この記事では「多士済々」について解説する。
端的に言えば、多士済々の意味は「優れた人材が多い」ことです。読み方は「たしせいせい」「たしさいさい」のどちらが正しいか知っているか?
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「多士済々」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「多士済々」の意味・語源・使い方

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さっそく「多士済々」の意味と語源をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「多士済々」の意味

まず、国語辞典で「多士済々」の意味をチェックしましょう。

すぐれた人が多いこと。人材が豊富であること。

出典:四字熟語を知る辞典「多士済々」

「士」には「さむらい」以外に「学識・徳行のあるりっぱな男子」「特別の資格・技術を身につけた人」という意味があります。「紳士」「名士」「博士」という言葉がありますね。「多士」は「多くの優れた人材」という意味です。また「済々」は「多くて盛んな様子」のこと。「多士済々」「優れた人材が多いこと」「人材が豊富であること」です。

「せいせい」?「さいさい」?「多士済々」の読み方

「多士済々」の読み方は「たしせいせい」でしょうか。それとも「たしさいさい」でしょうか。「済」を漢字辞典で調べてみましょう。

[音]サイ(呉) セイ(漢) [訓]すむ すます すくう なす
〈サイ〉
1  助ける。すくう。
2 しあげる。すます。
〈セイ〉多くそろってりっぱなさま。「多士済々」
[補説]2の「済済」は「さいさい」とも読む。

出典:大辞泉(小学館)「済」

\次のページで「「多士済々」の語源は『詩経』」を解説!/

漢字の読み方には音読みと訓読みがありますね。音読みは中国語をもとにした読み方で、呉音(ごおん)、漢音(かんおん)、唐音(とうおん)があります。呉音は一番古く伝わった発音で、漢音は7~8世紀ごろ遣唐使らによって伝えられた発音です。

「済」がつく言葉というと、「共済(きょうさい)」「返済(へんさい)」など「さい」と読む言葉が思い浮かびますね。しかし「済」の音読みには「サイ」と「セイ」があります。「サイ」は呉音で、「セイ」は漢音です。

もともと「多士済々」の読み方は「たしせいせい」が正しいのですが、誤った「たしさいさい」という読み方も広まってしまったため、引用した辞書の補説にあるように、現在では多くの辞書に「済々」は「さいさい」とも読む、と補足がついています。

「多士済々」の語源は『詩経』

「多士済々」の語源は『詩経』「大雅文王」です。『詩経』とは中国最古の詩集のこと。儒教の経典の中でも特に重視される経書の一つです。現代まで伝わっているのは、漢の毛亨 (もうこう)らが解説したものだけなので『毛詩』とも呼ばれています。

濟濟多士、文王以寧。
済済たる多士 文王以(ぶんのうもって)寧(やす)んず

出典:『詩経』「大雅文王」

優れた人材がたくさんいて、文王も安心されるということですよ。文王は周王朝の基礎をつくった王です。多くの優れた人材を集め、徳をもって政治を行ったので、後に儒家から理想的な君主と称されました。

「多士済々」の使い方

次は例文で「多士済々」の使い方を見ていきましょう。

1.両親はともに医師、祖父は理学部の教授で、叔父は科学者という多士済々の家系で産まれ育ったが、彼は勉強が大嫌いだった。
2.社の命運を賭け、社内のすべての部門から多士済々を集めたプロジェクトチームだったが、プライドが高く自説を曲げない人ばかりで、思うように議論が進んでいないようだ。

最初の例文は、家族は優秀な人ばかりなのに、彼は勉強が苦手という意味です。勉強はきらいでも、何か他に得意なことがあるといいのですが。2番目の例文は、優れた人材ばかりを集めたチームなのに、うまくいっていないということです。チームで何かを達成するためには個人の能力も重要ですが、チーム内のコミュニケーションが大事ですね。

\次のページで「「多士済々」の類義語」を解説!/

「多士済々」の類義語

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「多士済々」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「人才済々(じんさいせいせい)」:多士済々

「人才」とは「才能があり役に立つ人」「社会に貢献する人」のこと。「済々」は「多くて盛んな様子」でしたね。「人才済々」「才能があり役に立つ人が多いこと」「人材が豊富であること」で「多士済々」と同じ意味です。

「百花繚乱」:優れた人材が一時期に多く現れる

「百」には「10の10倍」だけでなく「数が多い」「たくさんの」という意味があります。「百花」は「いろいろの花」「多くの花」のこと。「繚乱」は「入り乱れる」「花が咲き乱れる」ことです。「百花繚乱」「いろいろな花が咲き乱れる」という意味ですよ。転じて「優れた業績や人物が一時期に多く現れる」という意味になりました。

「多士済々」の反対語

「多士済々」と反対の意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

\次のページで「「少数精鋭」:人数は少ないが優れている 」を解説!/

「少数精鋭」:人数は少ないが優れている 

「少数精鋭」「人数は少ないが、優れた者だけをそろえる」ことです。少数精鋭主義ともいいます。「少数精鋭」は、優れた人物をそろえることは「多士済々」と同じですが、人数が少ないところが違っていますよ。

「烏合(うごう)の衆(しゅう)」:ただ寄り集まっただけ

「烏」とは「カラス」のこと。そして「烏合」は「カラスの集まり」であることから「統一も規律もなく寄り集まる」という意味です。「烏合の衆」は「カラスの群れのように、統一も規律もなくただ寄り集まっただけの群衆」ですね。『後漢書』に由来する言葉です。

「多士済々」の英訳

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次は英語で「多士済々」をどのように表現するか見ていきましょう。

「collection of intellectuals」:知識人の集まり

「collection」は「収集物(コレクション)」ですが「人の集まり」という意味もあります。「intellectuals」は「知識人」ですね。「collection of intellectuals」「知識人の集まり」です。

「galaxy of able persons」:きら星のような有能な人たちの集まり

「galaxy」は「銀河」という意味以外に「きら星」「きら星のような集まり」という意味があります。「able」は「できる」「能力がある」、「persons」は「人々」です。「galaxy of able persons」「きら星のような有能な人たちの集まり」ですね。

「多士済々」を使いこなそう!

この記事では、「多士済々」の意味や語源を調べ、使い方や類義語などを解説しました。

「多士済々」は本来「たしせいせい」と読みます。誤った「たしさいさい」という読み方も広まってしまったため、現在では多くの辞書に「さいさい」とも読むと記載されていますよ。意味は「優れた人材が多いこと」「人材が豊富であること」です。

言葉は、誤った意味や読み方でも、それを使う人のほうが多くなってしまうと、正しい意味になってしまうことがあります。「たしさいさい」でも間違いとは言えないようですが、本来は「たしせいせい」が正しいと覚えておいてくださいね。

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国語言葉の意味

「多士済々」の読みは「せいせい」?「さいさい」?意味・語源・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「多士済々」について解説する。
端的に言えば、多士済々の意味は「優れた人材が多い」ことです。読み方は「たしせいせい」「たしさいさい」のどちらが正しいか知っているか?
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「多士済々」の意味や語源をチェックし、例文や類義語などを見ていきます。

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「多士済々」の意味・語源・使い方

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さっそく「多士済々」の意味と語源をチェックし、例文で使い方を見ていきましょう。

「多士済々」の意味

まず、国語辞典で「多士済々」の意味をチェックしましょう。

すぐれた人が多いこと。人材が豊富であること。

出典:四字熟語を知る辞典「多士済々」

「士」には「さむらい」以外に「学識・徳行のあるりっぱな男子」「特別の資格・技術を身につけた人」という意味があります。「紳士」「名士」「博士」という言葉がありますね。「多士」は「多くの優れた人材」という意味です。また「済々」は「多くて盛んな様子」のこと。「多士済々」「優れた人材が多いこと」「人材が豊富であること」です。

「せいせい」?「さいさい」?「多士済々」の読み方

「多士済々」の読み方は「たしせいせい」でしょうか。それとも「たしさいさい」でしょうか。「済」を漢字辞典で調べてみましょう。

[音]サイ(呉) セイ(漢) [訓]すむ すます すくう なす
〈サイ〉
1  助ける。すくう。
2 しあげる。すます。
〈セイ〉多くそろってりっぱなさま。「多士済々」
[補説]2の「済済」は「さいさい」とも読む。

出典:大辞泉(小学館)「済」

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