
「袖振り合うも多生の縁」の語源は?
次に「袖振り合うも多生の縁」の語源についてです。仏教の考え方や用語の解説が加わりますので都度確認しながら見ていきましょう。
まず語源を知る上でキーワードとなるのは仏教用語である「多生」です。六道(ろくどう)を輪廻(りんね)することで何度も生まれ変わることを意味します。
「六道」
死後に向かう六つの世界のこと。生前の業(ごう)によって決められる(悪い行いをすれば地獄へ、良い行いをすれば平和な天へ、というように)。
「輪廻」
死後に無限に再生を繰り返すこと。人間の本質とは霊魂であり、生前の業によって定められた場所であるべき姿に生まれ変わる。再び人間になる場合もあれば、動物になる者もいる。
「業」
人間が生む善悪の行為のこと。また、その前世での行為により現世で受ける報いや結果のこと。自らの行いが自らに返ってくることを「自業自得(じごうじとく)」という。
つまり「多生」とは前世での行いが来世に影響を与えながら何度も生まれ変わることをいい、「多生の縁」とはその中で結ばれた「縁」のことを表すのです。また「縁」は「因縁(いんねん)」ともいわれます。
1.仏語。物事が生じる直接の力である因と、それを助ける間接の条件である縁。すべての物事はこの二つの働きによって起こると説く。
2.前世から定まった運命。宿命。「出会ったのも何かの因縁だろう」
3.以前からの関係。ゆかり。「父の代から因縁の深い土地」
4.物事の起こり。由来。理由。「いわれ因縁」「因縁話」
5.言いがかり。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「因縁」
何度も生死を繰り返し、一つ一つの行いが未来・来世に影響を与えているという仏教の考えから、「袖振り合うも多生の縁」は全ての出会いや出来事は必然であるという意味を表すようになりました。
\次のページで「「袖振り合うも多生の縁」の使い方・例文」を解説!/