱容量がよくでてくる理由の一つは熱容量が比較的実験的に求めやすい量であるということがあります。つまり、熱容量を経由して他の色々な量を実験的に求めていくということです。今回は、熱容量のほかに熱力学で基礎的な概念である準静的過程と、偏微分についてもこの記事では簡単紹介しています。
準静的過程について
まず、熱力学でよく用いられる準静的過程という用語について説明しておきます。ある系の状態を変化させるには、系に圧力を加えて圧縮したり、熱を加えて温度を上げたりしなければなりません。ちなみに、ある系といはいま考えている範囲のことです。変化をさせる際、系の一部を急激に加熱したりすると熱を加えた部分だけ温度が上がり、系の一部だけが高温の状態になります。すると、熱の移動がおこり複雑な変化が系の内部におこるはずです。
この変化は巨視的には制御できないものであるので、理論的に扱うのが難しくなります。そこで、扱いやすくするために、圧縮、膨張、加熱、冷却などを行うときは無限にゆっくり行い、常に系が同じ温度に保たれるような変化を考えることにしましょう。このような変化のことを準静的変化もしくは、準静的過程と呼びます。この過程は純粋に理論的なものですが、現実的には非常にゆっくり変化を行う場合を準静的過程と考えて問題ありません。
あと、準静的過程で生じた変化はその道筋をまた準静的に逆にたどる過程によって系もまわりの環境も最初と同じ状態に戻ることができるという重要な性質があります。この逆にすれば最初の状態に戻ることができるという過程が準静的過程の別の定義です。
偏微分について
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ついでに熱力学では欠かせない偏微分についても簡単に説明しておきましょう。まずは普通の微分から確認しておきます。まず上記一番上の式のようにyをxの関数とすると、yをxで微分するというのは二番目の式の意味です。limはlimitの略であり、後ろの式のδを0にした極限という意味になります。極限操作は厳密に言えば色々とややこしい話もでてきますが、基本的な物理学においては、どこまでも0に近づけていくというようなぼんやりしたイメージで大抵は困りません。
次は偏微分ですが、上記三番目の式のようにyがx1からxnまでn個の変数を持つ多変数関数とします。その中のxiだけで微分すると四番目の式になり、これが偏微分の定義です。偏微分は微分したい変数以外のすべての変数を固定して微分するという意味になります。偏微分も極限の話を厳密にやるとややこしいのですが、基本的な物理学においては、ただ単に多変数関数を微分したい変数だけで微分するというイメージでたいして困らないはずです。
最後は全微分とよばれるもので、yがxとtの関数の場合、上記一番下の式になります。全微分とは多変数関数の(独立した)変数を順番に偏微分していって足し合わせたものです。偏微分の横についている小さな文字は固定している変数を表しています。全微分は一変数の微分が、yの微小変化を表していることを思い出して、多変数関数の場合のyの微小変化を表していると考えてください。
熱容量
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では熱容量の説明に入りましょう。ある系に準静的に⊿Qの熱を加えたときの温度が⊿Tだけ上がる場合、⊿Q/⊿Tをその系の熱容量といいます。ここでQは熱量、Tは温度、⊿は微小量です。厳密には⊿Tを0に近づけたときの極限値が熱容量の定義になりますが、ここでは簡単にある物体を1℃上げるのに必要な熱量(の逆数)と考えてもらえれば問題ありません。単位は熱量がJ(ジュール)であり、温度がK(ケルビン)ですからJ/Kになります。
加熱するときに体積を一定に保つ場合の熱容量が定積熱容量Cv、圧力を一定に保つ場合の熱容量が定圧熱容量Cpです。熱容量は同じ物質であればその質量に比例するので、Cv、Cpを質量で割ったもの、すなわち単位質量当たりの熱容量が比熱であり、それぞれcp、cvで表します。比熱は正確には比熱容量といいますが、一般的にはよく比熱が使われているようです。熱容量や比熱は、変化が起こる時の物体の状態によってきまった値をとる量になります。状態を圧力と温度で区別する場合は、比熱は物質によりそれぞれ決まった圧力と温度の関数です。
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