「泰山北斗」の対義語は?
では対義語にはどんなものがあるでしょうか。
「浅学非才」
知識が浅く、才能もない。そんな意味です。なんかひどいことを言っているようにも思えますが、人を馬鹿にするというよりは自分で謙遜する場面で使われる言葉。「浅学非才の身ですが。」などとあいさつの場面で使われます。大概の場合は本人も聞いている側もそうは思ってないケースですね。
「authority」
権威というような意味があり、第一人者を指します。他に「 leading person」という表現や泰山北斗のように重ねるのならば、「 leading authority」などという表現もできるでしょう。
韓愈は25歳で科挙に合格しますが、それまでに何度か受験に失敗しています。その理由は本人の最も得意とした詩文にあったという説が有力です。詩文の試験で当時の流行に媚びたものを作らなかったため落第。合格した回は試験官がそうしたことにこだわらない人物だったから問題にならなかったということです。孤児で苦学してようやくチャンスをつかもうという場面でも自分の信念を曲げない、20代前半ですでに彼の精神は完成していたと言えます。
そもそも左遷の理由となった仏教の批判も考えてみれば凄まじいです。サラリーマンが社長の趣味に文句を言うと考えてもかなり勇気のいることなのに、一言で自分を死刑にできる皇帝の信じる宗教を批判できるその精神力はとんでもないものであるといえます。
もちろん悪く言えば頭の固い頑固者なのですが、例え命がかかる場面でもそれをできる強い意志があったからこそ、「泰山北斗」と称えられるまでになったということができるでしょう。
「泰山北斗」を使いこなそう
泰山北斗について解説させていただきましたが、いかがだったでしょうか。使いこなすとあれば、現代では泰山北斗そのままよりも辞書にもあるように「泰斗」という縮めた表現がおススメです。こちらの方がよく使われますね。例文で上げた加納永徳も「桃山時代の日本画の泰斗」と表現したほうがよりしっくりくるでしょう。名人とか達人と表現するよりちょっとだけ知的な印象です。
孤児から並々ならぬ努力で成り上がり、その中でも他人に媚びることもしない。自分の信念を曲げずについには名峰や星座になぞらえるほどにまで名声を獲得し、以後1000年という時と国境までも超えて語られる韓愈。当時の人々が泰山北斗に例えたことが間違い出なかったことは歴史が証明しているということもできそうです。