「病は気から」という言葉を聞いたことはありますか?生きていたら何回かは聞いたことがあるでしょう。ただ、だいたいの意味は分かっても語源は知らないって人も多いのでは。

「病は気から」の意味は、ずばり「病気は心のもち方次第」です。そして実はこのことわざは、あながちデタラメではないことが科学的に分かっていて…

今回はその「病は気から」の意味や語源、類義語などを、大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「病は気から」の意味と語源は?

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「病は気から」ということわざは、体調が悪い時に誰かから言われたことがあるかもしれません。なんとなく、病気になった時にはプラス思考でいたほうがいいと考えている人もいるのではないでしょうか。まずは、その「病は気から」の意味や語源を、国語辞典を参照に見ていきましょう。

「病は気から」の意味は「病気は心のもち方次第」

国語辞典では、「病は気から」は次のように掲載されています。

病気は、その人の心の持ち方しだいで軽くもなるし、また重くもなるということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「病(やまい)は気(き)から」

「病は気から」は、「病気は心のもち方次第で良くもなり悪くもなる」という意味のことわざです。

風邪をひいてしまったときも、「これくらい平気平気」と考えているときは、意外と早く治ったりするものですよね。反対に、「ひょっとしたらコロナやインフルエンザかも…」と悪い方向に考えてしまうと、治るのが遅くなってしまうことがあります。このように、”心の持ちようによって病気が良くなったり悪くなったりすること”を、「病は気から」ということわざで表現しているのです。

“気”は“気持ち”の“気”ではない!?

続いて、語源について見ていきましょう。この「病は気から」の語源となっているのは、中国古代の医学書『黄帝内経素問』に掲載されている「百病は気に生ず」(原文はもちろん中国語)という一節だとされています。中国からは古代より多くの文物が流入しているので、日本でも定着していったのでしょう。

ただ、この『黄帝内経素問』の一節に記されている「気」は、現代語の「気持ち」や「心」といったものではありません。中国古来の漢方医学では、人体は「気」「血」「水」の2つの要素から成り立っていると考えられていました。このうちの「気」は、「体内をめぐる生命エネルギー」を指します。”体内をめぐる生命エネルギーが乱れる”ことで”病気になる”…というのが大本の意味で、時代が下るにつれて現代の意味に徐々に変化していったようです。

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「病は気から」の使い方は?2つのパターン

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「病は気から」はポジティブな意味合いで使われる場合と、ネガティブな意味合いで使われる場合があります。それぞれの使われ方を例文とともに確認していきましょう。

ポジティブなパターン

まずはポジティブなパターンから見ていきましょう。例文は以下の通りです。

1.中田さんは白血病で入院した。ただ、毎日病気のことを考えず前向きに過ごしていたという。すると驚異的な速さで回復し退院できた。まさに、病は気からだ。
2.病は気からと言うけれど、風邪気味で咳が出るんだったらマスクぐらいつけて出勤しようよ。

”ポジティブなパターン”では、病気を楽観的に捉えている場合に「病は気から」を使用しているものをご紹介しました。

例文1では、”中田さんが白血病で入院しても、常に前向きに心を持ち続けたことにより、驚異的な速さで回復した”ことについて「病は気から」を用いて表現しています。どんなに大きな病気でも、気持ちだけは前を向いて生きていくことが、やはり大切なのかもしれません。

例文2では、”風邪気味でも全く気にせずに過ごしている”ことに対して、「病は気から」を用いて表現しています。ただ、本人にとって多少の咳が気にならなくても、周りは気になるものです。心の持ちように関係なく、風邪気味の時はマスクをつけて外出しましょう。

ネガティブなパターン

続いて、ネガティブなパターンを見ていきましょう。例文は以下の通りです。

3.病は気からというし、心配ばっかりしていないでおいしいものでも出前とろうよ!
4.石井さんは妊娠中にインフルエンザに感染し、その後心配の余りノイローゼになってしまった。病は気から。考えすぎは良くないよ…。

”ネガティブなパターン”では、病気を悲観的に捉えている場合に「病は気から」を使用しているものをご紹介しました。

例文3では、”病気になって、心配ばかりしているのは良くないよ”という文脈で、「病は気から」を使用しています。やはり病気を心配しすぎると、それだけで元気を失ってしまいますからね。ほどほどにしましょう。

例文4では、”妊娠中に感染したインフルエンザについて、不安になりすぎたあまりにノイローゼになってしまった”という文脈で、「病は気から」を使用しています。ある病気への心配が、別の病気や心身の不調を呼び込んでしまった例です。心配のし過ぎはやはりよくないですね。

「病は気から」の類義語は?

「病は気から」と同じような意味を表す表現は、他にも日本語にあります。今回ご紹介するのは「心配は身の毒」「万の病は心から」です。意味や違いを確認していきましょう。

「心配は身の毒」心配は身体にとっても毒

「心配は身の毒」は、「心配は身体にとっても良くない影響がある」という意味のことわざです。さきほどご紹介した、「病は気から」のネガティブなパターンと意味は同じですね。よって、ポジティブな意味合いでは使用できません。

「万の病は心から」病気は心のもち方次第

「万の病は心から」は「よろずのやまいはこころから」と読みます。「病気は心のもち方次第で良くもなり悪くもなる」という意味です。よって、「病は気から」と意味やニュアンスに違いはありません。おそらく、語源も「病は気から」と共通でしょう。ポジティブな意味合いでも、ネガティブな意味合いでも使用できます。

「病は気から」は科学的根拠あり!?

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ここまで「病は気から」について、意味や語源、類義語を紹介してきました。しかし、実はこの「病は気から」という言葉、ただの迷信や古代からの言い伝えではなく、実際に気の持ち方が病状を左右することはあるのではと考えられています。

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「プラセボ効果」とは…?

「プラセボ効果」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「プラセボ効果」は、「実は全く効き目のない薬を飲んでいるのに、効き目がある薬を飲んでいると思い込むことによって、病状が良くなる効果」のことをいいます。「プラセボ」は「偽薬」の意味で、薬の効果を試すための治験で使用されるものです。治験では本来の薬を飲んだ人と偽薬を飲んだ人の症状の変化を比べ、薬の有効性を確かめるのですが、偽薬(プラセボ)を飲んだ人の中にも病状の回復が見られる人が出てきます。もちろん、原則として治験の協力者には自身の薬が偽物かどうかは知らされません。これはまさに、「病は気から」のポジティブなパターンに当てはまるものでしょう。

ちなみにこの「プラセボ効果」は、迷信や都市伝説ではなく、実際に科学的に証明されているものです。気になった方、更に詳しく知りたい方は医薬品メーカーのサイト等で確かめてみてください。

「病は気から」の英語表現

最後に、「病は気から」の英語表現を確認していきましょう。「病は気から」と全く同じ意味・ニュアンスの表現は英語にはありませんが、似たような意味を表す表現がいくつかあります。

例えば、「It’s all mental」は「すべては精神的なこと」という意味で、”何事も心のもちよう次第である”というニュアンスで使われる表現です。病気について述べている文脈で「It’s all mental」を使えば、「病は気から」と似たような意味になるでしょう。

また、「Disease starts in mind」は「病は心から生まれる」という意味の表現で、「病は気から」の直訳に近いものです。日本語のことわざのように熟語として定着している表現ではありませんが、意味は十分通じるでしょう。

プラス思考で行きましょう!「病は気から」

今回は「病は気から」についてご紹介しました。「病は気から」は「病気は心のもち方次第で良くもなり悪くもなる」という意味のことわざです。ポジティブなニュアンスでも、ネガティブなニュアンスでも使用できます。皆さんも何か病気になってしまったときは、プラスの方向で考え、早く快復できるようにしましょう!

" /> 気持ち次第で病気が治る?「病は気から」の意味や語源、類義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

気持ち次第で病気が治る?「病は気から」の意味や語源、類義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

「病は気から」という言葉を聞いたことはありますか?生きていたら何回かは聞いたことがあるでしょう。ただ、だいたいの意味は分かっても語源は知らないって人も多いのでは。

「病は気から」の意味は、ずばり「病気は心のもち方次第」です。そして実はこのことわざは、あながちデタラメではないことが科学的に分かっていて…

今回はその「病は気から」の意味や語源、類義語などを、大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「病は気から」の意味と語源は?

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「病は気から」ということわざは、体調が悪い時に誰かから言われたことがあるかもしれません。なんとなく、病気になった時にはプラス思考でいたほうがいいと考えている人もいるのではないでしょうか。まずは、その「病は気から」の意味や語源を、国語辞典を参照に見ていきましょう。

「病は気から」の意味は「病気は心のもち方次第」

国語辞典では、「病は気から」は次のように掲載されています。

病気は、その人の心の持ち方しだいで軽くもなるし、また重くもなるということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「病(やまい)は気(き)から」

「病は気から」は、「病気は心のもち方次第で良くもなり悪くもなる」という意味のことわざです。

風邪をひいてしまったときも、「これくらい平気平気」と考えているときは、意外と早く治ったりするものですよね。反対に、「ひょっとしたらコロナやインフルエンザかも…」と悪い方向に考えてしまうと、治るのが遅くなってしまうことがあります。このように、”心の持ちようによって病気が良くなったり悪くなったりすること”を、「病は気から」ということわざで表現しているのです。

“気”は“気持ち”の“気”ではない!?

続いて、語源について見ていきましょう。この「病は気から」の語源となっているのは、中国古代の医学書『黄帝内経素問』に掲載されている「百病は気に生ず」(原文はもちろん中国語)という一節だとされています。中国からは古代より多くの文物が流入しているので、日本でも定着していったのでしょう。

ただ、この『黄帝内経素問』の一節に記されている「気」は、現代語の「気持ち」や「心」といったものではありません。中国古来の漢方医学では、人体は「気」「血」「水」の2つの要素から成り立っていると考えられていました。このうちの「気」は、「体内をめぐる生命エネルギー」を指します。”体内をめぐる生命エネルギーが乱れる”ことで”病気になる”…というのが大本の意味で、時代が下るにつれて現代の意味に徐々に変化していったようです。

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