この記事では「路頭に迷う」について解説する。

端的に言えば路頭に迷うの意味は「生活する家や方法を失ってひどく困る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「路頭に迷う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「路頭に迷う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「路頭に迷う(ろとうにまよう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「路頭に迷う」の意味は?

「路頭に迷う」には、次のような意味があります。

生活の道をなくし、住む家もなく、ひどく困る。「会社が倒産して―・う」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「路頭に迷う」

「路頭に迷う」ことは、生活の手段を失って非常に困った状態を表します。具体的には、暮らしに必要な家やお金がなく、またお金を得るための仕事もありません。

経済的に苦しいだけでなく、身体を休める場所さえ失った精神状態はとても心細く不安なものでしょう。人間が生きていくには衣食住の安定が重要であるといいますが、それらを失って「これからどうすればいいか分からない」という心理状態が「路頭に迷う」にはあてはまります。

たとえば会社のリストラ(外的要因)やギャンブルの依存など(内的要因)が原因として考えられますが、「路頭に迷う」からだけでは誰の責任か、何が原因かという要素までは読み取れません。事実として「生活手段がなく困っている」ことを表す慣用句であると覚えておきましょう。ただし実際にニュースや小説などで登場した際には、前後の文脈からその背景を判断する必要があります。

「路頭に迷う」の語源は?

次に「路頭に迷う」の語源を確認しておきましょう。

「路頭」とは道端や路傍(ろぼう)のことで、この言葉自体には生活手段を失うといった意味はありあません。単純に場所を示しているわけです。しかしそこに「迷う」が加わることで、ニュアンスががらりと変わります。

「迷う」は日常でもよく使われる誰もが知っている言葉ですが、改めてここで意味を確認してみましょう。

\次のページで「「路頭に迷う」の使い方・例文」を解説!/

1.まぎれて、進むべき道や方向がわからなくなる。「山中で道に―・う」
2.どうしたらよいか決断がつかない。「進学か就職かで―・う」「判断に―・う」
3.心が乱れてよくない方向へ行く。欲望・誘惑に負ける。「色香に―・う」
4.死者の霊が成仏できないでいる。「―・わず成仏して下さい」
5.区別がつかなくなる。まぎれる。
6.秩序なくあちこちへ行ったり来たりする。
7.布の織糸が弱り、糸が乱れかたよる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「迷う」

改めてみると多くの意味があることがわかりますが、ここではアンダーラインの引かれた箇所に注目しましょう。一口に「迷う」といっても、様々なイメージが浮かんでくるのではないでしょうか。

つまり「路頭に迷う」とは単に道に迷っているのではなく、心(精神)までもが動揺した不安定な状態で「路頭に」いるということです。さらには寝泊まりする場所もなく、道端をさまよい歩く様子が想像できます。これらの要素から「路頭に迷う」は「生活手段を失って途方に暮れる」状態を表す慣用句となりました。

「路頭に迷う」の使い方・例文

「路頭に迷う」の使い方を例文を使って確認していきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼は中小企業を経営していたが、資金繰りに失敗して一家を路頭に迷わせることとなった。

2.路頭に迷うのも覚悟の上で夢を追いかけると決めた。

3.働きづめだった父が入院したが、母が生計を立て直したおかげで家族が路頭に迷うことはなかった。

4.会社を独立して新事業を立ち上げた同僚には妻子がおり、周囲からは「一家で路頭に迷うのでは」と心配されていたが、どうやら上手くやっているようだ。

例文1にもあるように「路頭に迷う」を「路頭に迷わせる」と言う場合があります。自分以外の他者(従業員や家族など)にも影響を与える際に使われ、「〜させる」という使役の文法に沿った形です。

また実際に使う際には、ただ悩んでいるのではなく、さらに深刻なレベルでの困窮を意味する慣用句なので配慮が必要でしょう。

\次のページで「「路頭に迷う」の類義語は?違いは?」を解説!/

「路頭に迷う」の類義語は?違いは?

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それではここで「路頭に迷う」の類義語を確認しましょう。

「途方に暮れる」

「途方に暮れる(とほうにくれる)」は手段や方法がなくどうしようもない状態を表す慣用句です。

そもそも「途方」とは手段や方法のことをいいます。物事に取り組む際や、悩み事を解決する場合には何らかの途方が必要となるはずです。それらがない状態というのは、困り果てている上にトンネルの先の光が全く見えないようなものでしょう。

「路頭に迷う」との違いは、「生活・暮らし」のためであると限定されていない点です。「路頭に迷う」は生活手段がない状態ですが、「途方に暮れる」はより多くの物事に対しての手段がないこと、またその心理状態を表しますので注意しましょう。

「お先真っ暗」

「お先真っ暗(おさきまっくら)」は将来の見通しが全くつかないことを表す慣用句です。

将来性がなく、希望を感じられない物事に対して「お先真っ暗」であるということができます。たとえば不況などで現状が不安定でも、せめて少しでも回復の兆しが感じられれば精神的に持ちこたえて頑張ることができるかもしれません。しかし、その望みすら見えないという絶望的な状態を「お先真っ暗」といいます。

ちなみに「お先(御先)」とは将来や前途(目的地への道のりや今後の行く先)のことです。「真っ暗」には文字通り「非常に暗いこと」という意味がありますが、ここではもう一つの「全く先の見通しがたたず希望がない」という意味が適切でしょう。

「路頭に迷う」の英訳は?

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最後に「路頭に迷う」の英語表現を確認しましょう。

(日本語の「路頭に迷う」はその言葉の様子から比喩的に生活の困窮を表す慣用句であるため、この項では「困っている」状態を表す英語表現を中心にご紹介します。)

「be at a loss」

be at a loss は「困り果てる」状態を表す英語表現です。

物事を行うにあたり、何をすべきかが分からずに困っている様子を意味することから、手段や方法を失った「途方に暮れる」に近いニュアンスをもっているといえます。

I was at a loss for words.
何と言ったら良いのか分からなかった(言葉に詰まって困り果てた)。

He was at a loss what to do because he lost his house, family, and job.
彼は家、家族、仕事を失い路頭に迷った(何をすべきかが分からなかった)。

\次のページで「「turn adrift」」を解説!/

「turn adrift」

turn adrift は「人を追い出す、路頭に迷わせる」ことを意味する英語のイディオム(熟語)です。

turn は日本語でも「ターンする」というように、方向などを変える・回るという意味が一般的には知られていますが、そこから転じて「状況を変化させる」という意味ももっています。そしてadrift は「目的を失っている」「(船などが)さまよっている」状態を表す形容詞・副詞です。これらの単語が結びついた turn adrift は、行き場を失わせて「路頭に迷わせる」という意味合いで使われています。

ちなみに受動態 be turned adrift として「路頭に迷う」状態をより的確に表すことも可能です。

She was about to be turned adrift.
彼女は路頭に迷うところだった。

「路頭に迷う」を使いこなそう

この記事では「路頭に迷う」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「路頭に迷う」は「生活手段を失って困っている」と単純に言い換えることができます。後者の方がむしろシンプルで伝わりやすいかもしれません。しかし、あえて慣用句を使うことで読み手(聞き手)に状況を想像させることができ、そのイメージを限定させないことが慣用句や比喩表現の魅力なのではないかと筆者は感じています。何事も端的で簡単なことが良しとされる傾向にある世の中ですが、少し婉曲した伝え方が時に切実さやリアルを表現することもあると思うのです。

「路頭に迷う」は気軽に使える表現ではなく、非常に困窮した状態において用いられます。ニュースなどで目にした際は、今回学んだニュアンスを思い出してみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「路頭に迷う」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「路頭に迷う」について解説する。

端的に言えば路頭に迷うの意味は「生活する家や方法を失ってひどく困る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「路頭に迷う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「路頭に迷う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「路頭に迷う(ろとうにまよう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「路頭に迷う」の意味は?

「路頭に迷う」には、次のような意味があります。

生活の道をなくし、住む家もなく、ひどく困る。「会社が倒産して―・う」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「路頭に迷う」

「路頭に迷う」ことは、生活の手段を失って非常に困った状態を表します。具体的には、暮らしに必要な家やお金がなく、またお金を得るための仕事もありません。

経済的に苦しいだけでなく、身体を休める場所さえ失った精神状態はとても心細く不安なものでしょう。人間が生きていくには衣食住の安定が重要であるといいますが、それらを失って「これからどうすればいいか分からない」という心理状態が「路頭に迷う」にはあてはまります。

たとえば会社のリストラ(外的要因)やギャンブルの依存など(内的要因)が原因として考えられますが、「路頭に迷う」からだけでは誰の責任か、何が原因かという要素までは読み取れません。事実として「生活手段がなく困っている」ことを表す慣用句であると覚えておきましょう。ただし実際にニュースや小説などで登場した際には、前後の文脈からその背景を判断する必要があります。

「路頭に迷う」の語源は?

次に「路頭に迷う」の語源を確認しておきましょう。

「路頭」とは道端や路傍(ろぼう)のことで、この言葉自体には生活手段を失うといった意味はありあません。単純に場所を示しているわけです。しかしそこに「迷う」が加わることで、ニュアンスががらりと変わります。

「迷う」は日常でもよく使われる誰もが知っている言葉ですが、改めてここで意味を確認してみましょう。

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