この記事では「天下無双」について解説する。

端的に言えば「天下無双」の意味は「並ぶものがないほど優れていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「天下無双」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「天下無双」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「天下無双(てんかむそう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「天下無双」の意味は?

「天下無双」には、次のような意味があります。

《古くは「てんかぶそう」とも》天下に並ぶものがないこと。「天下無双の剣士」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「天下無双」

「天下」は、「天下統一」などでもおなじみの「世界や全国」という意味。「無双」は「二つとない」こと。合わせて「世界で二つとない最高のもの。優れているもの」の意味になります。

「無双」は「ぶそう」とも読み、「双」は「ならぶ」という意味があることも押さえましょう。「〇〇無双」など、ゲームやアニメのタイトルで使われることもあるため、お馴染みの人もいるかもしれませんね。

意味としては、「同じレベルに並ぶものがない」のですから、頂点、トップと言ってもいいでしょう。その状態そのものを表すこともありますし、「それくらい優れている」という賞賛にも使える四字熟語です。

ただ「天下無双の~」と言う場合は、たとえば何かの競技チャンピオンでも一回優勝したくらいではなく、何度も勝ち続けているくらいの実績が欲しいところ。

それくらいスケールの大きな言葉なのです

「天下無双」の語源は?

次に「天下無双」の語源を確認しておきましょう。

この言葉は中国の歴史書『史記』の中、「李将軍伝」に見ることが出来ます。李広(りこう)という、素晴らしい将軍を評価しての言葉です。

武勇に優れ、清廉な性格で部下からも慕われていた李広が討ち死するのでは、と心配した仲間が帝に進言している場面。帝に伝えるくらいですから、最上級の誉め言葉だったでしょう。

李広が将軍として、どれだけ評価されていたかもわかりますね。

\次のページで「「天下無双」の使い方・例文」を解説!/

「天下無双」の使い方・例文

「天下無双」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・最新の国際大会でも優勝し、10年連続負けなしだなんてあの選手はまさに天下無双の強さだ。

・天下無双とまで謳われたピアニストが急に亡くなり、世界中が悲しみに暮れた。

・人気ランキングだとずっとあのお店が天下無双を誇っているが、うちの家族みんなもっと本当においしいところがあると言っている。

大きな規模で見ている」イメージができるでしょうか。

スポーツならそのスポーツ界の中での達人、アーティストならその界隈では比類がない才能、などと言いたいところです。

ランキングなどでも、大手サイトで、数多くのものと比較して、という条件があったほうが適切でしょう。誰も知らないようなランキングだとしたら、言葉が強すぎる感じになってしまいます。

では、たとえば「私のクラスのA君は、天下無双の大食いだ」と言った場合はどうでしょうか。

この場合は「大食い選手権で一番」や「少なくとも私が知っているなかで間違いなく一番」という、大きな意味を感じさせる使い方がいいですね。単に「私のクラスの中だけでトップ」とはそぐわない表現です。

このように使用する場面によっては、逆に言葉負けしてしまうこともあるかもしれません。「世界に二つとない」のですから、そう簡単には使えませんよ。

「天下無双」の類義語は?違いは?

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「天下無双」の類義語は「天下無敵」「天下第一」「天下無比」「国士無双」など、数多くのものがあります。

漢字も似ていますから、字を見れば意味が想像しやすいものも多いですね。ここでは「斗南一人」をご紹介します。

「斗南一人」

斗南一人(となんいちにん)」は、「天下における第一人者のこと」。

先にご紹介した四字熟語と比べると少し聞きなれない表現ですが、漢字を分解すると理解しやすくなるでしょう。「斗」は北斗七星のことで、「斗南」はそれより南の地方を指し、つまり天下(のすべて)を意味しています。

使い方も「天下無双」と同じで、特定の職業や分野の中で特別に優れている、という意味合いを持たせることが大切です。

初めて見ると、漢字だけでは類義語と判断しにくいかもしれませんから、ここで押さえてしまいましょう。

\次のページで「「天下無双」の対義語は?」を解説!/

デビューしたての頃は無名だった彼も、今や工芸家として斗南一人となった。

「天下無双」の対義語は?

「天下無双」の対義語は「平々凡々」がいいでしょう。

「平々凡々」

「平々凡々(へいへいぼんぼん)」は「きわめて普通で、変わったところがない様子」を指します。なにか突出しているわけではないという意味なので、「天下無双」とは反対と言えるでしょう。

「々」は同じ言葉の繰り返しに使う漢字ですので、「平平凡凡」と記載されている辞典もありました。

父は天下無双のアーティストと評価されているが、家では平々凡々の暮らしを送っている。

「天下無双」の英訳は?

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「天下無双」の英語訳には「Unparalleled」がいいでしょう。

「unparalleled」

単語としては「parallel」に否定の接頭辞「un」が付いた形です。「parallel」は「平行」や「並ぶ」という意味がありますから、これで「並ぶもののない」ということになりますね。

他の英訳としても「unequaled」や「peerless」など、「un」「less」がついた単語が多く見つけられました。否定形は強調の意味に使いやすいため、「天下無双」の意味としても効果的でしょう。

否定形でないならば、「the greatest ~」など最上級の表現でも意味は通じますね。文脈によって単語を選択したいところです。

\次のページで「「天下無双」を使いこなそう」を解説!/

he made an unparalleled achievement.
彼は比類のない(天下無双の)業績を成し遂げた。

「天下無双」を使いこなそう

この記事では「天下無双」の意味・使い方・類語などを説明しました。

類義語の所でも上げましたが、同じ意味の熟語がたくさんある言葉ですね。すべてがそうではないでしょうが、やはり中国の戦の時代には、武勲を褒めたたえることが多かったからではないでしょうか。

褒めるほうも毎回同じ言葉では芸がありませんから、そうしてどんどん新しい言葉が出来てしまったのかもしれません。そのためにはもちろん、言葉を多く知っているなど文化的な教養の高さも必要だったことでしょう。

言葉から時代背景を想像してみるのも、ちょっと面白いですね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「天下無双」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「天下無双」について解説する。

端的に言えば「天下無双」の意味は「並ぶものがないほど優れていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「天下無双」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「天下無双」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「天下無双(てんかむそう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「天下無双」の意味は?

「天下無双」には、次のような意味があります。

《古くは「てんかぶそう」とも》天下に並ぶものがないこと。「天下無双の剣士」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「天下無双」

「天下」は、「天下統一」などでもおなじみの「世界や全国」という意味。「無双」は「二つとない」こと。合わせて「世界で二つとない最高のもの。優れているもの」の意味になります。

「無双」は「ぶそう」とも読み、「双」は「ならぶ」という意味があることも押さえましょう。「〇〇無双」など、ゲームやアニメのタイトルで使われることもあるため、お馴染みの人もいるかもしれませんね。

意味としては、「同じレベルに並ぶものがない」のですから、頂点、トップと言ってもいいでしょう。その状態そのものを表すこともありますし、「それくらい優れている」という賞賛にも使える四字熟語です。

ただ「天下無双の~」と言う場合は、たとえば何かの競技チャンピオンでも一回優勝したくらいではなく、何度も勝ち続けているくらいの実績が欲しいところ。

それくらいスケールの大きな言葉なのです

「天下無双」の語源は?

次に「天下無双」の語源を確認しておきましょう。

この言葉は中国の歴史書『史記』の中、「李将軍伝」に見ることが出来ます。李広(りこう)という、素晴らしい将軍を評価しての言葉です。

武勇に優れ、清廉な性格で部下からも慕われていた李広が討ち死するのでは、と心配した仲間が帝に進言している場面。帝に伝えるくらいですから、最上級の誉め言葉だったでしょう。

李広が将軍として、どれだけ評価されていたかもわかりますね。

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